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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
醒章 アルス≠ホワイト
269/581

β-3

 その日、僕はバトルパフォーマーの仕事を終えてコロシアムを出た。

 隣にはエルゼアが並んで歩いている。


「なんかさ……最近、物足りないよな」


「そうか? 僕は別に何とも思わないけど……」


 何がご不満なのだろうか。


「バトルパフォーマーの質の低下っていうか? ボクらと、他の連中の実力が乖離し過ぎじゃないかって思うんだよ」


 よく言うものだ。エルゼアの本分は剣士ですらないのに。

 まあ、こいつの言うことは事実だ。僕達が強くなりすぎているのか、他のパフォーマーが衰退してるのか。

 そんなことを考えながらほっつき歩いていると、前方から三人組が見えてきた。皇女殿下と、アリキソンと、ユリーチ。アリキソンとユリーチは僕がルフィアから招いたんだ。


「アルス様、エルゼア様! 先程のパフォーマンス、お見事でした!」


「ありがとうございます。皇女殿下も、先程の戦いを参考にして下さると恐縮です」


 エルゼアが珍しく他人に遜っている。

 まあ、相手は皇女だし当然か。


「わ、私は皇女殿下ではありません。ベロニカという、ただの剣士です」


 その設定、いる?

 正直バレてるし意味ないと思うんだけど……


「よお、アルス。相変らずお前の戦いは見てて飽きないな」


「ふふ……すごく派手だったね。普通の戦いとは違うってことがよく分かった」


 アリキソンとユリーチは僕らの戦いを素直に称賛してくれる。正直、幼馴染で一緒に強さを磨いてきた二人に褒められるのが一番うれしい。


「はは、ありがとう。二人もパフォーマーにならないか?」


「……俺は騎士の仕事があるからな。碧天としての役目を放り出す訳にもいかないし」


 それ、僕が霓天としての役目を放棄してるってことかな?

 まあ、その通りなんですけど。


「私は面白そうだからやってみたいかも! ……でも、バトルパフォーマンスって配信禁止なんだっけ?」


「基本的にはそうだね。入場料が無料のやつなら配信できるけど。いい加減にオンラインの観戦チケットを有料で配信すれば良いと思うんだけどな……」


 バトルパフォーマンス協会に何度も進言しているが、実現は厳しい。

 高レベルすぎて、画面越しだとパフォーマンスで何をしているのか大半の人には分からないからだ。強者には何をしているのか分かるのだが、これは一般人向けの商売。

 その場に居る観客を楽しませることが最優先なのだ。


「それにしても……よく二人ともルフィアから来てくれたね」


「ああ……今は春休みだからな。リンヴァルスとディオネはまだ長期休暇はないんだったか」


「うん。もう少し先」


 多忙ながらも、友人の為に時間を割いてくれる。

 僕も少しは彼らの為になることをしてあげないとな。


「……今度、ルフィアとディオネの共同軍事演習があったな。僕も頼めば参加させてもらえるだろうか」


「なんだ、アルス。お前が参加するなら大歓迎だぞ。うちの腑抜け騎士供に喝を入れてやってくれ」


「じゃあ、まず君に喝を入れないとな」


 俺は腑抜けじゃない、とアリキソンは不機嫌になる。

 冗談だ。彼はとても勇気に満ちていて、頼れる親友だ。

 ユリーチは笑って僕らの様子を眺めていた。


「その軍事演習、私も参加していいのでしょうか?」


「えっ、皇女殿下も!? 流石にそれは……リンヴァルス帝国の王族が参加するのはまずいのでは」


「私は皇女殿下ではありません。ただの剣士です」


「いや、流石にその論法は通じないでしょう……」


 エルゼアは呆れかえっている。

 駄々をこねる皇女殿下の説得はエルゼアに任せよう。

 アリキソンは僕の肩を叩き、感慨深そうに呟いた。


「しかし、お前も強くなったな……俺では手の届かないところに行ってしまったみたいだ」


「……? 何言ってるんだ、君と僕は互角くらいだろ」


 それどころか、神能が強い分アリキソンの方が上まである。

 彼は困った様に肩を竦め、ユリーチに視線を送った。

 視線を受けたユリーチもまた首を傾げ、よく分からない雰囲気がその場に漂った。エルゼアと皇女殿下が何やら言い合っているのが聞こえる。


「なあ、アルス。俺はお前の友として、お前に強くなって欲しい」


「さいですか」


「だから、お前がどれほど高みへ行っても……俺はお前を応援してるからな。お前の剣は、俺と何度もぶつかり合って……そうして出来ているんだ。俺はそれを誇りに思う」


 そう、僕はアリキソンに何度も勝ち、何度も負けた。

 幼い頃からずっと競い合って。最初に戦った時のことを思い出す。

 危ない戦いだったけど、楽しかったな……


 僕が黙って昔を回想していると、アリキソンが皆に号令をかけた。


「……さ、飯でも行こうか! アルスとエルゼアも、パフォーマンスが終わって腹が減ってるだろ!」


「お、いいね。ボクはステーキが食べたい」


 ステーキだと。なんか胃もたれしそう。

 気分じゃないなあ……


「いや。僕はパスタが食べたい」


「なんだと……? よし、夕食を賭けて決闘といこうか!」


「望むところだ!」


「ま、まだ戦うんだ……」


 呆れるユリーチを他所に、僕はエルゼアと夕食を賭けて剣を交えた。

 街路樹を斬ってしまったのは内緒だ。


    ーーーーーーーーーー


 帰宅して、ベッドの上に寝転がる。つかれた。

 魔眼携帯を起動して、何となく掲示板を見ようとしたら、メールが届いているのに気が付いた。ビデオメッセージだ。


「……師匠からだ」


 こんな夜更けに何用か。

 どうせあの師匠のことだから、碌な内容じゃない。

 ビデオを再生する。


『アルス、元気か! 最近のお前の獅子奮迅たる活躍は海を越えて届いているぞ! 師匠として鼻が高い……と言いたいところだが! 張り切りすぎて身体を壊すなよ!

 お前は……深淵たる力を引き出さんが為に、少々闇に呑まれる節がある。自己の光と闇をコントロールしてこそ真の戦士なのだからな! 


 ……それで、もうすぐお前の誕生日だったな? 少し用事があってお前の誕生日に会いにいけそうにもないのでな。こうしてメッセージを送っておく! 

  誕生日、おめでとう! またお前に新たなる歴史が紡がれ、伝説が生まれようとしているのだ……!

 ──いいか、アルス。お前がどれだけ年月を重ねようとも、何度目の誕生日を迎えようとも……お前は我の立派な弟子だ! 覚えておけ!

 ちなみに、プレゼントは無いぞ! 我は富を求めず、世界の為に欲望の塊を転がし続ける存在……つまり、金欠というやつだからなっ!


 さて、何度目の誕生日かは忘れたが……アドバイスをやろう! 魂に刻め!

 これから先、辛い事、悲しい事……無間の闇が広がっていることだろう! しかし、臆するな。お前は俺が教えた生き方と力で……この先の未来を切り開いていけ! それができる事くらい、俺にはお見通しなのだからな! フハハハハッ!


 俺とていつまでもお前の師でいられる訳ではない。命には必ず終わりが、破滅が来る。破滅を齎す『何か、誰か』が如何なるものであろうと……最後には笑っていられるように道を歩め。俺が真に伝えたいのは武術でも、闇に呑まれぬ強靭な精神でもなく……幸せな生き方なのだからな!


 では、再び見える時まで──元気でいろよ!』


 そこでビデオは終わった。


「……なんだ、たまには……まともなこと言うじゃないですか」


 やっぱり師匠は師匠だ。

 いつもふざけていて、でも誰かのことを考えていて。

 僕はそんな師匠が誇りなんだ。


「いつか……超えて見せます」


 いつか。

 僕はあなたよりも強くなって……笑ってもらうんです。

 だから、また会いましょう。

 

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