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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
11章 終わりを告げる時
259/581

248. これからも共に

 アリスの目覚めを待つ間、一行はサーラライトの国に再び滞在することになった。

 レヴィーもまた壊れてしまったので修理を行わなければならない。


「……『黎触の団』では、【ラウンアクロード】の存在を世界の守護者だと定義していたわ」


「世界の守護者? いや、ラウンアクロードは世界を滅ぼそうとする存在で……真逆だよ」


 フェルンネから聞かされた情報は耳を疑うようなものだった。

 イージアはここまでに至る流れを大まかにフェルンネに話した。そして元『黎触の団』であるフェルンネにラウンアクロードのことを尋ねてみたのだが……


「ラウンアクロードは災厄……君が語ったフラムトアと同質の存在だ。奴もまた時間を遡る力を持っている。無論、フラムトアのそれとは違うものだと思うが」


「残念だけれど、それしか知らないわ。王様もラウンアクロードという単語は概念的に使っていたし……力になれなくてごめんなさい」


 浮かない表情のフェルンネを気遣い、イージアは席を立つ。

 また振り出しだ。だが、今はそれで良い。

 仲間と友を守り抜いたことにこそ意味があるのだから。


「別にいいさ。さて、今日もレヴィーを直しに行こう。君も来てくれるか? できれば力を借りたいんだ」


「……ええ」


 敵対する筈だった自分が、創造神の使い達に協力している。フェルンネはどこか後ろめたさを感じながらも、イージアの期待に応えようと足を運んだ。


       ーーーーーーーーーー


 数日後。


「お姉さま! 見て!」


「あら……これは何ですか?」


 シレーネから手渡された紙の模型を手に取り、アリスは首を傾げる。

 平たい錐状の紙の塊だ。


「おーおー!」


「……おーおー? ああ、ナリア様のアーティファクトですね。よく形を捉えています。シレーネにはものを作る才能がありますね!」


「ほんと!? じゃあ、ナリアさまに見せてくる!」


 そう言ってシレーネは駆け出して行った。

 溌剌な妹にアリスは振り回されながらも、楽しい時間を過ごしていた。

 姉妹の様子を遠巻きに見ていたイージア。その場に残されたアリスは、傍のリグスと何かを話し合っている。会話の中に結界という言葉が混じっている。

 恐らく、今後のサーラライト国に関して話し合っているのだろう。今はまだ結界は取り払っていない。

 『黎触の団』に破壊された後にアリスが再展開し、どのようなペースで解除していくのか検討している状況だ。時間は二百年もある。ゆっくり解除し、徐々に間口を広げていけばいいだろう。

 しかしイージアは、ある一点を懸念していた。


「アリス、本当に良かったのか? あの契約内容で」


 もしも二百年以内に結界が全て消滅できなかった場合。

 アリスは自らの魂を以て、代償を支払う契約を交わした。具体的な契約内容は、契約を交わした両者にしか分からない。しかし、魂を賭した契約は危険を伴うことが多い。

 萌神がそこまで悪辣な契約を迫るとは思えないが……


「はい。私が決めたことです」


「そうか」


 自分で良いと言うのならば、もはや何も言うまい。

 当然のように神剣ライルハウトを扱うイージアとは違い、アリスは立派に契約を交わした。仲間としてその気概を汲んでやらねばならない。


「おい、イージア。お前はレヴィーの修理に行かなくて良いのか?」


「ん……ああ。私に出来ることは全てした。そろそろ様子を見に行ってみるか」


 ロンドが盛大にぶっ壊したリアクターと、イージアが風魔術で盛大に吹き飛ばした諸機関。

 それを修理する負担はナリアが請け負うことになる。全力で戦ったことに後悔はしていないものの、仕事を増やしてしまったことには引け目を感じている。

 逐次、レヴィーの様子を見に行くのが義理というものだろう。



 レヴィーへ到着したイージア。

 中央の制御室にはシレーネに纏わりつかれるナリアの姿があった。どうにも彼女はシレーネに懐かれているようだった。

 明らかに苛立っている様子を見て、イージアは今は近づかない方が良いだろうと判断。右折して別の部屋へ向かった。


「あ、イージア!」


 庭園ではゼロが忙しなく荷物を運んでいた。

 サーラが『荷物を運ぶのも修行の内だよ』と唆すと、彼は息巻いて荷運びに取り掛かり始めたのだ。


「誰……って思ったけど、イージアなんだよね。何か仮面がないと違和感ありありだなあ……」


 サーラが困った様にイージアの顔を見つめる。

 たしかに、イージア自身も仮面を被っていないと落ち着かない。自らの記憶を頼りに、仮面を身体の一部として復元できるが……今は必要ない。


「大勢の人前に出る時は、仮面を被ろうと思う。ただ……君たちの前ではもう必要ないかな」


「おっ! なんだ、イージア! 結構素直になってくれるじゃねえか!」


「ゼロ! そう言うこというと、またイージアが仮面つけちゃうでしょ?」


 サーラの言う通りだ。

 あまりからかわれてしまうと、イージアは再び仮面を被ってしまう。それすらも見透かされているようで、彼はなんだか恥ずかしい思いをした。


「……私も荷運びを手伝おう」


「あ! 照れ隠しってヤツだな!?」


「ゼロ! だから……」


 直後、イージアは記憶を頼りに仮面を神気で構成して復元。

 再び被った。


「あ、おい? 冗談だって! なあ、イージア!」


「あーあ……」


       ーーーーーーーーーー


 レヴィーの試運転が完了した。

 問題なく飛べるようだ。一行は荷物を纏めて、長らく滞在したこの地を去ることになった。


「この度はお世話になった。貴殿らは我が国の恩人。困ったことがあれば何なりと頼ってくれ」


 国王から謝辞を受け取り、一行は次々にレヴィーへ乗り込んだ。


「アリス。どうか自分の身は大事にするのですよ」


「はい。また戻ります。お母様も、お父様も……それからシレーネも。どうかお元気で」


「お姉さま……もう行っちゃうの?」


 シレーネは姉の出立に、寂しそうな表情を浮かべる。

 アリスは妹の頭を優しく撫でて、柔らかい声で言った。


「私は、大切なお仕事があるのです。シレーネもいい子にしているんですよ」


「うん……」


 最初、アリスはシレーネに嫉妬して国を飛び出したのだった。

 妹が『選ばれた存在』であることを知り……衝動的に飛び出した。自分が不要な王族だと突きつけられたような気がして。

 今では馬鹿らしいと思っているが、後悔はしていない。なぜなら、外の世界を知り、頼もしい仲間たちと出会えたから。


「アリス。そろそろ行くぞ」


 ダイリードから声がかかる。

 そろそろ行かなくてはならない。


「……行って参ります」


 彼女は振り返ることなく、その場を去った。

 隣には相変わらず頼れる従者が居る。本当に、どこまでも付いてきそうな従者だ。


「リグス。私の選択は……正しかったのでしょうか?」


「はい、もちろんです……と言いたいところですが。それはこれからの未来で、アリス様自身が決めることでしょう」


「──そうですね。私はきっと、正しい道を歩みます。ついて来てくれますよね?」


「言うまでもありませんよ」


 サーラライトの主従は未来へ歩み続ける。

 それぞれの信念を背負って。


11章完結です

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