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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
11章 終わりを告げる時
244/581

233. サーラライト聖黎戦線

 突如としてサーラライト国に現れた『黎触の団』。

 長年にわたり結界に守られてきたサーラライト族は、急襲により蜂の巣をつついたような混乱に包まれていた。


「『黎触の団』……かつて我らと道を別った、力を追い求めし一族。よもや今代になって争いが再び巻き起こるとは……」


 王は立ち上がり、自ら戦に打って出ようとする。

 イージアは今回現れた『黎触の団』の規模について考察。


「私は何度も『黎触の団』と関わったことはあるが……精々、規模は数人から数十人だった。二百人程度となると……かなり規模が大きいな」


 それもその筈、仇敵であるサーラライト族と事を構えるのだから大規模な進攻が行われるのは当然だ。

 運の悪い事に、今は創造神の使い達が国の各方面に離散している。作戦を立てようにも連携が取れない状況だ。


「……イージア様。折り入ってお頼み申します。王族専用の隠し通路が城の地下にあり、神域沿いの街道に繋がっています。この子を……シレーネを連れてそこから逃げてはくれませんか」


 王妃はイージアに提案する。

 その申し出は彼にとって予想だにしていない事態だった。


「私が『黎触の団』と戦い、王妃が隠し通路から逃げるべきでは?」


「この場に居る者の中では、貴方が最も強い。何か不足の事態があった時、私よりも貴方の方が娘を守ってくれることでしょう。それに、この戦いは我ら一族の因縁が呼んだもの。サーラライト族の王族として、私が逃げる訳にはいきません」


「……それ程の価値が、この王女にあると?」


 王妃はシレーネの頭を撫でながら言った。


「私もよく分かりませんが、シレーネは特別な役割を持つのです。この子は生きなければならない。どうか、お願いします……」


「分かった。任されよう」


 親の懇願を無碍にできる道理はない。

 人には価値の差がある。それが現実で、この世の原理だ。


「お母さま……?」


「……大丈夫よ、シレーネ。イージア様があなたを守ってくれるから」


「わたし、お母さまと一緒に行く……」


 何が起こっているのか、幼いながらも彼女は理解しているようだった。

 それでも情を捨て切れないのは、子供としての意地か。


「大丈夫。すぐに終わるからね。……イージア様。お願いします」


「……行こう」


「隠し通路はこちらです! ご案内します!」


 イージアはシレーネを半ば無理やり抱きかかえ、傍に居た兵士の誘導に従う。

 シレーネは暴れなかった。泣き喚くこともなかった。ただ瞳を潤ませ、いつまでも両親の方角を見つめていた。


                                      ----------


 城へ避難する人々を誘導しながら、アリスとリグスは『黎触の団』を退ける。


「クソっ、多すぎる……!」


 あまりに数が多い。精鋭も混じっている。

 いつも戦う小規模な『黎触の団』とは決定的に異なる。


「……なるほど。腑抜けのサーラライトにも多少は戦える者が居るというわけか」


 そんな彼らの前に、一人の男が現れる。

 漆黒の髪を持つその男は、『黎触の団』を従えていた。男が現れた瞬間、二人と交戦していた団員達は手を止め、男の背後に下がり傅く。


「何者ですか、あなたは……」


「我は『黎触の王』、ムロク。万象を滅する者」


 『黎触の王』。その言葉を聞いた瞬間、二人に激震が走る。

 眼前の存在は、長らくアリス達の命を狙ってきた組織の頂点。世界に破滅を撒く組織を牽引する者。


「なぜ、このような争いをするのですか!? もう終わったことではありませんか!」


「終わった事、だと……? 違うな。遥か昔……我らは力を得た。しかし、貴様らは力を捨て、長き命を得た。力なき者は、力ある者に淘汰される。それが自然の摂理……」


 ムロクは殺意を湛えてアリス達を睨みつける。

 悪魔でも見るかのような侮蔑の眼差し。


「しかし、萌神はそれを否定した……! あろうことか力なき貴様らを守り、選ばれし我らを闇へと葬った! もはや神は必要ない。必要なのは、我らの力のみ」


「それは間違っています。なぜ歩み寄ろうとしないのですか? 争い合う必要がどこにあるのですか?」


「ふん……いくら講釈を垂れようとも、結界に引き籠っていた貴様らは弱い。我らの力に蹂躙され、破滅する。どれ、俺が直々に遊んでやろう。楽に死なせてはやらんぞ」


 絶対強者の余裕。

 それを肌で感じながらも、アリスは毅然として民を守る為に立ち塞がる。


                                      ----------


 飛空艇レヴィー、内部。

 ダイリードとウジンは修理に取り掛かっており、外の騒ぎに気が付いていなかった。


「やあやあ、お邪魔しますよ」


 悠々自適に入り込んできたのは、一人の男。

 ダイリードは訪問者の顔を見て、咄嗟に構える。見覚えのある顔だった。しかし彼は二十年前から老いてはいない。元より魔族だったのか、或いは何らかの力を得て老いを無効化したのか。


「汝は……!」


「おや、そう怖がらないで下さいよ。お久振りですね、ダイリードさん。十年? いや、二十年振りくらいかなあ? 小生のことを覚えていますか?」


 『黎触の駒』、ロンド・デウム。

 彼の姿は昔と変わることなく、相も変わらず全てを舐め腐ったような佇まいをしている。


「なぜここに居る……!」


「ええ、なんででしょう。運命が手繰り寄せたのかも?」


 容量を得ない彼との会話。

 傍に居たウジンは不審な彼に尋ねる。


「で、兄ちゃんは誰だよ。俺にも分かるように説明してくれ」


「ああ、失敬! 俺は『黎触の駒』、ロンド・デウム。この国を滅ぼしに来たんですよ。あなたの事は知っています、ウジン殿。あなたも私の駒を壊してくれたらしいじゃないですか。ああ、復讐だ! 我が子の命を奪われた者の、正当な復讐をするのです! ……世界中であなた方は活躍していますからね、そりゃ情報の集めやすいこと」


 ロンドは創造神の使いたちのデータを収集していた。ダイリードと敵対したその日から熱心に敵の情報を探り、彼らが赴いた任地に訪れては活躍の様を記録し……どのような戦法を扱うのか、種族は何なのかを網羅している。

 彼は不敵に笑い、二人に刃を向けた。

 同時、背後に『兵士の駒』と『魔導士の駒』が現れる。


「覚えていますか? 次に会う時は、絶対に俺が勝つ……そう約束しましたよね。小生、負けるのがそりゃもう嫌いで。戦いに私情を挟む癖に、迷いを捨てれない癖に……そんな奴らに負けるのが大嫌いなんです」


 滔々と語り続けるロンド。

 二人はその隙に魔力を練り始める。


「ああ、そうやって魔力を練っても結構です。それでも僕が勝ちますから。ダイリードさん、あなたは巨大な獣に変身できませんよね? この『れびぃ』を壊しちゃうから!」


「……!」


 自身の能力が知られていることを自覚し、ダイリードは表情を強張らせる。


「ハハッ、そうだ! その顔が見たかった! じゃあ、そろそろ始めましょうか? これから行われるのは戦いじゃない……大虐殺だ。俺が主役の舞台、幕が上がりますよ」


 ロンドは勝ちを確信している。

 それは傲慢か、或いは謙遜か。

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