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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
11章 終わりを告げる時
243/581

232. 大いなる暗黒

 レヴィーの修理に取り掛かってから一週間が経った。

 徐々に機関は働きを取り戻し、ようやく楽園へ帰れそうな雰囲気が漂ってきた。


 現在は故障した内部機関を取り替え終え、神気による動力を再生している段階だ。この作業はダイリードしか行えない為、彼に任せている。

 イージアは役目を終え、今日も今日とて文献を漁っていた。隣にはナリアの姿もある。

 彼らの関心は主に【悪霊】へと向けられている。大半の歴史は分かったが、唯一【悪霊】に関しては文献が見つからない。


「ダメだな……イージア。何か見つかったか?」


「いや。『大いなる暗黒』は去ったことだし、これ以上漁っても仕方ないのかもしれないが……」


 もはや危機は去った。調査を行っても有益なことはないだろう。


「私は個人的に興味があるので調べ続けるが。お前はもう切り上げるか?」


「……修理も終わって、やる事もないので。もう少し調べてみよう」


 ナリアは彼の言葉を聞くと、再び文献に目を落とす。

 静寂の中に紙を捲る音だけが響く。


 しばらく後、そんな静寂を破って一人の子供が史料館に訪れた。


「あ! イージアさん! あと、ロボットのお姉さんだ!」


 アリスの妹、シレーネがやって来る。イージアはしばしばシレーネと遊んでやることがあったが、どうにも子供の相手は苦手だった。

 彼女はナリアの姿を見るや否や駆け寄り、文献を覗き込んだ。


「ぬ……何だ、この子供は?」


「アリスの妹だ。名前はシレーネ」


 文献の内容が難しかったのか、シレーネは首を傾げてナリアに尋ねた。


「なにを読んでいるんですか?」


「歴史書だ。子供が読むものじゃない」


「ねえ、お姉さん! ロボットだしてください!」


 ナリアは困った様に視線でイージアに助けを求めた。

 しかし、彼もどうしたら良いのか分からない。幼子の扱いには慣れていないのだ。


「……用事を思い出した。先に失礼するよ」


「えっ……? ちょ、おまえ……」


 逃げるように彼は史料館を出て行く。

 ナリアは傍に居る子供に困惑しつつ、アーティファクトを懐から取り出した。


                                      ----------


 逃げ出したイージアは、国の中央にあるジリーマの家を訪れた。

 特段することもなかったので、興味のある者の場所を訪れることにしたのだ。


「おや。お主は……イージアだったか? 何かご用かな」


「君の操る……占境術、だったか。あれがどのような仕組みで行われているのか知りたいと思ってな……無理にとは言わないが」


 彼の言葉を受けたジリーマは、しばし思案する。

 ジリーマの占いは往々にしてサーラライト国を助けてきた。しかし、彼の占いがどのような仕組みで行われているのかを知る者はいない。


「うむ……すまんな。この後用事があるのだ。後日解説することはできるから……また来てくれんか」


「そうか。忙しい時に悪かった。また後日来る」


「……待っておるぞ」


 彼は去りゆくイージアの背を見つめ、家の中へ戻る。

 そして家の中を一通り見渡し、動き出した。



 翌日。ナリアに昨日の件で怒られたイージア。

 彼はレヴィーを出て城へ赴いた際、アリスからとある事実を告げられた。


「……ジリーマが消えた?」


「はい。お父様から話があったのですが、昨日の晩から姿を見せないそうです。いつも郵便を届けに行く人が異変に気付いて……」


「ジリーマならば昨日会ったが……」


「別に、一日家を空けるくらい誰にでもあることなんじゃないの?」


 サーラがそんな疑問を口にする。たしかに、一日家を離れただけで騒ぎ過ぎではないだろうか。


「それが……ジリーマ様は家から殆ど出ないのです。お食事も郵便で届けてもらうほどの出不精で、今朝食事をお届けに行った者が気が付いたのです」


「そうだな……私も探してみよう。サーラ、君もゼロと一緒に空から探してくれるか?」


「うん、任せて!」


 昨日話した矢先に消えてしまうとは運が悪い。

 リフォル教の残党が彼を攫ってしまった可能性もある。内部に不穏分子が入り込んでいるかもしれないとなると、看過できない問題だ。


「私は森の木々にジリーマ様を見なかったか聞いてみます。イージアさんは街のあたりを探してください」


「分かった」


 彼は城から出て、街へ繋がる道へ出る。

 ふと、見覚えのある姿があった。先程怒られたのであまり話しかけたくはないが、伝えておくべき事項は伝えねばならない。


「……ナリア」


「うん……なんだ、お前か。どうした?」


 彼女は先程怒ったことなど忘れているかのように、いつもの態度で答えた。


「ジリーマが姿を消したそうだ。見つけたら教えてくれ」


「ん……ああ、分かった。私はこれから【悪霊】の遺跡に行こうと思っていたのでな。そこら辺も一応探してみよう」


「頼んだ。……石板は蹴るなよ」


「分かってる。余計なお世話だ」


 本当に大丈夫だろうか。

 ナリアがとんでもない真似をやらかして【悪霊】が目覚めないことを祈りつつ、彼は街中へ繰り出した。


                                      ----------


「……む。イージア殿、ジリーマは見つかったか?」


 しばらくしてイージアは城へ戻る。王は心配そうにイージアへ尋ねた。

 街中を駆け巡った彼だったが、ジリーマらしい影は見えなかった。ある程度聞き込みもしてみたが、目撃情報はない。


「すまない。見つからなかった」


「ふむ……そうか。アリスとリグスはまだ森へ出ているようだ。見つけてきてくれると良いのだが……」


 国王は、国の重要な占術師の喪失を恐れていた。

 ジリーマは国を長らく支えてきた大切な人材。彼の予言は度々災害を予期しては国を救ってきた。


「ねえ、イージアさん! 遊んで!」


「ああ……いや、今は……」


 シレーネに絡まれて困り果てるイージアに王妃のリアンサが助け舟を出す。


「こら、シレーネ。今は忙しいの。邪魔をしちゃだめ」


「えー……」


 不貞腐れるシレーネを王妃が抱きかかえ、膝の上に乗せる。

 イージアにとって小さい女の子と遊んだ経験はマリー程度しかない。正直、自分が無邪気に子供と遊んでやれるような性格ではないと自覚しているので、彼はシレーネの扱いには困っていた。アルスとして生きていた頃ならまだしも、今ははしゃぐような振る舞いではない。


「イージア殿。今日はもうお休みになられて、捜索は後日……」


 その時。王の言葉を遮って急報が届いた。


「い、急ぎお知らせいたしますッ!」


 一人の兵が血相を変えて部屋へ入って来た。

 その様相はまるで魔神が襲来した時のように青褪めていた。


「何事だ?」


「結界が……結界が破られました! 推定二百名の人間が街を取り囲んでいます! 統一された黒の装束を纏っており、何かしらの組織かと思われます! 奴らは我らに刃物を向け、敵意を露にしており……如何いたしますか!?」


 黒の装束。

 結界を破る程の武力。

 一国の軍にしては少ない人員。

 そして、サーラライト族を狙う勢力。


「『黎触の団』、か……」


 イージアは苦悶の表情を浮かべた。


                                      ----------


 『黎触の王』、ムロク。

 『黎触の駒』、ロンド・デウム。

 『黎触の衣』、ジュッケ。

 『黎触の矢』、ムスカ。偽りの名を、ジリーマ。


 他、導師十二名。


 そして八重戦聖が一、『理外の魔女』フェルンネ。


「これより進撃を開始する。我らが仇敵、サーラライト族。今こそ奴らを根絶やしにし、破滅への一歩を踏み出す時。我が名はムロク、世界を滅する大いなる暗黒なり……!」


 『大いなる暗黒』が、サーラライトの国へ進軍を開始した。


 

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