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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
9章 晴天の霹靂
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184. 青霧騎士

 我が魔族王となる前。ただ一人の人間を、我が背に乗せたことがあった。

 人間との和解に反対するカラクバラの軍勢との戦いは絶え間なく続いていた。争いはいつまでも終わらず、涙が枯れた地に溢れる。

 魔族との和解に協力的な人間の国々に支援を求めたが、拒否される。不死の魔族と戦う訳もない。当然のことだ。だが、彼は違った。ただ一人、協力してくれる人間が居た。

 彼はこれ以上魔族を苦しませたくないという想いに共鳴し、我に剣を預けてくれたのだ。そして長きに渡る戦を収束させた。


「ルト。私は人間であろうと、魔族であろうと……傷付いて欲しくない。だから、この剣をお前に託そう。共に戦場を駆けてくれ」


 ──青霧騎士エプキス。

 不可思議な技を繰り出す、唯一無二の戦士。不死たる魔族をも絶命させ、影魔族は彼を恐れた。剣を振るえば空を裂き、雲を晴らす。彼の後には青き霧が舞い、塵も残ることはなかった。

 彼はカラクバラを退け、魔族に安寧を齎した。間違いなく彼は魔族の救世主だ。


 だが彼の圧倒的な力は我の配下をも恐れさせてしまった。そして、我の目が届かぬ内に彼は魔国を追放されてしまった。それきり彼とは会っていない。

 我は激怒した。なぜなら、我らが配下のした事は……かつて魔族を迫害した人間と何ら変わりはないのだから。

 我は知っている。彼は誰よりも平和を愛し、優しい心の持ち主だったことを。恐らく彼は怒っていない。誰にも魔族によって追放されたという事実を伝えず、息を引き取ったのだろう。


「私は弱い。この世にある争いを全て止められない。いつか私の剣が、世界全ての生ける者に安寧を与えられればと……そう願っている」


 今でも覚えている、彼の言葉を。

 故に、我は目指し続ける。魔国に、そして世界に──安寧を。

 それが我が贖罪。


                                      ----------


 余が魔王となる前。ただ一人のニンゲンが、我が悲願を打ち砕いた。

 ニンゲンとの和解などあり得ない。なぜ今まで迫害され続けてきた我らが和解せねばならない。なぜニンゲンより優れた魔族が和解せねばならない。

 蹂躙を。復讐を。魔族が味わってきた苦痛をそのまま返上せねばならない。


「すまない。私たち人間は許されないことをした。だが、争いは更なる争いを生む。どうか手を取ってはもらえないか。これ以上、誰も傷付けたくはない」


 復讐は一人の剣士によって阻まれた。

 ──青霧騎士エプキス。

 不可思議な力を使いこなす剣士だった。青き霧を浴びた魔族は蘇らず、受けた傷も治らない。余の配下どもは恐れ戦き、戦意を喪失。そして余もまた敗れた。


 千年の時を経ても、受けた傷は癒えぬ。屈辱の中、我らは影へと逃げた。そして奴を監視し、奴の技を継承するニンゲンを全て根絶やしにした。

 ついに奴も老いて死した。どれほど強きニンゲンであろうと、老いには勝てない。最終的には魔族が勝つのだ。ニンゲンとはつくづく劣った生物だ。


「なぜ……! お前の配下も争いに苦しんでいる! 涙を流している! これ以上戦火を広げるのならば……私はお前を斬らねばならない……!」


 今でも覚えている、奴の言葉を。

 忌々しい。ニンゲンより受けた侮辱は決して忘れぬ。この憎悪は、我ら影に潜む魔族を駆らせ続ける。


 故に──


                                      ーーーーーーーーーー


「故に、お前はここで殺す! 煉陽転輪(ラルジガーン)!」


 カラクバラの四本の尾から、炎が迸る。螺旋状に炎の鞭が撓り、変幻自在にイージアに襲い掛かる。


「飛雪の構え!」


 襲い来る炎尾を受け流し、彼は反撃の隙を狙う。しかし、あまりに速い攻撃に防戦を強いられる。

 人の身で限界まで身体能力を強化しても辛うじてついて行ける程度。


(速すぎる……神転を使うしかないか?)


 人の肉体を捨て、神の身体へと転じれば状況は変わる。

 しかし万が一誰かに見られれば、言い訳の仕様がない。正体不明の神族など、他の神族や創世主が訝しみ排除にかかるかもしれない。


「超えて見せるさ……晴嵐の撃、『遠揺』!」


 種族の壁。それは時として残酷に立ちはだかる。だが、彼は諦めることを知らなかった。

 晴嵐の型という有効打が存在する限り、魔王は攻略可能。


 炎と青霧が相克する。

 青き霧は炎を呑み込み、カラクバラに迫る。しかし霧は目にも止まらぬ速さで回避されてしまう。


「あまりに遅い。同じ技を操れど、所詮ニンゲン。化け物のエプキスには届かぬ……!」


 青霧騎士は軽々と人の領域を超克した。

 それをカラクバラは知っているからこそ、相手のイージアがただの人間であることに安堵していた。人の皮を被ったあの剣士は化け物だ。アレは例外中の例外……眼前で舞う普通の人間など襲るるに足らない。


 周囲には炎の赤と、霧の青が拡散し視界が悪くなっている。そして、異常なまでの高温。さらには雨で足場が滑りやすい。

 これらの環境条件もまたイージアへの逆風となっている。戦闘の多くを感覚に頼る人間はこうした状況を苦手とする。


闇大刃(ルガンドム)!」


 カラクバラは鍛え上げられた闇魔術を放つ。

 巨岩ほどの大きさがある闇の刃が三枚、イージアに迫る。


(受け流せない……回避を……)


 彼は闇魔術の威力を肌で感じ取り、咄嗟に回避を試みる。

 左右、そして前面から迫る刃を後方へ回避。


「浅いな」


「……ッ」


 しかし、退いた先にはカラクバラの姿。

 彼の尾は炎の槍を作り出し、イージアの行く手を塞いでいた。


「飛雪の構え……」


「させんぞ。『煉陽樺槍(ランドジ・ゼロフ)』」


 受け流しの構えを取る彼の隙を突き、カラクバラは尾をその場に留まらせたまま跳躍。そして彼を足蹴りにして炎の槍へと叩き込んだ。


「か……はっ」


 炎尾は二本、深々とイージアの背に突き刺さり、胸を貫通する。同時、余る二本の尾で両手を捻じ曲げる。

 炎はイージアの全身を包み込み、動きを拘束したまま燃え広がって行く。


「ぐ……ッ」


「ふん……やはり、魔族にニンゲンは敵わん。そのまま我が業火により悶え苦しみ……そして地獄へと落ちるが良い」


「待、て……」


 カラクバラの炎は燃え続ける。手足も動かせない状況では晴嵐の型で炎を消すことも不可能。

 やがてイージアは膝から崩れ落ち、落命した。


「このローブは……耐性を付与しているのか」


 カラクバラは彼が纏っていたローブが燃えていない事を不自然に思い確認する。どうやら炎属性に対する耐性が付与されているため、燃えていないようだ。しかしそれを身に纏うイージアは焼け死んでいる。

 絶命を確認した魔王は高らかに勝利の咆哮を上げ、戦場へと疾走し始める。


「ルトよ……今こそ雪辱の時。千年の無念、余が晴らす……!」


 憎悪の使途が雨を切って駆ける。

 燃え続ける憎悪を置き去りにして。

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[気になる点] 主人公はなぜ災厄戦以外の全ての戦いにおいて本気?神転?しないのでしょうか? 基礎力を上げるため?
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