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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
1章 光あれ
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14. 出会い

「ぐっ……」


 地に伏せたアリキソンが剣を支えに立ち上がり、こちらへ歩いてくる。

 そして彼は僕に手を差し伸べた。


「俺の……負けだ。アルス、だったか。お前を見縊っていた」


 彼の手を取り、疲弊した身体を奮い立たせて笑う。ここで倒れてはみっともない。


「こちらこそ、良い経験になった」


 魔力の酷使で頭がぼんやりする。

 そんな時だ。


「二人とも、お疲れ様。アリキソンがまじめに戦うところなんて初めて見た」


 いつから中庭に居たのだろうか。その赤髪の少女は勝負の顛末を見守って見守っていたようで、僕らに魔力補給用の水を渡してくれた。


「ありがとう。僕は霓天の末裔、アルス・ホワイト。……君は?」


 ミトロン家の使用人か誰かだろうか。その割には僕やアリキソンと殆ど年齢が変わらないように見える。


「はじめまして。私はユリーチ・ナージェント。よろしくね」


 ……これは使用人などと、とんでもなく失礼な事を考えてしまった。彼女は『輝天』のナージェント家の令嬢だったようだ。

 つまり、このミトロン家に三英雄の末裔が揃っているということだ。もっとも神域に赴くという目的がある以上、必然の出会いである。


              ----------


 その後、僕達は盛大に荒れた中庭のベンチで水を飲みながら休憩していた。


「あー、うめえ!」


 アリキソンが唸り声を上げて水を飲み干す。魔力を大きく失った身体に補給水が五臓六腑に染み渡り、一気に気力を取り戻す。


「……しかしアルス。なんで俺が負けたか分かるか?」


 自分より強い者以外は認めないという発言に偽りは無かったようで、アリキソンは尖った態度を改めて普通に接してくれるようになった。


「正直に言うと、剣の練度が少し低いかな。いくら最強の神能と言っても、君の雷速さえ見極められれば攻略できた。だけど……」


 だけど。

 この言葉の先を伝えるべきか一寸の迷いが生じる。でも、ここで真実を伝えないのは彼が僕よりも強くなることを恐れるが故の自己満足になってしまう。


「だけど、鍛えさえすれば君は必ず僕を超えられる。間違いないよ」


「そっか……俺、今まで父さん以外に負けた事が無かったから……マンシン? してたんだな」


 彼は立ち上がると僕に向き直り、


「ありがとう、アルス。いずれお前を超えて見せるよ」


「……ああ。その時を待ってるよ」


 僕もまた立ち上がり、彼の情熱に応える。

 その瞳からは先程と違い、熱い闘志がありありと浮かんでいた。

 そして、そんな僕達をユリーチは笑みを浮かべて見つめていた。



「……しかし、これまた派手にやったな」


 父が頭を抱えて中庭に入ってきた。

 その横にはアリキソンの父タイムさんと……赤髪の少年がいた。歳は僕よりだいぶ上で、十代前半くらいだろうか。


「君がアルス君だね。ヘクサム殿から話は聞いているよ」


「はじめまして、アルス・ホワイトです。あなたは?」


「私はスターチ・ナージェント。ナージェント家の当主で、そこのユリーチの兄だ。以後お見知り置きを」


 ナージェント家の当主か。

 ……当主? 彼はまだ十代前半のように見えるが、両親は……いや、聞かないでおこう。

 早くに親と離別した子が幼くして立場を継ぐことは別に珍しくない。


「妹とも仲良くしてあげてほしい。今回の旅はよろしく頼むよ」


「はい、今後ともよろしくお願いします」


 僕とスターチさんがやりとりを交わしている傍で、


「父さん、その……今まで鍛錬とかしなくて悪かったな。一応、これからは俺もするよ」


「なっ……!? な、なん……だと……」


 アリキソンとタイムさんがそんな会話をしていた。


「アリキソン! ついにお前もやる気になったのか!?」

 

「う、うるせえ! ただの気まぐれだよ!」


 親子のやり取りを他の皆は微笑ましく見守っているのだった。


              ----------


 出発前夜。その日はミトロン家で一夜を過ごすことになっていた。

 僕とアリキソン、ユリーチは部屋に集まり荷造りをしていた。保護者達曰く、子供達だけで準備させて成長を促そうというのだ。荷造りくらい誰でも出来ると思うのだが……


「あー! この紐が結べねえ!」


 アリキソンは苦戦しているようだ。ちなみにユリーチは手際が良いようで既に終わっている。僕はそもそも家から出る時に支度をしてきたのでする事は少ない。


「見てるだけでムズムズするの。効率的じゃないやり方だし……」


「うるせえ……俺には俺なりのやり方があるんだよ」


「そうやって紐をぐるぐる意味もなく回してるのがあなたのやり方なの?」


 ユリーチさん、辛辣。


「アリキソンは器用なことが苦手なのか?」


「まあ、そうだな。集中力を使うこととか……勉強とかも嫌いだ」


 僕も勉強させられるのは好きではないが、自分からするのは好きだ。特に歴史は好きで、現在の世界に至った経緯が分かる。


「じゃあ、魔術とかも使わないのか?」


 彼と戦った時は雷撃を飛ばしてきたが、あれは神能の技だ。身体強化にしか魔力を使わない純粋な戦士タイプだろうか。


「ああ、そうだな。ユリーチとは真逆で魔術なんかは全く使えない」


「へえ……そういえば。ユリーチの適性属性は何なの?」


「私は炎。お兄様はどういうわけか炎と水、二つの適正があるのよ」


 本来、個人の魔術の適正属性は一つだけ。無数の属性の中からランダムに一つ選ばれる。

 適正が二つというのはどういう原理なのだろう? もしかしたら、それがスターチさんの異能なのかもしれない。


「ということは……スターチ様は光と合わせて三つの属性が使えるんだね」


「あっ……それは……お兄様は光属性は扱えないの。英雄の末裔でも神能に恵まれないことは稀にあるみたいで……」


「そうなんだ。でも、二つも属性が使えるのは凄いことじゃないか」


 ……英雄の末裔でも神能を継承出来ないことがあるのは初めて知った。


「そ、そうだよね! 私なんかよりもずっと凄いの! 魔術だけじゃなくて街の治安維持もしてくれてるし……あと、お兄様にはこの話はしないでほしいの。良い?」


 なんとなく、この神能に関する話題が輝天の家系にとっては好ましくない事は察した。

 アリキソンも黙ってしまったし、何だか気まずい雰囲気が流れる。それを払うように、


「うん、分かったよ。……さて、アリキソン。結べたか?」


「クソッ……! 駄目だ、できねえ!」


 話を戻し、アリキソンの様子を見る。彼は未だ苦戦中のようで、手元で紐がはらりと解けた。


「はぁ……よし貸してみろ。僕がお手本を見せてあげよう」


「ちょっと、アルス? アリキソンを甘やかさないで」


 僕らのやり取りに先ほどの気まずい雰囲気は埋もれていった。

【輝天】……四英雄の内の一つ。初代『輝天』はカシーネ・ナージェント。光属性を操る神能『光喚(ひかりよび)』を持つ。ナージェント魔導士団と呼ばれる、きわめて規模の大きな魔導士勢力を支配している

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