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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
5章 英雄──神断ち、のち、愛
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異伝7. 聖騎士

 天地が鳴動し、大気が揺れる。

 シィーメ峡谷から現れた怪物。いくつもの触手を持つ緑色の球体。邪気を持っていることから魔物と推測されたが、未確認の存在。異質極まりないモノが、首都ディオネに迫っていた。


「隊長、標的が迫っています」


「……君達は下がっていろ。僕が方を付ける」


 騎士アルス・ホワイトは最前線に進み出て、手に持つ槍を構えた。


「──穿つは栄光の霓天不敗。『穿魔の鬼』」


 投擲した槍は、真っ直ぐに其へ向かっていく。

 ただの投擲、されど強さを求め続けた者の投擲。心を、友情を、愛を、全てを騎士の矜持と民の安寧に捧げてきた者の技である。


 槍は緑壁を穿ち、内部の悉くを貫き、反対側の壁から出てアルスの手元に戻る。

 数秒後、大爆発。貫かれた球体は急所を穿たれたのか、たまらずに爆発四散した。


「標的、絶命を確認! 流石です、アルス殿!」


「中心に生命活動を感じた。そこを狙っただけだよ。……帰ろうか」




 数日後。


「アルス・ホワイト。貴殿の功績を称え、聖騎士に任ずる! 今後とも国の為、民の為に励むよう」


「はっ! 謹んで頂戴いたします!」


 国王から騎士剣を受け取り、跪く。アルスは聖騎士の叙任式の主役となっていた。

 怪物を単騎で討伐したばかりではなく、彼は獅子奮迅の活躍を見せていた。


「さすがはヘクサム殿の息子だ……」

「神童と謳われただけのことはあるな。将来はこのディオネを担う存在となるだろう」


 周囲の者は口々に彼を称賛するが、有象無象の声は彼の耳には入っていなかった。


                                      **********


 シエラ山、山頂。

 かつて僕が晴天の試練を受けた地だ。幾度もこの地を訪れ、道程にも慣れたものだ。


 空間が歪む。そこは、精神世界。上も下も晴天、奇妙な浮遊感が最初に来た時は気持ち悪かった。


「また来たか。なあ、お前晴天の試練覚えてんのか?」


 入った途端、戦神にそんなことを聞かれた。

 晴天の試練、か。正直あまり覚えていないし、覚えておく必要性を感じなかったから忘れた。

 ただ、


「あの時、貴方は僕はもう十分強い……そう言ったのは覚えている。でも、僕はまだ弱い。昔とは背負うものが違う。見据えるものが違う。……故に、今日も一手指南を」


「はあ……まあいいけどよ。いつまでここに通うつもりだよ」


「無論、貴方を倒すまで」


 戦神の武器は槍。だから、僕の主力武器も自然と槍になった。戦神よりも強い者が居ればその者に師事するが。

 漠然とした何もかもを振り払うのは、力のみ。強さを、戦を究めし神に求む。


                                      **********


 災厄ランフェルノ討伐後、ディオネに政変が起こる。

 祭事にも関わらず騎士として王城の警備に当たっていたアルスは、王城に結界が張られたことを誰よりも早く察知した。


「神聖国王を騙る不敬者、陛下に仇為し民を苦しめた『修羅』とやら、そして──」


 眼前、天を衝く紫の巨人。

 濁った瞳を其に向け、彼は殺意を滾らせた。


「虚神デヴィルニエ。旧き神の時代は終わった。死者は死者らしく、眠っているが良い」


 虚神が放つ絶対重力を左足を踏み込むことで打ち払い、槍を構える。


「不敗、絶対、完全、最強。力は我にあり──『穿神の王』」


 一穿。その一撃は神をも貫く。

 神定法則『不敗の王』。戦神の操る権限を継承し、戦意を力に変換する能力を得た彼は、神をも穿つことが可能だった。

 貫かれた虚神は言葉すら発することなく、絶対強者の前にひれ伏し消滅した。



「ディオネ神聖王国は、霓天アルス・ホワイトの手によって救われた! 英雄の功績を称え、貴殿を聖騎士第一位に任命する!」


「……はっ。この上なき幸せ。今後も民の為、陛下の為に精進いたします」


 感慨は彼の胸中に無かった。

 剣豪をも越え、ディオネ最強の名声を手にしてもなお、彼は満たされなかった。その原因は彼自身も分からないまま、ずっと。


 王城の渡り廊下を歩く英雄を、誰もが憧れの瞳で見る。

 当人は周囲を歯牙にもかけず、いつも通り定時で帰ろうと出口へ向かっていた。


「…………」


 他人の顔を覚えることが殆ど無い彼の視界に、見覚えのある者が一人映った。

 マリー・ホワイト。正騎士に就任したばかりだが、驚異の活躍を見せているアルスの妹。数年前にスピネ・リンマの元に師事し、今なお屋敷に帰っては来ない。


「聖騎士一位就任、おめでとうございます」


 マリーが兄に語り掛ける。

 それが、数年振りの二人の会話の発端だった。


 彼は一瞬、マリーの前で足を止めた。

 しかし、


「……世辞を言っている暇があったら、訓練でもしたらどうかな。君の弱さは霓天の恥だ」


 それだけ告げて、彼は去って行った。

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