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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
5章 英雄──神断ち、のち、愛
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111. 神聖国王リート

受贈(リンヴル)──デヴィルニエ。神槍ホープ」


 天より光が舞い降りる。光……神気は次第に形を成し、一本の槍となって神聖国王の手に収まった。


「ちょ、撮ってる場合じゃない! アルス君、配信切るよ!」


「ああ、うん」


 まあ、配信で流したいのは神聖国王が英霊だっていう事だったし、もう切っていい。ただ、レーシャの慌てようだ。そんなにヤバいものか……いや、神器ってかなりヤバいものか。


「これは、我が生前……神より授かりし神槍。数多の敵を打ち払い、帝国の軍隊を一撃で沈めたものである」


 でも、神は人の争いに介入しないはず。

 帝国の侵攻を防ぐための戦いは、人類内の紛争に該当する。その戦いの指導者である神聖国王に、神が神器を授けることはあり得ないんだけど……


「デヴィルニエ……ああ、虚神だっけ? レーシャ、虚神は彼に神器を授けてたみたいだけど……本当?」


 虚神は千五百年くらい前に死んだ神だ。どんな役割を果たしていたのかまでは知らないけど。

 レーシャは少し困ったように質問に答える。


「彼はよく分からない性格だったからね。どこか創世主(アテル)に反感があったような気もするけど……何を考えていたのかは正直分からない。まあ、気まぐれで人に神器を授与(リンヴ)することもあるかもしれないね」


「そっか。じゃあ、あれは正真正銘の神器だね。僕も対抗しよう……受贈(リンヴル)──ゼニア。神剣ライルハウト」


 相手と同様に神剣を呼び出す。こちらも神器を持っているからか、不思議と緊張感はなかった。


「まさか、汝も神より授かりし者だったとは……。良いだろう、正々堂々ぶつかり合おうではないか!」


「さすがに私も援護するよ。気をつけて」


「了解。では……」


 まずは僕から繰り出す。


 ……というか、無意識の内に脚が運んでいた。


                                       * * * * * * * * * *


「ちょっと、アルス君!? 先行しすぎ……」


「恐れず、来るか……その意気や良し! だが、神器を舐めぬことだ!」


 それはこちらも同じ。目には目を、歯には歯を、神器には神器を。鉄で鉄を斬るのと何ら変わりはないのだから。


 向かい来る僕に対し、敵は神気による波動を発し、一度で無数の槍撃を繰り出す。

 ──だが、視えている。敵の呼吸、手足の運び、魔力の波、全てが。この身に捉えられぬものは無い。


「ホープよ、我に守りを! 『神聖結界』」


 敵は防壁を張る。神気によるものだが、砕き方は知っている。

 そういえば、僕は剣を持っていたか。問題ない。刺突の威力を考え、平常よりも魔力を籠めればいいだけだ。


「……穿つは栄光の霓天不敗。──『穿神の王』」


「何だと……!?」


 神気による防壁が一点から砕け散る。

 そこで手を止めては敵は殺せない。防壁が破られた後、苦し紛れに放たれる突き。稚拙な攻撃は不動に劣る。神剣を横薙ぎし、槍の柄に刃を通す。


「『刃砕き』」


「神槍が、折れた……!?」


「……神器であれば神器を砕くのは容易い。技量の差だ、散れ」


 そのまま剣を敵の腹部に突き刺し、即座に引き抜く。敵は英霊……神器による致命であれば間違いなく致命に至る。


 これで、戦いは終わりか。

 そして、僕の出る幕も──


                                      ----------


「あ、アルス君……すごいね。私が援護する暇もなく終わっちゃった」


 ……また、この感覚だ。どうやら、神器でも槍が相手ならお構いなく動きが読めるらしい。頭の中に靄がかかったように、勝負中の出来事がはっきりと思い出せない。強者との戦いは特にそうだ。

 これは一体なんなんだ?

 僕が倒したらしい神聖国王はその場に倒れ、傷口から魔力を垂れ流していた。


「……見事だ。これが、未来か」


 彼は柔らかく微笑み、腰の剣を外し、僕に手渡した。


「……この剣と王位を返そう。先代の国王は幽閉されておる。彼にも悪かったと……そう伝えてくれ」


「はい、必ず。この国は人々の希望がつないでいきます。これからも、ずっと」


「それから……そこの少女よ。遠方に声を届けることはできるか?」


「はい、どうぞ」


 レーシャは再びライブを再開し、神聖国王の声を国民に届ける。

 彼は息も絶え絶えに言葉を紡ぎだす。


「聞こえているか……ディオネの民よ。今、この時をもって……王位を返還する。知っての通り……我は人にあらず……王に相応しくない。この国の未来は……自由に託されるべきだ。厳しき弾圧、我が愚鈍なる行為を、赦してくれ……」


 それだけ告げると、彼は手でレーシャを制し、配信を止めさせた。

 もはや動く事すらままならず、あるべき死の先へと還るのみだった。


「最期に、この国の未来の……伝えておこう。我を召喚し、この政変を命じたのは『修羅』と名乗る男であった。……どうか、頼む。この国の民を……」


 そして、彼は息絶えた。跡に遺ったのは陛下の剣と王冠のみ。

 たしかに託された。僕は霓天として……未来のことは分からないが、この政変だけは終わらせなければならない。そう、まだ終わっていないのだ。


「『修羅』か……五大魔元帥だね。『領域』は壊霊だったから、修羅は『放出』かあ……英霊の召喚に、国をも覆う結界とジャミング魔術。『修羅』の神能もそれに関連してそう」


「相手が何者であろうと、こんな事件を呼び起こしたヤツを放ってはおけない。ユリーチ達の元へ……」


 その時、悪寒が走った。どうにも気味悪くて、かなりの重圧がかかってくるような感覚。

 そして、その少し後にくぐもった振動音が裏庭から響いた。ユリーチたちの方角だ。


「ああ、嫌な予感がする……アルス君、行こうか」


 神聖国王から託されたんだ。何があろうとも打ち破ってみせる。

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