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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
5章 英雄──神断ち、のち、愛
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99. 正義の解放

 ついに反乱軍は首都まで迫り、戦はより激化していた。

 夜中でも休みなく行われる戦いに、反乱軍の義勇兵たちは疲れの色を見せていた。幻影兵は魔力体であり、いつまでも稼働できる。兵糧、疲労、人員……あらゆる要素において幻影兵が勝っている。反乱軍が優位に立てるのは個々の戦闘力と、エルゼアによる采配のみであった。現在、夜間は昼夜問わず戦っていられるタナンに依存している。

 そんな中、エルゼアは月明かりの元で今後の予定を立案していた。周囲に誰も居ないことを慎重に確認し、異能を使用する。


「起動しろ、『熱眼』」


 エルゼアの瞳に映ったのは、離れた首都ディオネ中央に位置する王城だ。視界は移動し、幻影兵と壁を通り抜け、玉座の間まで迫った。

 しかし、玉座の間に入ろうとした途端、強力な重圧がかかったかのように視界が圧し潰されてしまう。


「……やっぱり、駄目か。何らかの魔力障壁が張られてるな」


 エルゼア、もとい『神算鬼謀』エルムの異能、『熱眼』。

 一定以上の温度を持ち、一定以内の範囲にある領域の光景を覗き見ることが出来る。日頃の何もかもを見透かしたような態度はこれに起因する。もっとも、その異能は同僚であるグットラックにも、誰にも伝えていない。完全な信用は失敗を生む……それがエルムのセオリーだった。


「己の目で確かめる他ない、か」


 神聖国王の正体さえ分かれば、全てを終わらせることができる……そう確信していた。いかなる強者にも弱点はある。その情報を手に入れることで、エルムはここまでのし上がって来たのだから。


「圧政……気に入らない……! あの軍師を思い出す。……クソ。ボクじゃないのに、ボクの人生じゃないのに……どうしてお前の呪いを背負わなきゃいけないんだ、エリーザ……」


                                      ーーーーーーーーーー


「ルチカ殿に、ベロニカ殿。失礼する。お聞きしたいことがある」


「アリキソン殿。なんでしょう。……まさか、気付いてしまったのですね、我が真の闇に」


 幻影兵の増援が一時的に途絶え、さらに王城へ近づいた頃。束の間の休息にアリキソンがベロニカに話しかけてきた。彼女の傍には、ホワイト家の使用人であるルチカが仕えていた。アリキソンとルチカは知己であった為、すぐにベロニカも反乱軍に馴染むことができた。


「闇……? いや、俺が聞きたいのは貴殿の異能に関してだ。その凄まじい力からは、どこか俺の神能と近いものを感じる。今後の戦いの為にも、情報を得ておきたいと思ってな」


「っ……! それは、話せない。我が禁忌の力……それは偉大なる存在によるものであり、触れられざる領域……!」


「そ、そうか……話せないのならば無理強いはしない。すまなかった」


 彼はベロニカの珍妙な態度に振り回されていた。人前でここまで中二的な言動を堂々とできるのは、もはや芸術である。少なくとも、アリキソンのように正義と礼節を重んじなければならない人間にはできない芸当だ。ある意味で、彼はそれが羨ましくもあったが。


「……そういえばルチカ殿。アルスの消息は未だ掴めないのか?」


「はい、私も情報を集めていますが……手がかりはありません」


「そうか……アイツが遅れを取るとは思えないんだがな。寝込みでも襲われたか?」


 それは有り得ないと心の中で思いながらも、あらゆる可能性について彼は考えた。アルスは今、どこで何をしているのか。死亡したのならば、如何にして死に至ったのか。だが、考えれば考えるほどに、アルスの死亡は有り得ないという結論に落ち着くのだ。


「アルスさんがそのような失敗をなさる筈がありません。おそらく、深淵より最大の好機を見計らっているのでしょう、ええそうです、間違いありません!」


 ベロニカが冷や汗を流しながら彼の言葉を否定した。

 一方、ルチカはいつも通り涼しい顔をしていた。こちらが本当の信頼というものだろうか、と彼は思った。


「まあアイツのことだ。その内、顔を出すだろう。それでは」


 二人から離れ、アリキソンは周囲を見渡す。

 大半の兵士は眠りこけているが、一部は目を覚ましている。不安で眠れない者、不眠剤を使って翌日の備えに明け暮れる者、酒を飲み沈む者……有利な形勢に対し、陣営は陰鬱な雰囲気で満たされていた。

 疲労。その一語に尽きる。戦いは数だ、という言葉がある。初期は圧倒的優勢に思われていた反乱軍だが、圧倒的な物量による攻撃を受けて積み重なる疲労によって次第に押し返されつつあった。

 打開策は、ただ一つ。迫る王城にさっさと乗り込み、戦を終わらせること。その為にも、アリキソンには一層の、それこそ獅子奮迅の活躍が求められる。


「躊躇いはない。俺の力が人々を救うのならば……ここがルフィアでなくとも、戦うだけだ」


 彼はその身に刻み込む。

 「人の為」という、正義を。



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