18:秋のスイーツ試食
今までかぼちゃプリンをなめていてすいません。
口に広がるかぼちゃの甘さとなめらかな口当たりに俺はうっとりした。この時期になるとかぼちゃプリンがコンビニとかで出回るけれど、これを食べたらもう戻れない気がする。
「涼輔、助手。これ、おいしい」
「それはよかった。あ、このあと大隈くんや青木くん、宮島くんと七森に常盤も来るんだから全部食べるなよ、飯田橋」
「……気をつける…なるべく」
宮島先輩といえば、ある日の放課後に西月先輩とフォンダンショコラを作ることしていたため調理室に行くと、ココアにたっぷりの生クリームをのせてまったりとした顔をした宮島先輩がいて驚いたことがあった。そして飯田橋先輩と一緒にフォンダンショコラを堪能して帰っていった。確かケーキのおともはロイヤルミルクティ…本当に甘いものが好きなんだな。あれがギャップというやつだろうか。
修吾が宮島先輩のスイーツ好きにちょっと衝撃を受けていたが、今では部活の休憩時間におすすめスイーツを教えてもらっているらしい。
で、今はかぼちゃプリンだ。今日はこのほかにスイートポテトと栗パウンドケーキを食べる予定だ。シンプルに焼き芋やゆで栗もいいけど、お菓子にしても美味いよな!それに焼き芋は、学園祭とともに秋の大イベントの“学園焼き芋大会”で食べられるし。
そういえば学園のイベントはたいてい天野先輩の発明の餌食になっていたけど、食べ物メインのイベントだけは平和だったよなあ。
「ところで澤田くん。今年の修学旅行はちゃんと皆集合時間までに戻ってきた?」
西月先輩がちょっと楽しそうに聞いてきた。あ~、もしや先輩も昨年、寮長に言われたのかな。
「まあ、なんとか。先輩たちはどうだったんですか?」
「僕たちのときはなんといっても青木くんがいるからねえ。初日にしっかり釘さしてたよ」
「…あのときの隼人はこわかった」
なんとなく想像がつく。きっと“皆さん、ちゃんと集合時間は守ってくださいね。そうでないと困りますよ、ふふふ”とか真っ黒なほほえみつきで言われたんだろうな。
でもそれいったら、寮長のときだって大久保会長がいたんだから集合時間は守られたのではないだろうか。
「会長のときは猛者がいたようだよ。で、該当者は悪夢をみたらしいね」
「もしかして寮長ですか?」
「まあ、白石先輩って普段の言動と行動がアレだから澤田くんがそう思うのも分かるよ。でも女の子には慎重だって会長が言ってたんだよね」
意外だ…俺、“集合時間に戻ってこないやつ”って、絶対寮長だと思ってた。寮長を上回るそっち方面の猛者がいたってことか…すごいな、昨年の3年生。
「俺は青木先輩や会長みたいに皆をびびらせるなんて無理なので “頼むから、集合時間はちゃんと守ってほしい”と心をこめてお願いしました」
なぜか修吾や白戸から“ちーちゃんの必殺技ができた”とか言われるし、他の友人も“オカンに言われると守るしかねえよな”って言うし。
オカンって西月先輩のことだろう?なんで俺。
でも俺の返答を聞いた西月先輩と飯田橋先輩は笑いをこらえてる。
「皆が聞いてくれたならよかったじゃないか。じゃあ結構楽しい旅行だったでしょ」
「そうですね。白戸が鹿せんべいもってぼーっとしてたら鹿に囲まれて出られなくなってて面白かったです」
それを大笑いしてカメラに収めた俺たち…白戸は隙をみて脱出し“おまえら、ひどい!!”と半泣きだった。まあ修学旅行で一番あぶなかったのは白戸で、背が高くて性格もチャラいのでまあ逆ナンパされまくっていた。
でも、大学訪問でOBの話を聞けたのは貴重だったし寮長のいうとおり進路の参考になりそうだ。
「でも他にも楽しいことが多かったので、いい思い出になりました」
「それならよかったね」
「そっかあ…白戸くんのことはこれから鹿くんって呼ぼうかな」
「飯田橋先輩……もしかしてさっきから黙ってたのって、白戸のあだ名考えてたんですか」
「うん。いいあだ名だろ、助手」
うん、鹿より助手のほうがましだ。天野先輩に感謝だな。
そして飯田橋先輩が西月先輩の目を盗んでスイートポテトに手を伸ばそうとしたときに調理室のドアが開き、試食メンバーが顔をそろえた。




