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13:春休みの出会い

ちーちゃんの親友・大隈くん視点

 俺の親友である澤田千紘ことちーちゃんはいつも忙しい。

 今は生徒会副会長とバスケ部という2足のわらじだが、昨年は卒業した天野先輩の助手もやっていたので、わらじどころではなかった。

 もっとも本人にとっては生徒会役員になったのは晴天の霹靂で、天野先輩の助手に関しては“修吾、好奇心は猫を殺すって本当だよな”となぜか遠い目をしてつぶやいてたので推して知るべし。

 ……まあ、確かに天野先輩の助手ってのは微妙なポジションだよな。

 だけど、そんな状況を妬むヤツってのもいた。澤田は先輩にひいきにされている、と言うのだ。

 確かにちーちゃんの周囲にいた先輩方は寮長始め目立つ人たちばかり。でもさ、俺はそいつに問いたい。おまえはちーちゃんみたいな放課後を過ごしたいのか、と。生徒会で腹黒い先輩方に囲まれ、寮長と天野先輩の起こす騒動に巻き込まれその後始末に駆り出されるんだぞ?

 俺はちーちゃんと仲がいいからと先輩たちと顔を合わせることが多かったから分かる。お人好しで世話焼き、素直な性格のちーちゃんじゃなきゃ、あの先輩たちとはやっていけない。


 春休みはほとんどの生徒が残っているし、山のように課題は出るため授業はなくとも勉強に追われる日々だ。それでも何となく気の抜けた感じはある。実に不思議な感じ。

 ちーちゃんは新しく生徒会長になった西月先輩に呼ばれ打ち合わせ中で不在。俺は寮長になった青木先輩と入寮式についての話し合いを終えて談話室に通りかかった。昨年、俺たちはここで寮についての説明を受けた。途中、天野先輩の爆発騒ぎで中断したんだよな~…としみじみ思っているところに“澤田”という言葉が飛び込んできた。

 その方向にいたのは同学年のやつら。クラスが違うけど顔は分かる。

「澤田ってずるいよな。生徒会ってだけで私立の推薦取れるんじゃねえの?」

「それはありえるよな~。計算して引き受けたのかもな」

「だいたいさ天野先輩の助手ってなにそれって感じだよな。あいつ、学校の課題とか教えてもらってたんじゃねえの?天野先輩、首席だったしさ」

 ふざけんな、と思った。生徒会がきちんと機能してるから俺たちは変な規則にしばられずに自主性を尊重されてるんじゃねえか。先輩方をはじめ、ちーちゃんが頑張っているのを分かってないくせに。

 一言言ってやる、と思ってそいつらのところに行こうとしたら肩をつかまれた。振り向くと、そこにはやっぱり顔しか知らない隣のクラスのやつ。

「大隈、やめとけよ。俺に任しとけって」

「……確か同じ学年だよな?」

「うわー、ひどい。俺は白戸。さわっちと同じバスケ部の2年。くまっちは剣道部だよな」

「悪い。俺、あんまり自分と接点のない人間って覚えないんだよ」

「ま、普通はそうだって。俺はさわっちと同じ部活だから、くまっちのことは知ってるだけ。あいつらさ、勉強“だけ”はここのレベルだけど人間レベルは小学生だからさ。さわっちやくまっちが相手にするのは時間の無駄」

「だったら白戸にとっても時間の無駄じゃないのか?」

「んー、確かに無駄なんだけどさ。でも副会長のさわっちと副寮長のくまっちよりは暇だから。新学期前で忙しいだろ?」

「いや、もう打ち合わせ終わったから暇つぶしにつきあうよ。副寮長として変な芽はつんでおきたいし、場合によっては寮長に報告しないとね」

「ふーん。じゃ付き合えよ、くまっち」

「……ところで、俺はいつのまにくまっちになったんだ」

「細かいところは気にすんなよ、くまっち」


 その後、俺と白戸はそいつらに近づいた。

「お前ら楽しそうな話してるじゃん。さわっちがどうしたって?」

「びっくりさせんなよお、白戸。さわっちって?」

「ん?俺のバスケフレンズで副会長の澤田千紘だよ。…で、おまえら、生徒会役員になりたいなら、西月会長に自分も役員やりたいですって言ってみればいいのに。そう思うよな、くまっち」

「い、いやそれはちょっと……え、大隈…?!」

「確かに白戸の言うとおりだ。なんだったら俺から西月先輩に話をしておくから名前教えてくれる?」

 なんだか最後に出るキンキラキン衣装の悪役の気分だ。すかさず青木先輩からもらったバインダーを開き書く準備をする。

「え、いや、べ、別に生徒会役員なんてそんな大役は…お、俺たちもう部屋に戻るわ。課題残ってるから」

 最初にちーちゃんをけなしたヤツがなぜか顔色を変えて慌しく立ち上がり、あとの2人もそれを追うように席を立ち、そそくさといなくなってしまった…なにあいつら、ちっせぇ。

「は~、やっぱりあいつら小学生だわ」

「そうだな。ところで白戸、お前は隣のクラスの番長か」

「はあ?俺はごくごく普通の学生だ。俺らのクラスはさわっちのことを表面しか知らないやつが多いからな。くまっちのクラスではあんなこと言われないだろ?」

「当たり前だ。むしろ皆、不憫と思ってるくらいだ」

 俺の返答に白戸は噴出した。

「ぶっ。まあ、確かに不憫…うん、不憫だな」

 ちーちゃんだけじゃなく白戸ともつきあいが長くなる予感がした。

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