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11:大魔神にも腹黒にもなれません

 もともと3年生は9月頃からぼちぼちと部活の引退や委員会の引継ぎなどをはじめ、3学期を迎える頃には新体制となっていることが多い。

 それはここ生徒会も例外ではなく、次期生徒会長である西月先輩にたいして大久保会長が引き継ぎしていたし、寮のほうでも白石寮長が副寮長の青木先輩に引継ぎをしている。

 休憩をしようと会長が言い出し、西月先輩のお菓子と青木先輩のお茶を手にソファでくつろいでいるときにそれは起こった。


「えっ!俺、来年も生徒会ですか?しかも副会長と会計兼務ってどういうことですか!?普通選挙とかで決めるのではないんですか?」

「基本、ここの生徒会ってだいたい生徒会長が次世代を指名していくみたいなんだよね。僕も1年生のときに当時の会長から生徒会室に呼び出されて書記やってねって言われたし。西月くんや青木くんもそうだよね?」

「ええ、そうでしたね。僕も当時は澤田くんみたいに思いましたよ」

 大久保会長のにっこりは時として非常に怖い。西月先輩が俺にちょっと同情してるのがよく分かる。

「僕の場合は当時の会長から会計を頼まれたあとに白石寮長から副寮長やれって命令されたのでさすがに戸惑いましたけどね」

 青木先輩の戸惑いはもっともだろう…ん?ちょっと待て。白石寮長って、2年生から寮長だったのか?

「あの、白石寮長って2年生から寮長だったんですか?」

「僕たちが1年生の頃、寮長のなり手がいなくてね。そしたら和樹が俺がやるって言い出したんだよ」

 白石寮長、1年生の頃からああだったのか…でも納得してしまうのはなぜだろう。

「当時は1年が寮長なんてって反発もあったんだけどさ、いつの間にか同級生はもちろん先輩たちも掌握してたよ。想像できるでしょ?」

 大久保先輩はお茶を飲みながらくすっと笑う。

「うわ、なんかすごく想像できます。そういえば寮のほうは青木先輩が寮長になるんですよね。副寮長は誰がなるんですか?」

「ああ、それは…」

 青木先輩が言いかけたとき、ドアをノックする音がして修吾が顔を出した。

「失礼します。白石寮長から聞いたんですけど…」

「ああ大隈くん、部活を休ませてすいませんね。澤田くんの隣に座ってください」

 俺の隣に座った修吾に小さい声で話しかける。

「修吾、お前なんでここに」

「俺だって分からないよ。さっき白石寮長に生徒会室に行くようにって言われただけだし」

「2人とも。今から話すからこそこそしない。あのね、大隈くん。きみ、来年の副寮長に決まったから生徒会ともども学園のために青木くんと一緒に頑張ってね」

「「はい?!」」

 会長の発言に思わず修吾と俺でハモってしまう。ということは、俺が来年は副会長と会計で修吾が副寮長…。


「大久保会長。俺が副寮長になるのって、もしかしてちーちゃん絡みですか」

「は、俺絡みってなに?そんなの理由なわけないだろうが」

「だって、ちーちゃんどうみても3年間生徒会やりそうだし。自分で言うのもなんだけど、俺ならちーちゃんのフォローもできるって思ったんじゃないの?」

「3年間生徒会なんて恐ろしいこというなよ。確かに修吾はいつも…」

 ふと周囲を見ると修吾の発言に驚いているのは俺だけで。えー、嘘だろう。

「それも理由の一つだね。生徒会と寮長・副寮長はなにかと連絡事項も多いから意思の疎通はできたほうがいいし。でも大隈くんの裏表がなくてさっぱりしているところも買っているんだ」

「大隈くん、僕と一緒に寮の仕事を手伝ってくれませんか?」

「わかりました。俺でよければ副寮長やります」

「修吾、お前何即決してんだよ。すこしは考えろよ」

「ちーちゃんの言うことも分かるけどさ、生徒会よりラクそうだから剣道部との両立ができればいいよ、俺は。あ、宮島先輩に話さなきゃいけないですよね」

「宮島くんには僕からも話をしますよ。後で一緒に剣道部に行きましょうか」

「青木先輩、ありがとうございます」

 そういうと修吾はさらっと笑った…そうだ、こいつはこういうヤツだったんだ。でも俺と修吾は大魔神でも腹黒でもないんだけど、大丈夫なんだろうか。

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