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49.キンキンピカピカXmas!

 京都デートも、いよいよクリスマスイブの終わりを迎えつつある。夜景を見たあとはなんだか凄そうな旅館につれてきていただき、そこでアゴコンビとも解散。今度こそ一日働き詰めなアゴコンビにもお休みさせてあげられた。

 ごめんね、わたしとつばやさんがグースカしてる間にも運転してくれてたし、休めたといえばサービスエリアだとか、わたしとつばやさんがウロウロしてる間のちょっとの時間だったよね。ほんとに申し訳ない、ありがとう。


 若頭さんの「みかるちゃんも知ってるやつが護衛&運転手だから、安心してね」のお言葉どおり、たしかに知ってる人だったけど、一体なんて言われてつばやさん拉致計画に参加することになったのだろう。なんか想像するだけで申し訳ない。まあ、つばやさんも機嫌よかったし、きっと可愛い部下なんだろうね、うんうん。明らかに西田さんと脇山さんのほうが年上なんだけどね。うーんこの、エリートやくざなつばやさん!


 さてもの、これも若頭さんオススメの京都老舗旅館。まるでテレビのロケに出てきそうな大きなお屋敷のようだ。このへんのお金は「いいよ心配しなくて」と押し切られてしまったのだけど……一体このデートに何十万円かかっているやら。もはや考えるのも嫌になる。


 さて、着いてからは「すげー、部屋広い!」とはしゃいだ頭を叩かれて、わくわく待ってしばらくすると、部屋に御膳が運ばれてきた。なんと、天麩羅御膳である。これでもかってほど大きな海老天、椎茸、その他諸々に美味しそうな香り漂うおつゆがついて、赤出汁のお汁がついて、注文したら瓶ビールまで登場した。


 なんか、ほんとは、チキン丸かじりしてシャンパンでよかったんだけど。かちんこちんに固まって、ホカホカと湯気を出してる天麩羅を見るわたしを、つばやさんはケタケタ笑った。


「みかる、お前もカシラに踊らされたんだな? 全然エスコートじゃねえなあ。まるでこのプランじゃ、俺が仕組んだみたいじゃねえか」


 そう言われると恥ずかしい。あれ? わたしなんで相談に行ったんだけっけ。ちょっと、たしかにこんなのヤクザプレゼンツ・セレブリティデートと大して変わらないぞ。ここで当初の目的を思い出した。そうだプロポーズだ、指輪、指輪を渡すのだ。


 決意して、きっと顔を引き締めてつばやさんに向き直したけれど「さっさと食え」とシカトされる。…………ううん、なんだこの天麩羅!! サクサクか! ふわふわか!!


 つい、夢中になったわたしに、つばやさんから恐ろしいことが告げられた。  


「みかるぅ、お前着物本当に似合うな」

「ぶはー、瓶ビール美味しい。え、うそじゃん、趣味悪いよつばやさん」

「嘘じゃねぇよ…………だからよ、」


 え、あのぅ。まだ食事中ですけど、つばやさん。大きな手が、着物の襟首にぐい、と入ってくる。


「男が着物をやるときは、脱がせるためだって知らなかったのか?」

「…………………きいたことがねえけど!?」


 だからさっさと食えと。何をしやがるつもりなんだ。いや、なにって、なになんだろうけど。チビチビ飲んでいたビールのグラスを無理矢理持ち上げられて、


「おぼれふっ、ビールでおぼれじぬ!」

「それならお前、死んでも満足だろ」


 そういう問題じゃねえよ!!

 非常にもったいないことに、ちょっと口から溢れたビールをおしぼりで拭おうとしたのに、ぐいと頬を掴まれて舐めとられる。ちょっとまって、このひと、なんでスイッチオンしたの、


「待ってほんとに待ってよ、まだほら、布団もまだ敷いてないし!」

「お前が食うのが遅いのがわりぃんだよ」

「あああああわたしの海老天、なんで食べるの!?」


 ジタバタする手を押さえつけられる。こういうの、旅館の人が片付けに来てくれてお風呂入ってお布団敷いてっていう流れじゃないの? このやくざ、全然待ってくれない。いくら部屋が広いからって、結局なんとか食べきってすぐに押し倒されて、


 きっとこの人念願だったんだろうね。着物を脱がされてそれから………………     



○○。



 あれ良い着物なんだよね、あんな脱がせ方しちゃだめだよね? って終始気になってたんだけど、いつの間にか几帳面なつばやさんは、きちんと着物を片付けてくれていた。ヘロヘロなわたしを抱えたつばやさんが向かったのは、テレビのロケでしか見たことないような部屋付きの温泉。なんかもうヒリヒリするしバキバキするし。恐る恐るお湯につかって、「はああ」と変な息を吐けば、またケラケラと笑われる。もうね、言わせてくれ、わたしの今の感情をぶちまけさせてくれ!


「ちがうっ、待ってくれよ、ちがう、こんなのちがうーーー!!!」


 わたしが突然出した大声に…………、ちゃぽん、と後ろからわたしを抱いた全裸のつばやさんは意地悪そうな笑みで応えた。


 なんか、これもちがうんだけど!!!


 風呂、超きもちいいな!!!


 遠くお月様が空に見える。金色のまんまると、金色の濡れた髪が……まるで一緒の色に見えて、なんだかなぁ、綺麗だなぁと思ってしまうのだった。はー、わたしも甘いなぁ、つばやさんに。



○○。


 一句詠みます。


 クリスマス ヤクザ的にも 性なる夜。


 敷いてくださったお布団は当たり前のようにくっついてるし、さっき散々楽しんだくせにまたやられた。起きたら身体がさらにバキバキだった。そしてわたしよりも早く起きたつばやさんは、さっさと髪を整えていた。着ているのはわたしがあげたやつじゃないけど、いつものジャケットでもなかった。


「うおぉ、これはこれでレアだね」


 なんと黒タートルネック、ジーンズにベージュのトレンチコート。こんな服持ってたんだ。まじまじと眺めてしまう。すると涼し気な切れ長の目をサングラスで隠された。


「あんま見るなよ。お前、こういう格好好きなの?」

「うーん、好きかどうかと言われちゃ困りますね。わたしは変な服が好きなので。でもめちゃくちゃかっこいいです」


 機嫌を良くしたつばやさんは「そぉか」とほほ笑んだ。そしてやけに寒いなと思ったら、阪奈みかるは全裸だった。


 すっぱだかーにばる!


「……服着ろよとりあえず」

「おまえが脱がせたんだろ、風邪ひいたらどうしてくれんだよ!」


 くそっ。持ってきた紙袋から服を取り出した。ひょこりと上からつばやさんが覗く。


「お前、結局そんなのばっか着てるんだな」

「……いや、やっぱかわいい服とかガラじゃないですし、落ち着かないですよ」


 お気に入りのパーカーワンピースはグレーで落ち着いてて、これでもデート向きなはずだから。かぶって腕を通す。タイツを履いて、赤いニット帽をかぶった。ちら、と見たつばやさんはニヤニヤしている。


「スキあり!」


 ぼけっとしてたつばやさんの頬に、ちゅっと口づけてやった。「や、め、ろ」と、頭を叩かれて、なんだろう、小気味がいいぜ。



○○。



 さてさて着替えて、これまた朝食には豪華すぎるお食事をいただいて旅館を後にすると、黒い車がお迎えに来てくれていた。


「おはようございます!」

「おはようございます!」「おはようございます!」


 本日も運転をお願いしているアゴコンビには、特別給与が必要だと思うよつばやさん。どっかり乗り込んで目的地へと向かってもらう。


「酒造見学はもうやめますか?」


 走り出した車を運転しながらアゴじゃないほうが聞いた。


「そうだねえ。時間なくなっちゃったし。あ、着物ってどうしたんだっけ」

「東京に先に送ってるわ」

「……すごーい、ぬかりないね、つばやさん」


 また酒造見学は個人的に来よう。くそぅ。悔しい顔をしていたら「また来ればいいだろ」とため息を吐かれた。それもそうだ。そしてまた来てくれるのか、うれしい。


「で、クリスマスだけどツリーでも見に行くのか。みかるサンタ」

「ツリーなんか東京にもありますよ。京都にしかないものを見に行きましょうぜ」


 ぱっと顔を上げて外を見ると、雪が降ってきている。ああ、冬だなあ。今から行く場所にはもってこいだ、雪景色!



○○。



 さあ、ここはどこでしょう。ヒントです。

 つばやさんの頭みたいな色のキンピカが見事な池に映って輝いています。ちらほらと降った雪が、屋根の上に積もってる。これが夜、かなり降った後とかなら絶景だったに違いない。見事な雪景色が見られなかったのは残念だけど、まあ京都っぽい景色が見れたからよしとしよう。

 少しの白、松の緑、金の鹿苑寺。うん、THE・京都だね。


「なあみかる。お前さ、安易すぎない? 金閣寺って……修学旅行かよ」

「つばやさん、金閣寺をばかにしちゃいけないよ」


 なんせあの足利義満ゆかりの場所だ。なんか来るだけで出世できそうな気がする。伏見稲荷にも行ったし金閣寺にも行ったし、十分パワースポットのパワーを吸ったに違いない。

 まあ、隣にヤクザがいるからプラマイゼロかもしれないけど。なんかむしろ縁起悪い気がしてきた。


 池の柵に腕をかけて、ぼーっと金色を見る。見上げても金。


 周りを見渡すと、これまた外国人のお客さんやら、なんとクリスマスだってのに渋いね、家族連れも意外といる。だんだん雪が強くなってきた。悪趣味と評判なコートに雪が染みる。


「おかしいな、もうすぐなんだけど」

「何がだよ」


 スマートフォンの時刻は、約束の時間だ。なのに、予定のあいつらがこないぞ。きょろきょろ見渡していると、後ろから聞きなれた声が聞こえた。



「ミカル・ハンナと齋藤鍔夜やなぁ。へっへっへ」



 きた! ぱっと振り向いた。



――そこにいたのは金髪グラサンで着物を着た品宮さんと、後ろで「へっへっへ」とゲスい笑いを浮かべる、おもちゃの手裏剣を持った着物のアゴこと西田さん。そしておもちゃの刀を持ってこれまた「へっへっへ」と笑うアゴじゃないほうこと、脇山さんだった。


 品宮さんが持っているのは、まあ普通にわたしが渡したお酒なんだけど、



「おい、これと斎藤鍔夜を賭けて俺と勝負じゃコラァ」


「おうおう! つばやさんに手出しはさせねえぜ!」



 ずいと前に出たわたし、そして茶番を始めた部下のお遊戯会に、つばやさんは苦虫を噛み潰したような表情で立ち尽くしていた。

いつもありがとうございます〜!

最終回までこのテンションで貫きます。

金閣寺でおふざけ、良い子は真似しないでください!

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