313 北条大包囲網 序章 東北3
313 北条大包囲網 序章 東北3
1555年 6月 蘆名盛氏
「阿南よ、此度は実家へと帰るか?」
隣にて控えている今だに美しい嫁へと声をかける。阿南は、伊達稙宗の娘であり、現当主の伊達晴宗の兄妹でもある。
天文の乱においては、中山道へと出る為に晴宗方と手を組み晴宗の勝ちを決定付けた。ただ、今回は勝ち馬である北条に乗ることにきめ、幕府からの文をそのまま北条へと横流しした為晴宗方との争いは必至であった。
前回は伊達家内での争いであったから阿南としても早く終わらせたい一心と嫁ぎ先の蘆名の発展を願い受け入れてくれたのであろうが、此度は実家との決別になる。
「いえ、私は蘆名の女ですわ。蘆名が、盛氏様が進む道が私の進む道にございます。実家には遠慮せず御勤めくださいませ。」
阿南の肩に手を置き抱き寄せる。
「すまぬ。ワシが蘆名を盛り立てたとしても息子の代では北条の家臣となっていることであろう。その地位をより良くする為に此度の戦いを終えれば北条の御恩と奉公に組み込まれようと思う。」
盛氏の中では忸怩たる思いがあった。しかし、北条の勢力を見ていると理性では北条と共に生きていくのが繁栄の道として正しいと囁いている。
「それもまた一つの道ですわ、北条の中で繁栄すれば日の本でも重要な立ち位置に立てるのでしょう?ならば迷うことはありませぬわ。」
「そうか、そうよな。迷うことはない。今回の戦いで中山道を取ってその領地と今の領地を合わせて蘆名に与えてもらおう。そしてその分の内政は北条に任せ蘆名を繁栄させるのだ。」
盛氏は息子のため、蘆名のために大きな決断をした。
1555年 5月 佐竹義昭
「皆のもの、よく集まってくれた。」
佐竹義昭は、公方からの手紙が来てから保持するようなことなく直ぐに北条へと送っていた。そして、送った後に家臣達を集めていた。
「この度集まってもらったのは相馬との戦いが近くなった事を知らせるためである。公方様から、北条を討つように檄文が東北各地に放たれている。我々は、公方様ではなく北条につく。」
家臣達がおおっと感嘆の声を上げる。前回の岩城攻めから4年、奪い取った領地の安定化はある程度済んだ。皆の気力や兵力も充実している。
「皆が俺の命に従って北条のやり方を徹底的に真似てくれたおかげで今の佐竹は北条には一歩劣るものの戦国有数の大名になったと思う。その力を示す時が来たのだ。」
皆が力強く頷く。ここにいるもので北条のやっていることの凄さがわからないものは居ない。確かに足利の権威は凄いものがある。しかし、遠い権威よりも近くの豊かさだ。我々は北条と共に豊かになるのだという考えが義昭の下共有されていた。




