309氏照の覚悟
309氏照の覚悟
「私は、北条の男としてその責務から逃れるつもりはございませぬ。父上や兄上の様にと思いますがそれに固執して自分の手の届かない範囲まで無理をして伸ばすつもりもございませぬ。私を支えてくれる皆を頼りできる事を増やしより良い結果に向かって努力するつもりにございます。」
氏照の答えは俺にとって満点回答だった。常日頃から言っていることや行動で示していること、軍学校で教えられた事や父からの教訓などしっかりと全て受け継いでいる様だ。
「分かった。氏照には下野に向かって貰う。康虎や政豊、先に向かった政直や政信達の大将として東北勢に当たって貰う。東北方面軍大将だ。康虎に与えていた上野の軍事権を光秀に代理で任せている。つまり実質東北方面軍として使えるのは下野 常陸の一部 下総 上総の兵になる。安房の兵は水軍で固めてあるから遊撃として使え。」
「はっ!」
元々康虎には軍事、その他のもの達でそれぞれの地域の統治と分けていたが今回は多方面での同時戦闘になるため軍事権もそれぞれの統治者に委ねられていた。
「よし、ならばそこにある今日の仕事を終わらせたら明日向かっていいぞ。」
「え?この量を今日中にですか?」
2〜3日ほどかけて終わらせようと思っていた仕事が机の上に載っていた。
「ん?移動中に寝れるではないか。やれ。」
「はっ…」
氏照は既に心が折れて泣きそうになりながらも目の前の政務に注力して行った。
〜〜〜
1555年 6月 北条氏政
現場から上がって来る報告を父と一緒に江戸城で纏めて二人だけの評定を行っていた。
「では、上杉に対してはこの戦略方針で行こう。武田に関しては臨機応変にという形になるな。」
父氏康が、盤上のコマを動かしていく。
「東北が鍵になってきまする。物資の補給や伊豆駿河の防衛はお任せいたします。」
「分かっておる。お主が軍務で前線に就く間はワシが代わりに内務を全て取り仕切る。そのための組織作りもしてきておる。」
「最悪父上にも出て貰う可能性も御座いますがね。」
「まあ、よっぽどの事がない限りそんな事態にはならぬだろうて。」
「そうならないように頑張りまする。では、私は江戸城へと戻ります。」
「うむ、武運を祈る。」
氏康にとってこの戦はあまり心配はしていなかった。敵の足並みは揃わず烏合の衆がいる。いくら上杉武田が相手と言えども足並みは揃っていない。
上杉の侵攻を食い止めるかどうかがこの戦のキモになってくる。




