303幕府での面会
1554年 12月 上杉実虎(史実の謙信)
実虎は少しの伴だけ連れて将軍である足利義輝に謁見しにきていた。朽木の石神館へと詰めていたのだ。
奥には義輝が座る場所があり、それに合わせて縦並びに実虎達を挟む形で幕臣達が座って待っている。その場で実虎は何事もない様に座ると義輝が入ってきた。
義輝が入ってくるのに合わせて全員が頭を下げる。義輝が座り表をあげよと声をかけた事で幕臣達は頭を上げた。しかし、実虎一行は頭を下げ続けたまま待機していた。
「実虎、その様に畏まるでない。そちと予の仲ではないか、顔を見せてくれ。」
「はっ、ではお言葉に甘えまして。」
「うむ、久しいの、1年ぶりかのう。」
「そうでございますな。ただ、この一年はあっという間に過ぎたのであまり久しぶりに会った気がしませぬ。」
「そうじゃのう、我々もいろいろあったから分かるぞ。さて、まずはお主の献上品有り難く頂こう。そちの幕府を支えようとする姿勢大変嬉しく思う。」
「いえ、近衛邸にも寄らせて頂いたのですが北条の様には支援できておらずお恥ずかしい限りです。」
謙遜をしていると幕臣や公方の顔が少し曇っていた。
「いや、お主は直接足を運んで話をしに来てくれている。これは北条に勝るとも劣らない事だ。そういえば、武田と争っていたとか。その時の戦の話を聞かせてはくれぬか?」
「はっ!」
実虎は起こった事実を虚飾を設けずに真実だけを述べていく。その都度義輝から気になったところについて質問され答えていく。
話を終える頃には1刻ほど経っていた。
「長々とお時間を取って頂き申し訳ございませぬ。幕臣の方々にも稚拙なお話をお聞かせしてしまい恥ずかしい限りです。」
「その様なことございませぬ!関東管領殿のお話は我々に取っても興味深い話でした。」
幕臣の一人が声を上げる。
「そうじゃのう。ワシも楽しく聞いておった。そこまで畏まる必要はなかろうて。」
「ありがとうございまする。」
「うむ、ではそろそろ謁見は終わりにして皆で交友を深めようではないか。」
義輝の言葉に合わせて女中たちが膳を持って入ってきた。そこに載せられていたのは干し椎茸や俵物、清酒など関東で庶民でも楽しめる様になってきたものであった。
「では、関東管領のこれからの栄達と幕府の栄光を願って乾杯!」
義輝の合図に合わせて宴会が始まった。家臣たちも幕臣たちから話しかけられつつ宴を楽しんでいると義輝から実虎に頼みたいことがあると声がかけられた。




