293黒姫の激突
1555年 4月 武田信玄
黒姫で信玄達は1万3千の兵で防衛陣を敷いていた。信玄の読みでは近くの野尻湖辺りで一度山越の疲れをとってからこちらに進撃してくるだろうと思っていた。
いくら4月の時期でもまだまだ山中は寒さが厳しく、山越には多大なる労力が必要なことに変わりはない。
その休んでいるところに対して夜襲をかけるための兵を山県に1000任せている。
「あやつらの様子はどうだ?」
「はっ、上杉軍の先鋒3000が野尻湖西に布陣し本隊を待っているようです。」
野営の構築や周囲への偵察など基本的な行動を取っているらしい。
「それを率いているのは?」
「はっ、援軍を要請した村上の様です。」
「ふむ…なれば本当に先遣隊なのかも知れぬな…」
信玄としては初めて戦う相手。元から油断なぞするつもりはないが慎重になりすぎない様にも気をつけていた。
「よし、山県にはこのまま作戦を続行させる様に伝えよ。できるだけ兵に損害を与えるよりも奴らの準備したものを破壊することを目的にせよともな。」
構築した陣地を修復するならそれはそれで良し。こちらから更に嫌がらせの様に背水の陣を文字通りさせてやるつもりだ。
もし、野尻湖という良い立地を捨てこちら側まで出張ってくると言うならばそれはそれで迎え撃つのみ。休息なぞ与えずに一気呵成に攻め立ててやる。
奇しくも上杉、武田両大将の選択肢に突貫という言葉が浮かんでいた。
同刻 上杉実虎
「予定通りか?」
弥太郎の第一騎兵部隊の後ろで第二騎兵部隊を率いている上杉実虎の元に伝令が走っていた。
「はっ、村上殿にはご命令通り野尻湖西に陣地を築き休息を取ると伝えてあります。」
実虎は敵を騙すにはまず味方からと言う様に村上に疲れ切っている3000の兵を与えて野尻湖へと向かわせた。
「ふむ、これで奴らが餌にかかれば良いのだがな。」
弥太郎と実虎率いる3000の騎兵部隊と歩兵7000の本隊は妙高山の麓から黒姫山の通りやすい道を強行軍で押し通し、現代では黒姫競輪場がある平野にて兵を少し休ませていた。
「はっ、我々は奴らがかかってもかからずとも武田への進軍を止めることはございませぬな?」
「そうだ。武田の肝を冷やしてやろうぞ。」
「「「おう!」」」




