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再生チート持ちのヴァンパイアハーフ、Fランクからの下剋上〜事故物件ダンジョンで社畜しながら妹の命を救います〜  作者: 相木ナナ


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12話 手がかりと父

 帰宅したルクスは、ユミエラを寝かすとさっそくオーデュインの荷物を漁り始めた。

 

 とは言っても、屋敷にあった高額な本などは置き場がなくて売ってしまっている。

 残っているのは、オーデュインの手書きのものだけだ。

 

「えーい!! この中にヒントくらいあれ!!」

 

 小声で叫ぶという器用なことをしながら、ルクスは手記をめくった。

 上品な日本語で、永飢病えいきびょうについて。というページを見つけたルクスは、小躍りして小指をぶつける。

 

永飢病えいきびょうについて。妻、ルミリアを失ったこの難病を直す手段は地球にはない〉

 

〈グランディアの民なのだから、解決の糸はやはりグランディアにあった。しかし、あまりにも数が少ない。今後の為の、娘のために念のため、解毒剤になる五つのものをグランディアで育てることにした〉

 

〈目安として、五節の日に収穫できるように品種改良することにした。一つ目はグランディアの入り口にあるフォルン村に……〉

 

「手がかり、あったーーー!!!」

 

 今度こそルクスは叫んでしまい、眠っていたユミエラを起こしてしまった。

 ルクスはへたりこんだ布団を使っているが、ユミエラのベッドは真新しい。

 

「どうしたの、お兄ちゃん……? またトマト痛んでた……?」

 

「違うよー、ユミエラ。その……オヤジが、グランディアにユミエラの病気を治すアイテムを見つけてたんだ」

 

 ユミエラの大きな瞳が、潤む。

 

「お兄ちゃん、グランディアにいっちゃうの……?」

 

「オヤジと違って、すぐに行ったり来たりするよ! ユミエラを助けるためだから!」

 

 母が死んでから、思えばオーデュインはグランディアを行ったり来たりしていた。

 さっきそれが病気の為だと分かったが、こんなことがなければ知らないままだ。

 

 ルクスは十代だったから放浪癖だと思えたが、赤子だったユミエラとしては心細かったに違いない。

 ユミエラがはいはいしたり、そのおむつを替えたりするのは、ルクスの仕事だった。

 

 兄というより半分は育ての親のようなものだ。

 

「聞いて、ユミエラ。薬はグランディアにしかないんだ。兄ちゃんは怖いけど、ユミエラの為に行ってくるよ。……信じて待ってくれない?」

 

「……絶対帰ってくる?」

 

「もしかすると、一泊したりするかもしれないけど、病気を治すためには五個アイテムがいるんだって。だから行ったり来たりするよ」

 

 潤んでいたユミエラの瞳から、涙がボロボロと零れだす。

 止まらない涙は、ユミエラの膝を濡らした。

 

「……ごめんなさい。お兄ちゃんごめんなさい。私が病気になって、ずっと自分が食べるものも我慢させて……全部わたしのせいで……!」

 

「そんなこと、謝ることじゃないよ! ユミエラは何も悪くないんだから」

 

 抱きしめると、ユミエラはまた一段と細くなっている。

 成長期なのに、この痩せようはルクスには切なかった。 

 

 絶対にグランディアに行ってアイテムを見つけてやろうというやる気が、ログインする。

 そうでなければ、打つ手がない。

 

 ユミエラが泣き止んで寝るまで、ルクスは横で手を握って待っていた。

 その間、ルクスは五節というワードを携帯で検索していた。

 

 一月七日の七草の日。三月三日のひな祭り。五月五日の端午の節句。七月七日の七夕の日。九月九日重陽の節句を、五節というらしい。

 必要なアイテムは五つ。それぞれの日に確実に一つ回収して、食べさせなければならない。

 

 明日はクリスマスだ。

 最初の節句まで、残りは十七日しかない。

 

 一度行ってアイテムを取れるとは限らないし、フォルン村という村の場所も知らない。

 試しに何回かグランディアに行ってみるしかないだろう。

 

「ユミエラをその間どうするか……」

 

 このぼろ屋で、あてもなく留守番させるのも可哀そうだ。

 さっきの取り乱し方を見ても、一人はメンタルによくないに決まっている。

 

 突然ルクスの携帯が鳴った。

 ユミエラが眠っていることを確認すると、ルクスはそっとアパートの外の廊下に出る。 

 

「もしもし? ユーナ先輩、どうしたんですか?」

 

「どうしたとはご挨拶じゃないの、ノーナシゲボク~? 医者を手配したのはアタシよ!」 

  

「そうでした!! あの、実は永飢病えいきびょうだという診断で……」

 

 不機嫌なユーナに、慌ててルクスは聞かされた話とさっき発掘したばかりの事実を報告した。

 その話を聞いていたユーナから、声の尖りは消える。

 

「そう……でも、解決策があって安心もしたわ。ゲボク、しょうがないからグランディアに行く日は自由に休んでもいいわよ。社長権限で、半分は有給にしてあげる」

 

「わああああああ!! さすがユーナパイセン!! スマホ越しでも眩しいです!」

 

「そ・れ・と、ケニーを連れていきなさい。あっちのシフトメンバーにも話は通すから。アンタ、レベル15でしょ……せめてレベル30のケニーを連れていきなさい」

 

「いいんですか……!!?? あの、ケニー先輩には……」

 

「嫌とは言わせないわよ。それに、電話が繋がらないけど仕事かって、ケニーからちょっと前に聞いてきたもの」

 

 おそらく、食べ物の心配をしているのだろう。

 ネオの妹であるアリアから大量にプレゼントされたことを知るはずがない。

 

「あと、ゲボクがグランディアに行ってる間はあたしがユミエラを預かるわ。食費くらいは、頑張って払ってもらうわよ?」

 

「重ね重ねありがとうございます~~~!! ユーナ先輩がいなかったら俺、終わってましたぁぁぁ!!」

 

「まあね。せいぜい、崇めたてまつりなさい」

 

 用事があればこまめにメッセージをいれること、と念押してユーナは電話を切った。

 

「……ほんと、いい先輩だよ……」

 

 冷えた手足を温めながら、ルクスは一人ごちた。

 見上げた月は、どこか暖かい光を放って空で輝いている。

 

 ルクスには、それが未来の暗示のように思えた。

ユーナはツンデレです。デレ多めです。

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