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第413話 希少魔法の子供たち

「た、頼み、ですと?私に、ナユタ様が!?」

「そう」

「頼みなどと!一声御命令いただければ、どのようなことでも!」

「あーそう。まあ別に大したことじゃ無いんだけどさ」

「?」


 那由多は溜息をつき、「あー」と若干躊躇うような声を出したあと、言った。


「集めてくれない?生き残ってる希少魔術師」




 ***




「良かったんですか?那由多」

「ん?」


 人気のない全神国のベンチで那由多に寄りかかりながら、わたしは疑問を持ちかけた。


「まあ、最善ではないんじゃないと思うよ」

「では何故?」

「……一応の落とし前、かな」


 ちらりと那由多を見ると、少しわたしから目をそらして空を見上げていた。

 ばつが悪いと思っている時の那由多がするやつだ。昔から変わっていない。


「わたしは、那由多を尊重しますよ」

「ふふっ、ありがと」


 そう言って笑う那由多は、いつも通り可愛かった。


「クロ、ナユタ」

「ステア。終わりましたか?」

「ん。時間、かかった」

「1から記憶を改竄してもらっちゃったからね。無理言ってごめん」

「大丈夫。いい練習に、なった」


 そのまま数十分待っていると、ゴラスケを抱いたステアがフラフラしながらこちらに来た。

 ふらついているのは魔力切れとかではなく、全神国そのもののせいだろう。本来は精神が揺らいで力が出せないはずのこの国で無茶をやらせてしまったのだ、無理もない。


「じゃあ、ルシアスの迎えが来るまで食事でもしようか」

「そうですね。ステアはここを歩き回るだけでメンタルが削れますし、わたしが買ってきます。なにがいいですか?」

「ホットケーキ」

「なにか魚介系のがあれば。なかったらなんでもいい」

「分かりました」


 ステアを支えながら、アマラの元へ戻る那由多を見送ってから、わたしは街へと向かった。わたしもここは正直好きではないが、ステアの為ではやむをえまい。


 来る勧誘を適当にあしらいながら、わたしはさっきの那由多を思い出す。


『希少魔術師を……?しかし、残っているのは』

『だからだ。頼むよ』


 世界各地から集められた、虐げられた過去を持つ希少魔術師たち。

 那由多を信奉し、世界の改革を望んだ彼らは、それを見届ける前に死んだ。

 ボタンと、オトハとオウランがスギノキで皆殺しにしてしまったから。


「すみません、そのフライください」

「あいよ。ところでお嬢さん」

「勧誘ならば間に合っています」


 だが、全員がスギノキに向かっていたわけではない。

 髪色によって差別されていたところを保護したものの、魔法を使う才能が薄かった者が2人。

 そして、子供だ。まだ希少魔法をろくに扱えず、那由多のこともよく分かっていない、そんな少年少女たち。それが5人。

 いくら身内至上主義の那由多といえど、子供を死地に送り込むほど鬼畜じゃない。彼らはスギノキで匿われ、次代の那由多の手足ととして教育を進められていたらしい。


「よし、帰りますか」

『ねえ、ボクのは?』

「私と同じもので我慢しなさい」

『ええー!』

「ええーじゃありません」


 だが那由多が力を失い、目的を変えたことで、その必要がなくなってしまった。

 だが元の場所に返したりすれば、また差別と虐待と罵倒の世界にわざわざ投げ込むことになる。

 かといって、この先スギノキで面倒を見続けるというのはどうだ。純粋無垢な少年たちを、この狂った国で面倒を見させられるか?いいやダメだろう。


 そこで那由多は、世界で最も劣等髪に対する差別が少ない、フィーラ共和国連邦に目を付けた。

 簡単に言ってしまえば、里親を探したのだ。クローン研究の傍ら、永和ともちょこちょこ話し合って。

 そして全員の親が見つかり、後は渡すだけとなった際に、那由多はステアに頼んだ。

「子供たちの記憶を消して欲しい」と。


『……良くはないよねぇ』

「那由多のことですか?まあ、わたしも同意見ですよ」

『でも、那由多はそれを選んだ』

「那由多にとっては最善ではなくても子供たちのことを思えば正解に限りなく近くはありますから」


 ステアに、少年たちの記憶を完璧にいじくり、大筋の記憶はそのままに、トラウマや那由多のことなどの記憶を消去し、代わりに耐えられる程度の辛い経験を植え付けてもらう。

 それによって、「髪色で差別されないように保護された子供たち」という、間違ってはいない境遇の、髪色以外は普通の子供として今後を生きられる。


『スギノキ戦に参加しなかったっていう2人は?』

「望むなら別の人生を……という話だったらしいですが、拒否したそうです。那由多のことを覚えたまま、アマラの補佐をすると」


 那由多が取ったのは、傍から見れば責任の放棄かもしれない。

 自分の目的のために集めておいて、要らなくなったら別の人間に任せる。まあ、良くはない。


 だけど、那由多は特殊すぎる。その絶対的な頭脳がある以上、今後の戦の中で狙われる可能性は高い。

 その時、子供たちが人質にされたり、最悪殺さりたりということもある。

 その危険性は排除しなければならない。那由多は自分の責任より、彼らの安全を優先した。


「スギノキで果てた希少魔術師たちのような大人なら、自由意志を持って那由多に付き従っていましたからね。那由多もいつでも切り捨てられるでしょう。しかし、子供では話が別です」


 責任だなんだは、言ってしまえば大人の都合だ。子供の安全や幸福より優先するようなものじゃない。


『でもそうなると、覚えた希少魔法のことも忘れることになるんだよね?主様がよく許したね』

「ああ、あの時貴方寝てましたね。大書庫から魔導書引っ張ってきて、渡しておくそうですよ」

『そうなの?大丈夫かな、共和国連邦もいずれ主様が手に入れることになるんだよね。その時に強大な敵になったりするかも』

「それはそれで面白いとでも思ってるんじゃないですかね」

『あー……』


 あの方は効率も求めるが、同時に享楽的な所も多い。ノア様らしいと言えばそこまでだ。


「それより早く帰りましょう。お腹すきました」

『そうだね。……またナユタと食卓を囲むのか』

「いい加減慣れてください。もしくはクローンが完成するまで我慢しなさい」

『あとどれくらいで出来るのかなあ……』

「問題なく行動出来る年齢までの培養に、1年はかからないとは言っていました」


 そうなればスイとのこの特殊すぎる生活も終わりか。


「まあ、それまではよろしくお願いします」

『うん』


 わたしは早足で進み、仲間の待つ部屋の扉に手をかけた。

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スギノキがマジキチパーリナイになっちゃってますよ………
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