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第300話 異世界の天才たち

おかげさまで第300話到達しました!

読者の皆さんの応援あってこそです、これからもよろしくお願いします!

 んん?

 その名前、どこかで聞いたことがあるようなないような……?


「変わった名前だが、案の定聞いたことは無いな」

「ステアを唸らせるほどの天才なら、その名が世界に轟いていてもおかしくないはずですが」

「1000年前でも知られていない名前ね。名声欲が無かったのかしら」

「これってクロさんと同じ転生者のノートなんだよね?クロさんは知らないの?」

「………」

「クロ?」


 たしか、そう。理科の先生が興奮気味に話していたような。

 どうでもいいと思って話半分に聞いていたからこそ、記憶から欠けずに喉まで出かかっている。

 えーっと、たしかそう。あの時に……。


「思い出した!」

「うわっ!?」


 そうだ、確かにわたしはその名前を知っている。


「ニコラ・テスラ―――たしか、かつての世界で天才と呼ばれた発明家です。どんなことをした人かはよく覚えていませんが、電気に関係した発明を行った人だったはずです」

「つまり、あなたのかつての世界で名が知られた人間だったのね?」

「はい。間違いありません」


 かの電球の父エジソンが恐れた天才発明家……だったか。

 先生が話していた中で唯一、「テレポートを完成させていたかもしれない男」って言っていたのを思い出した。

 まさか、死後にこの世界に転生していたとは。

 偽物ということはおそらくないだろう。わたしが読めたあの日本語で書かれたノートにあった言葉がある。



『あのジジイのロボット作りは順調みたい。流石は地球でもワタシが生きていた時代まで天才と呼ばれていた男だ。しかしそれにしたって「自身の死後から100年分のあらゆる科学知識」という転生特典の曖昧な知識だけでロボットを作るとは恐れ入る。最近は様々な魔法を解析し、その性質を科学で再現することを目標にしているそうだ。これ、あいつが満足する頃にはやばい破壊兵器になっているんじゃないだろうか?』



 “ワタシが生きていた時代まで天才と呼ばれていた男”。

 “自身の死後から100年分のあらゆる科学知識”。

 “転生特典”。

 “魔法を科学で再現”。


 これだけのキーワードが揃っていてテスラがこの日記に書かれた「ジジイ」と別人と考えるのは嘘だ。


 それに、あのロボットの超強化装甲に彫られていた、アルファベットのイニシャル、N.T。

 あれは、二コラ(N)テスラ(T)のことだったのだ。


「クロと同じ世界の人間が名の知れた偉人であり、更には転生特典とやらを持ってこの世界に転生してきた……これは偶然?何か作為を感じなくもないけれど」

「偶然と思いたいですが。わたしのような凡人もこの世界に来ているわけですし」

「希望的観測は慢心と失敗の元よ。それに、彼が発明家ってのも妙な話じゃない。改造魔法を持って生まれたことと無関係とは思えない」

「……たしかに」

「転生については見送っていた問題だったけど、少しでも深堀りしておいた方がいい段階になった気がするわ。些細なことでもいいから考察を進めるべきよ」


 その場の全員が考え込んだ。

 ステアがいれば話が早いのだろうが、未だぐったりしていて万全とは程遠い。

 仕方ない、自分たちで考えるしかない。


「一つ気になる事があるとすれば―――時間でしょうか」

「時間?」

「はい。ニコラ・テスラが生きていた時代は正確には良く知りませんが、わたしが生きていた時代の100年前そこらだと思います。ですが、このノートが書かれたのは1000年以上前。時間が合いません」

「なるほどね。それについては多分、あなたが渡してくれた例のもう一人の転生者ヒトトセの日記に答えがあったわ」

「……ああ、なるほど」


 記憶を探って、答えを見つける。


『歴史上に現れた転生者たちの情報から、こちらの世界とあちらの世界は時間の進み方がまったく異なり、不規則に変化していくことは確認している』


 つまり、こちらの世界の1秒が向こうの1日になったり、逆にこちらの世界の1年が向こうの1か月にもなり得る、ということだ。

 そうか。それを踏まえると、たしかに時間の辻褄が合わないのも納得がいく。


「他には?」

「はい、お嬢様」

「じゃあオトハ」

「そのノート関連ですが、『この世界の歴史で十人以上、転生者の存在は確認されている』とありましたわよね?これ、どうやって確認したのでしょうか?」

「確かにそうだな。姫さんすら知らなかった転生者の詳細を、どうやってヒトトセは知ったんだ?」

「わたしがノア様に数年隠していたように、転生者はおそらくほぼ例外なく、自らが転生者であることを隠そうとします。何故なら狂人と思われかねないからです。ノア様のようなお人でない限り、信じてもらえるわけがありませんから」

「肯定、たしかにそう」

「互いに素性を隠している以上、転生者同士でコミュニケーションをとることは難しい、筈……」


 ―――待て。

 名前を思い出すのに必死で気づかなかったが、これはおかしい。


 何故テスラは、署名に()()()()()を書いた?

 この世界で付けられた名前があったはずなのに。

 この世界に生きているという現実を受け入れられなかったか、名前を唯一無二のアイデンティティだと思ったか。

 ……いや、まさか。もしかして。


「―――ノア様」

「なに?」


 この仮説が正しければ、もしかすると実証出来るかもしれない。

 わたしはノア様に問うた。


「この世界で、ノア様のように歴史から名前を抹消された、あるいは既にこの時代において忘れ去られた偉人の名を出来る限り言ってみてくれませんか」

「……?いいけど。えーっと、2500年前に世界政府を作り上げたリメイン・グルゼェラ。2300年前にその世界政府を破壊し、大魔導戦争のきっかけを作ったジィド―――」


 聞いたことがない名だった。しかし。


「2200年にその大魔導戦争を終結させたリアル、その数年後の魔導変革期に突如現れ、世界を半壊させた凶人ジャンヌ・ダルク……」

「待ってください!」

「え?」

「今、なんと?」

「ジャンヌ・ダルクの話?起こした凶行が恐ろしすぎて世界の歴史から抹消され、一部の石碑にしかその恐怖が伝わっていない名前だから知らないのも無理ないけど」

「違います、そうではありません」


 待て。

 待て待て待て待て。


「ジャンヌ・ダルクは―――わたしの世界の偉人です」

「……なんですって?」


 ニコラ・テスラだけではなかった。

 元中学生のわたしの記憶にすら存在している悲劇の乙女が―――この世界に転生していた。


「たしか、幼少の頃に“神の声を聴いた”とか。祖国の勝利のために女性でありながら奮闘し、しかし最後はその祖国に裏切られて魔女と揶揄され処刑された悲しき英雄。わたしのいた世界でも屈指の人気を誇った人です」

「……ジャンヌ・ダルクは四大属性使いではあるけど、その中でも異端中の異端。()()()()()《太陽魔法》を使えたらしいわ。その力で、当時の世界人口の10分の1を原型が残らないほどに燃やし尽くしたそうよ」

「……ジャンヌの処刑方法は、たしか火あぶりだったはずです」


 最後は火刑に処された乙女が、炎属性の覚醒の先である《太陽魔法》を先天的に使えた。

 ここまでくれば、もう偶然では処理しきれない。


「ちなみに、覚醒魔法を生まれつき宿していたという他の事象は」

「私の知る限りないわ。後にも先にもジャンヌただ1人」

「なるほど。つまり恐らくは―――その《太陽魔法》こそが、ジャンヌの“転生特典”だった可能性は高いですね」


 オルレアンの乙女と呼ばれ、散々持ち上げられて祖国のために戦い続けたにも関わらず、最後には神からも祖国からも見捨てられた英雄。

 絶望し、心は壊れただろう。その先で新たな生を与えられれば、激情と狂気のままに世界を滅ぼしかけてもおかしくはないかもしれない。

 気の毒だし心の奥底から同情するが、話によると2000年以上前に死んでいる。今更わたしがどうこう出来る相手ではない。

 それよりも、これではっきりした。


 ニコラ・テスラとジャンヌ・ダルク。有名な2人がどちらも天文学的確率を引いて偶然この世界に転生したとは思えない。確率があまりにも低すぎる。

 更に2人が、かつての世界の名を名乗っていたこと。これらの情報をまとめていけば、いくつか重大な真実が明らかになる。

 そして、その先の結論も。

 おそらくノア様はわたしと同じことを考え、じっとわたしを見つめている。

 でも、そんな風に見られなくても自分で理解した。


 この世界と転生者の関係において、おかしいのは―――わたしの方だ。

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