表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
301/465

第291話 情報共有

 およそ三ヶ月ぶりのノア様の御姿に、胸の高鳴りを感じる。

 暫く合わない間に、美しさに磨きがかかったような気がしてくる。


「どうしたの、人の顔をじっと見て。見惚れた?」

「まあ、広義で言うなら」

「じゃあ狭い意味ではどうなのよ」


 ジト目になられたノア様から目を逸らし、とりあえず椅子に座った。

 その時、今まで無視していた疲れがどっと押し寄せ、立つことが困難となる。


「それで、首尾は?」

「問題ありません。既にアルスシールは帝国の、ひいてはノア様の傀儡国です」

「素晴らしい働きね。流石はこの私の右腕だわ」

「勿体なきお言葉です。正直、明日はオフにしたいので今日中に互いの詳細を話し合いたいと思っているのですが」

「そうね。じゃあ―――」


「おっ、嬢っ、」


 わたしが感情を殺して仕事の話をしようとしたまさにその時、感情の化け物みたいな万感が込められた声が近づいてきた。

 声の主は羽が生えたかのように宙に浮き、物理法則を無視しているのかと錯覚するくらいの勢いと角度でノア様へと飛翔していった。


「様ああああああああ!!」


 涎と鼻水と涙を流したモンスター(※オトハ)がノア様に抱き着こうとするが。


「ぶべらっ!」


 ノア様はいとも簡単に躱し、オトハは元々ノア様が座っていた椅子に突き刺さった。

 すごい。ト○とジェ○ーみたいだ。


「お帰りオトハ。想像通り何も変わっていないようで嬉しさと悲しさが半々よ」

「ああっ、お嬢様の御声が!私の耳に直接ぅっ!あああああ幸せですわこの時を待ち望みましたわ是非その御姿をもっと私に……あれっ、取れませんわ。ちょっとクロさん、助けてくださいませ。なんか自分で引き抜くと木片で血まみれになりそうな気がしますの」

「すみません、ちょっと今ステアが片手に引っ付いてるので無理です。ステア、離れる気あります?」

「ない」

「だそうです」

「仲間のピンチとちょっとした自分の至福、どっちが大事ですの!?ちょっと誰かー!」


 その二択で一番後者を選択しそうな女がなにをほざくか。


「あっ、そうだオウラン!オウランどこですの、姉のピンチですわちょっと助け」

「リ、リーフ、久しぶりだね……その、元気だった、かな?」

「肯定。そっちは何か結婚だのなんだので大変だったようだけど」

「ああ、いや!そっちに関してはもう大丈夫!うん!結婚はしてない!」

「安堵。よかった」

「え!?そ、それってどういう……」

「?当然、君がいなくなると支援役がいなくなって不便」

「あ、そ、そっかぁ……うん、そうだよね……」

「ちょっとオウラン!ヘタレ甘酸っぱい学院生みたいな会話してないで助けなさいな!」

「知らん……僕は今ちょっと傷ついてるんだ、他をあたってくれ……」

「なんて弟ですの!お嬢様に暴言を吐いてまで助け舟を出してあげたというのにい!」

「は?何の話?」


 まあ、でもたしかにそうだ。

 オウランは知らないようだけど、あの点は素直に感心した。

 今回はノア様がいなくても仕事を頑張っていたし、助けてやるかと思い近づこうとすると。


「ほい」


 わたしより早く―――というか見ていたはずなのにいつ近づいたか判断できない速度で、オトハにくっついた椅子を砕いた男がいた。

 勿論オトハは無傷。


「ああ、どうもありがとうございますルシアス……あの、本人ですわよね?」

「そうだが」


 なにがあったあの男。

 今、本当に辛うじて目で追える速度で、親指と人差し指でつまんで椅子を折っていたんだが。しかも片手で。

 間違いなく以前よりも数倍強くなっている。


「………」

「……リーフ、『新しい獲物見つけた』みたいな目でみるのやめなさい」

「反抗、気のせい」

「で?何があったんです、あなた」

「その辺の説明も後でするだろ、姫さんかステアが」

「そうね。とりあえず、別れた後の情報について精査しなきゃならないわ。ほら一旦集まってあなたたち」


 ノア様の声に、側近全員が集まった。オトハはルシアスの異常発達に引いたことで若干熱が冷めたからか、ノア様を見ても両鼻から鼻血が出るだけで済んでいる。

 オウランがあらかじめ用意していたティッシュの詰め物をを十秒もしないうちに真っ赤に染め、ティッシュの先からぽたぽたと血が流れてはいるが、まだマシな方だ。


「さて。改めてクロ、スイ、リーフ、オトハ。長らくご苦労様」

「ええ、本当に……お嬢様にこれだけの長い期間お会いできないのはもう、生きた心地が全くしませんで!でも今はこうして目の前に……あ、ああ、あああ……!」

「今興奮するとあなた今出血で死ぬので我慢してもらえます?」

「比較、アルスシールにいる頃の有能な彼女はどこに」

「ま、オトハの変態についてはあとで対処するとして」

「あふんっ」

「ノア様、少しでも罵倒すると興奮させてしまうのでおやめください」

「……重病だとは思ってたけどここまでとはね。まあとりあえず、互いの経緯を共有しましょうか。ステア、お願い」

「ん」


 ずっとわたしにくっついたままのステアが頷くと、わたしの頭に情報が刷り込まれていく。

 わたしたちの情報もステアにコピーされ、資料になってノア様たちの脳に届いているはず。

 なるほど、スギノキではそんなことが。

 そんな……ことが……。


「な、なんで皆僕を見るんだよ!」


 わたしとスイ、オトハ、リーフは一斉にオウランの方を向いた。

 特にオトハは何かが冷めたようで、鼻血が止まって鼻から詰め物を引き抜いていた。


「いや、なんというか……悪い意味で主人公みたいだな、と……」

「悪い意味って何!?僕そんなに悪いことした!?」

「いや、悪いことを一切しないで思わせぶりな行動してるから主人公みたいだって言ってるんですよ」


 こいつ、思い人がいるはずなのに他の女とぶっといフラグ立てやがった。

 しかもお相手は国のトップで?

 巫女服、重力使い、のじゃっ娘、ぺったんこ、更には好き好き公言キャラ?

 そんな属性増し増しな美少女とフラグを?


「お姉ちゃん、あなたをこんな節操無しに育てた覚えはありませんわよ」

「僕だってお前に育てられた覚えなんかない!てか節操無しってなんだ、僕はただ……!」


 オトハはさっきまでの発火するくらい熱っぽい目から一転、空虚な目でオウランを見ていた。


 結婚云々の話がどういうことなのかと気になってはいたが、そういうことだったのか。

 たしかに顔はいいしマトモだし優しいし、家事は出来るし頭も回る。

 ……あれ?まったく考えたことなかったけど、この男たしかに意外と優良物件だ。

 まあ変態が義姉(あね)になるという点を踏まえると人によっては事故物件だが。

 そんなこと考え、スイもわたしと同じようなことを頭の中で言っていたのだが、ここでそれに異を唱える人がいた。


「困惑。なぜそこまで非難する?」


 恐らく、ある意味オウランが非難してほしかったであろう女だった。


「感心、なかなか男気ある決断。しっかりとした軸にもなったようで大変良い」

「えっ、あ……はい」


 オウランはそう言いつつ、今現在脈無しであることを一語ごとに感じてるのかみるみる沈んでいく。

 そしてリーフはトドメの一撃を放った。


「祝賀、応援する。頑張れ」

「……………」


 ……惨いな。

作中の魔法解説コーナー③


【精神魔法】

髪色:水色

使用者:ステア、議長

特性:絶対記憶


記憶、心理、感覚など、精神に関わる生物の情報を改竄できる魔法。それだけの性能を持ちながら、一部の精神魔法は一度かけてしまえば解除するまで魔力を消耗せずに発動し続けられるなどの燃費の良さを持つなど極めて強力。希少魔法のなかでも上位の強さにランク付けされており、そのただでさえ恐ろしい力を膨大な魔力と明晰な頭脳を併せ持つステアが使うことでほぼ無敵の魔法と化している。本来の精神魔術師は『視界に入っている生物の精神を操る』というのが基本的な能力だったが、ステアは魔力と処理能力をフル活用し、存在を認識していない人間にも下位の精神魔法なら発動できるようになっている。

欠点は、直接的な攻撃力を持たず、身体強化の術もほぼないために近距離での戦いにすこぶる弱いことと、魔法抵抗力に加えて強靭な意思の力があれば阻めてしまうこと。

認識さえしてしまえばほぼ勝ち確のため、有利な状況が前提だが、死霊魔法のように精神を操れない対象の場合は相性が悪い。……が、ステアは天才なので頑張って対処法を編み出した。

だが実はそれだけでなく、魔法を発動されるよりも早く精神魔術師は潰すというのが千年より前の時代の定石だったため、光魔法や空間魔法、伸縮魔法などの一瞬で距離を詰められるタイプの魔術師にも弱い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  可哀想ではあるがこれもある意味因果応報?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ