第252話 要塞侵攻
ちょっとトラブルあって、二回分投稿を見送りました、申し訳ない!
しばらく、なんとなくの沈黙が流れた。
長年連れ添った仲間の意外な一面を見て、自分も若干驚いているんだろうか。
数秒の沈黙を破ったのはリーフだ。
「謝罪。ノアの為なら弟の結婚くらいさせる子だと思ってた」
「いつもの私を見ていれば無理もないことですし、気にしなくていいですわ。……ま、叶わぬ恋に没頭できるのは今くらいの時期だけですし、暫くは好きにさせてあげたいんですわよ」
凄い大人な雰囲気を見せているオトハに感心しかけたが、今さらっと叶わぬ恋って言った。
まあ、わたしもその、正直。
「疑問、そういえばオウランの恋の相手とは?」
「「………」」
「?何故目を逸らす」
「あー、えーっと、その。ほ、本人に聞いてください、わたしたちから話すようなことでもないでしょう」
「ふむ。了解」
我ながらキラーパスだ、これならオウランも「君だ!」と言いやすいだろう。
問題はあの男にそんな度胸があるかどうかだが、そこまではわたしは知ったこっちゃない。
どうか頑張って勇気をもって玉さ……成就して欲しい。
「そ、それよりリーフ。明日からわたしたちは要塞に行かなくてはなりません。万全の用意をしてくださいね」
「無問、どんな強者もウチがぶっ倒す」
「まあそれは、はい。期待してます」
「じゃあリーフ、自分の全権委任書を書いて私にくださいな。それがないと私が革命軍を動かしにくいですわ」
「了承。後で持っていく」
「二百年続いた内戦に終止符を打つんです、色々と邪魔も多いでしょう。各々警戒してください。特にオトハ、一人になりますし暗殺とか最大限に気を付けてくださいね。革命軍にはわたしは要塞の偵察に行ったまま消息不明、リーフは政府軍の討伐に行ったとでも言っておいてください」
「分かってますわ。あ、襲われたら殺して構いませんわよね?」
「それはいいですが、下手に隠したりせず正直に死体を幹部連中の所に持って行ってくださいね。恐怖の刷り込みに利用できます」
「それで逆上して襲い掛かってきたりされたら?」
「その時は仕方がありません、感情論丸出しで動く利用する価値もない馬鹿だったということです。好きにしてどうぞ」
わたしに襲い掛かってきた馬鹿男辺りはオトハに襲い掛かりそうだ。
しかしその時はその時、今のように協力体制をとるのではなく、恐怖で縛ればいい。
適当なビビりを脅してこの国を一時掌握させ、何か抵抗の姿勢を見せてくる前にステアをこっちに連れてくれば解決だ。
非効率的だしわたしたちだけでどうにもならなかったという話になってしまうから使いたくない手だが、革命軍が想像を超えて愚かだったらこういう手を取るのもやむを得ないだろう。
手は尽くした。サブプランもある。明日、一気に終わらせよう。
オトハに一時の別れを告げ、わたしとリーフは風を纏って超スピードでマッドナグ要塞に向かい、以前よりも早く辿り着いていた。
「一応、作戦は?」
「特には。ロボットは極力丁寧に無力化、ルートは渡した侵入経路に沿って最短距離で、あとは人間がいたらあの異世界技術について知っていることを吐かせてから皆殺し、それくらいですね」
「喜色、そういうの得意」
「知ってます。では始めますよ、《死》」
入り口にたむろしていた数人の門番を殺し、昨日と同じく空間を歪めて要塞内に侵入成功。
スイに代わり、未来視で警戒しつつ既に攻略済みのルートを辿っていった。
途中、当然の如くロボットがわらわらと出てきたが。
「《風速実弾》」
リーフが拾った小さな石を超高速で打ち出す技で、駆動系や中枢(だと思しき部分)を正確に撃ち抜くことで無力化。
魔法再現科学を使う暇すらなく、ロボットは倒れていった。
「次の階層は道のりがシンプルなので一気に駆け抜けて、そこの箇所のロボットは破壊せずにそのまま保全しましょう」
「了承」
リーフはわたしの襟を掴んで一気に高速で動き、三階から四階まで抜けていく。予想通り三階のロボットは追ってこなかった。
やはり階層で動ける範囲が固定されているらしい。
「次そっちです。その次がラストの階で、まだわたしも入ってません。気を付けてください」
リーフはこくりと頷いて、わたしが警戒して入らなかった最上階の扉を蹴破った。
中はこれまでのコンクリートで覆われているような見た目とは打って変わって、青いカーペットと白い壁、更に太陽の光も入ってきている。
人の気配は―――まあまあある。しかし完全に油断しきっているのか、各部屋から出てくる気配がない。
二百年攻略されてこなかった要塞じゃ無理もないが、流石にボケすぎだ。
「一人で部屋にいる馬鹿が何人かいますね。……これならあのロボットのことを聞き出せそうです。リーフ、部屋に入った瞬間に防音を使ってください」
リーフがOKマークをつくったのを確認して、手近の部屋に入った。
鍵すらかかっておらず、扉は音もなく簡単に開いた。
中にいた小太りの赤髪は気づいていない。リーフが頷いたのを確認し、わたしは懐からナイフを取り出し。
「動かないでください」
「なっ……!?」
「許可なく喋れば殺します。振り向いても殺します。魔法を放とうとしても同様です。ただわたしの質問に答えてください。分かったら二度首を縦に振りなさい」
―――コクコク。
「質問一。要塞を守っているあのロボ……機械はなんですか?」
「く、詳しくは知らない。ただ、我々の理解が到底及ばないもので、一応は我々を守ってくれる便利なものとしか」
「質問二。念のため聞きますが、あれはアルスシールが作ったものではないですよね?」
「ああ、違う……二百年前に内戦が勃発した時から既にあったという記録があるらしいが……あれ自体はそれよりはるか前の時代に作られていて、当時の民がそれを掘り起こしたとかなんとか……」
「質問三。この要塞にいる人間のことを詳細に教えなさい」
「に、に、人数は、二百人くらいだ……ほとんど、政府の重鎮と、その家族……ただ、ふ、二人だけ、最後の防衛のための、護衛がいる……!」
「そいつらの強さは」
「詳しくは、知らない……だって、出番なんて、無かったから……」
「質問四。これが最後です。この要塞内にあの機械について記載された書物などはありませんか?」
「ある……この部屋を出て左手、二つ目の角を右に曲がったところにある、厳重に固められた黒い扉の部屋……護衛の一人も、そこにいる……」
「なるほど。有益な情報をどうもありがとうございました、《死》」
ナイフを離した瞬間の心からの安どの表情のまま男は死んだ。
「リーフ、わたしはその小部屋を調べてみます。そこにいる護衛とやらも任せてください。あなたはそれ以外部屋を回って片っ端から殺してください。もう一人の護衛とやらにも一応注意を。ロボットについて詳しい人間がいないかの確認もお願いします」
「承知。頑張って」
「あなたも。それとスイ、一応代わってください」
『はいはい』
「はいは一回です」
部屋を出てリーフは右に、わたしは左に曲がった。
間もなくして後ろから断末魔が聞こえてきた。
「えっと、二つ目の角を……」
スイが男から聞いた道順を辿ると、そこには話通り黒い扉と、護衛と思しき巨漢の傷だらけの緑髪の男がいた。
まさに歴戦の猛者という風貌だが。
「…………」
喋らない。
スイを見た瞬間、ゆっくりと立ち上がり、剣を構えた。
そして剣を振りかぶり。
「っ!」
スイが避けるのとほぼ同時に、振り下ろされた剣から風の刃が発生、天井も床も切り裂き、壁を破壊した。
「結構な威力……風魔術師としては上位だね。だけど」
うん。
いつもリーフの規格外さを見ているわたしたちにとっては、正直物足りなさを感じる一撃だった。
わたしはスイから体を戻し。
「《死》」
指を向けて唱えると、男はほんの一瞬抵抗したそぶりを見せたが、すぐに眼から光を失って崩れ落ちた。




