表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
羽無し朱雀は青龍王に愛される  作者: 空飛ぶひよこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/72

白虎の過去

 羽の生えた虎人は、忌み嫌われ疎まれる。

 四凶の一つである、窮奇きゅうきを彷彿させるから。

 悪と、戦いを好み、倒した亜人を食らうことでその力を吸収する、翼の生えた虎。


「……白虎。貴方は、鳥人との混血なのですか」


 純潔を尊ぶ三神の中でも特に、鳥人と虎人の掛け合わせはタブー視されている。

 鳥人と虎人の特質が合わさって生まれた混血の子どもは、【窮奇きゅうきの化身】と呼ばれ、大抵は生まれてすぐに殺されてしまう。

 もしや、彼も私と同じように、許されない恋の末に駆け落ちした異種族の夫婦の子どもなのだろうか。

 しかし、白虎は首を横に振った。


「いいや、俺の親は、双方純血の虎人だ。親父は今でも母親の不貞を疑っているようだが、虎人の村に鳥人の男が訪れることなぞまず無いから、おそらく間違いねぇだろう。虎人の中でも由緒正しい、名家と呼ばれてるような家だ」


「じゃあ……どうして」


「純血純血言っているが、初代以前まで遡れば大抵の亜人は混血だ。亜人を支配していた人族が面白がって、無理やり様々な種族と交配させたからな。だから、どれ程婚姻に気をつけてていても、時折俺のような先祖返りが現れる。現れちゃ、すぐ殺されて、大抵は存在自体を闇に葬られるけどな」


 白虎は自嘲の笑みを浮かべながら、白い毛に覆われた自らの腕を見下ろした。


「だが俺は、一族待望の『白』を宿して生まれて来た。初代以降一度も現れなかった、この色を。殺すべきか、生かすべきか。一族の中でも意見が割れて……最終的に翼を切り落として、様子見することになった」


 鳥人にとっての「赤」は、虎人にとっての「白」程は、特別な意味を持っていない。私と同じように、赤を宿す鳥人は多いわけではないが、それでもどの代でも一定の割合で生まれてきている。歴代の【朱雀】には、赤を宿してないものが選ばれることもあった為、鳥人にとっては虎人程、色の意味は重視されていない。

 だが、虎人は違う。歴代以降ずっと、「白」は初代白虎だけの色だった。白虎の直属の子孫すら、「白」を宿すものはいなかった。彼らは「白」を神聖化し、それを宿して生まれたものは必ず当代の白虎に選ばれ、初代同様の偉業を成すと信じてきた。

 だからこそ、翼をもって生まれてきた白虎は生き延びたのだ。


「俺はガキの頃から、誰より力が強かった。年を重ねていけばいく程、ますます強くなった。14にもなれば、村一番の勇志と呼ばれた虎人の戦士すら、俺には歯がたたなくなった。村の奴らは、俺を恐れ……訝しんだ。『この力の由来は、【白虎】だからか。それとも【窮奇きゅうきの化身】だからか、と』


 生まれてすぐに切り落とした翼は、放っておけば一定の期間でまた生えてきた。

 翼を切り取る痛みに呻く度、白虎は自らの宿業を感じずにいられなかったと言う。

 村の中の白虎は、ずっと孤独だった。

 肉親もまた、白虎を恐れ、必要以上に近づかなかった。


『【窮奇きゅうきの化身】が【白虎】に選ばれるくらいなら、次代の【白虎】なぞいない方が良いのではないか』


『いや、次代の王の選定前に死ねば、きっと別のものが【白虎】として生まれてくる。幸い、当代の【白虎】はまだ健在。今のうちに殺すべきだ』


 そんな風に陰で噂されているのも、知っていた。


「そして、16の時………村の『有志』が結託して俺を殺そうと襲いかかってきた」


 当然、白虎は返り討ちにした。武装していた集団に対し、白虎はまともな武器も持たず単身で闘うことになったが、驚く程簡単に決着はついた。

 そして、白虎は襲い掛かって来た男達の荷と武器を奪い、村を飛び出した。


「そっからは、力に任せたろくでもねぇ生き方をして来た。倫理さえ無視すれば、生きてくのは簡単だ。嬢ちゃんには言えねぇようなことも、必要だと思えば平気でやった」


 強さが有名になれば、それを利用しようと、悪人は自ら寄ってきた。

 罪を犯し、似たもの同士の悪人と連む度、自分が本当に【窮奇きゅうき】になったように感じた。

 連れの悪人が見ている場所で過度の悪事を働けば、戒め遠ざけもしたが、知らぬ場所でしている分は敢えて暴こうとは思わなかったと白虎は言った。


 その言葉に、私は思わず唇を噛んだ。

 倫理に外れた行為を、肯定はできない。だけど、当時の白虎の気持ちが、私には分かる気がした。

 脳裏に、鳥人の村で過ごした日々が蘇る。


 ………ただ、どうしようもなく、孤独だったのだろう。

 自分をただ利用しようとしている悪人にすら、傍にいて欲しいと望んでしまう程に。


「王と出会ったのは、8年前………俺が23の頃だ」


「………23?」


「………どうせ白髪のせいもあって、老け顔だよ。放っとけ」


 思わず聞き返してしまった。……6つは年上に見ていたとは言えない。

 動揺を咳払いで誤魔化し、話の続きを促した。


「俺の『自称手下』供をあっという間に半殺しにした先代白虎のジジイを引き連れて、まだ10歳の青龍王は俺のもとにやって来た。……そして、俺に、『私の【白虎】になって欲しい』と頭を下げた。【窮奇きゅうきの化身】で……ろくでなしの悪党だった俺に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ