60、襲来
目の前にいるドラゴン娘、サラちゃんの過去に関する回想シーン(簡易的なもの)が終わり、その場には少しばかりの静寂が訪れていた。
まぁ、朝に見た夢の内容がわかっただけでも良いのだが……彼女の口から出た言葉の中には、この世界のインフレの終焉とも言える存在がおり、そいつは【セナ】という名で、私の半身を語っていたのだ。そんな奴が今から襲ってくると考えると寒気がしてきた。
私の周りだけでかなりの戦力インフレが起こっているためか、どんな敵が来てもだいたい勝てるんじゃないかって思ってる節があったが……今回の敵はそう簡単に勝てるわけでは無さそうだ。
まぁこれまでに、戦って真正面から勝ったと言える敵の方が少ないのだが。大体が勝敗が着く前に和解して終わるし……あれ、もしかしてこれから総力戦始まったりする?
「ねぇ、その【セナ】って人物は今どこにいるの? もうこの世界に到着してるの?」
「ここにいるわよ♡」
その声がしたのは、完全に私自身の予想外の場所……私の背後だった。
「……エッチョットマッテソコニイルノハキイテナ」
セリフを言い終わる前に、ローブ越しの私の首元に勢いよく巻き付くごわっとしたもの……これは腕が?
「ふふっ。案外隙が多いわね貴方。」
耳元でそう囁かれるや否や、巻き付く腕に力が入り私の首が締め付けられる。物理的に。
ってかさっさと逃げないと!このままだと私窒息……あれ、不死の加護持ってるから死なないのか。じゃあそんな焦ることは無いか
「貴方に【不老不死】があることは存じ上げてるから、殺すつもりはないわよ。その代わり……簡単に抵抗できないようにこうやって制圧してるのよ【閉ザサレシ世界ノ冥神】【崇高ナル悪魔ノ災厄】」
初対面のはずなのに、なーんかものすごく聞いたことのある名前の詠唱を私の耳元に囁く謎の女性。うっ耳がくすぐった……あれ、途端に首の痛みと何かが触れてる感覚が無くなったんだけど?
締め付けが外れたのかと思いつつ、体を動かして逃げ……って動けない?
「……私に何をしたの?」
「貴方の身体の喋ること以外の行動を封じつつ、聴覚は残してそれ以外の感覚を一定時間遮断させたのよ。」
「??????」
頭の中が宇宙猫になった。うーん確かに名前通りの制圧効果な気がするんだけどさ、もうちょっとこう手加減して欲しいって言うか……
「手加減なんかしたら貴方を私の物にできなくなっちゃうじゃないの。私の半身なのにそんなことも分からないのかしら?」
なんかものすごい単語が聞こえたんだけど……聞き間違いなのかな?
私の疑問符が通じ……いや、私の思考を呼んだと思われる答えが帰ってきた
「私、御坂瀬奈っていうの。貴方の元になった存在で、これから貴方とひとつになる者よ」
この人が噂のヤベー人ですか……てかひとつになるって何するの……?憑依?乗っ取り?洗脳?ってどれも変わらないかこれ。
と、私の危険を察したのか、私の体から紫色の輪っかが出現し……
「マスターはボクが守るよっ!!」




