44、月の因子を引き継ぐ
久しぶり
「ロリっていいなぁ……」
目の前にいる私の幼馴染であるアルト君は、こっちを見ながら明らかにアウトな発言を……いや、私も似たような癖を持ってるから人のこと言えないわ。
「それで、アルト君はどうしてこんなところにいるの? 学校とか行かなくてもいいの?」
「うーん、行かなくてもいいというよりかは物理的に行けなくなってると言った方がいいかもしれないな」
「物理的に……?」
「日本に《更新》が来た時、俺は錬成の力に目覚めたんだ。で、暇つぶしに別世界の扉を作ったらこの国に飛ばされて……迷子だった所を見いだされて、そこの全裸ロリに拾われたってわけ」
「元の日本に帰ろうとはしなかったの?」
「帰ろうと思ったけど作ってた扉が一方的にしか行けないものだったから……諦めた」
いや諦めたんかーい。 というか何? この国?「月」で一番偉い存在だと思われるるなたんを「そこの全裸ロリ」って呼んでるんだけどこの人……多分アレだ、偉い人にも敬語を使わずに自分のキャラを貫き通すタイプの人間だ……
上目遣い気味にアルト君を見つめると、若干その表情が緩んだ。そしてその頬が赤らんだ。照れたのだ。
「お前……俺と一緒にこの国で暮らさないか?」
からの唐突な告白だった……え? 私と一緒に暮らしたいですって!? それってつまるところの同棲ってことなの!? いや、でも私たちまだ交際してないから同棲とまでは行かない同居ということになるのか……!?
「え、一緒に暮らすって……!?!?」
情報の重さに脳の処理がバグっており、もう何が何だかさっぱりわからない。てか年齢的に同棲とかは色々アウトじゃね……あ、でも私幼女何人かと一緒に暮らしてるからそういうこと言えないわ
「……お前何考えてんの?」
「……え、もしかして私の心の中を読んだの?」
「それ以外にあると思うか?」
ないわー。許可を取らずに他人の思考を読むとかないわー。私だからまだいいんだけど……いいんだけど……いや、いいのか?
「「「「知らんわ……」」」」
るなたん、美杉さん、そーみん君、アルト君の四人の声が綺麗にハモる。 なんで私の物語の登場人物はみんな私の心の中を読んでくるの……? 私の心の中ってそんなに読みやすいものなの? もしそうだったら私心理戦に滅茶苦茶弱いんですけど。もしかして今までじゃんけんに勝てずにカードゲーとかで後攻デッキを使ってたのってこれが原因だった……!?
「で、アルト君はなんで私と一緒に暮らしたいって思ってるの……?」
「この世界には話が通じる人がほとんど居ないし。お前がいたら、ちょっとは気が楽になるからな」
私は彼の全身をまじまじと見つめる。
「ああ、お前もこの衣装が気になるのか……こいつはそこの全裸ロリが勝手に着させて来たやつなんだ。」
どこから見てもゴリゴリの厨二病な見た目をしており、この世界だとマシだろうけど、昔の日本だとめちゃくちゃ変な目で見られただろうから、普通に帰りたくないのもまぁ分からなくもないんだけどさぁ……
「ま、俺があっちの世界に戻る前に陽菜はやらないといけないことがあるんだよな。」
「やらなければならないこと……?」
その問いに答えたのはるなたんだ。なんか目をキラキラさせてるんるんなご様子である。
「あのねあのねー!陽菜ちゃんにはねー!今後のために月本体から力を授かる【因子継承】をやってもらうわよー!」
因子継承……それって某美少女に擬人化した競走馬を育成したりするアプリゲームでお馴染みの要素のアレかな?脚質適性や距離適性がつくのかな? まぁ宝塚記念や天皇賞春や有馬記念を走らない(いや、ステータス的には走れるかもしれない)から距離適性はそこまで要らないんですけど
「陽菜ちゃんに与える力は……【重力操作】【無制限転移】【夜の支配者】の三つよー! これらのスキルは《三種の神技》と呼ばれていて、このスキルたちを一緒に持てるのはそれはもうヤバい奴の証なのよー!」
うぉぉ、適正継承じゃなくてスキル継承だったか……なんやこの前半2個の名前でわかる圧倒的なぶっ壊れ感は。
1個目のスキルである【重力操作】……重力を自由に操作出来るということは、無重力にして浮くことが出来るし、高い重力にして相手の身動きを封じたりできるよね。更にはジャンプしても落ちないから、スマ○ラみたいに空中を踏んで多段ジャンプをして疑似的に空中移動ができたりするよねぇ……
私の脳内思考は加速する。その暴走列車は止まることを知らないようだ。
2個目のスキルである【無制限転移】これ名前から想像するに地球から月、月から異世界エルタニア……なんて別々の世界を自由に移動したり、世界を超えなくても好きな街やフィールドやダンジョンなどに飛んでいける……と思われる。これあったら元居た世界に帰れるような気がするんですけど……
ここまで前者2つがぶっ壊れだと3つ目のスキルの性能がめちゃくちゃ気になるんですが……
「にゃー♪【夜の支配者】っていうのは空の状態が夜の時にパーティーメンバーに全てのデバフ及びダメージによるHP減少を無効化するバフを与えるスキルなのにゃー!」
私が聞くより早く答えたのは、私の足元で丸まっている黒猫だった。え?この猫ちゃん喋ってるんですが……? いや、今のこの世界はロリ魔獣が喋ったりクワが擬人化して喋ったりするから猫だって普通に喋るのか……
何はともあれ何だこの猫、毛がめっちゃふさふさしてそうなんですが。多分さわり心地めちゃくちゃ良いのだろうなぁ……後でモフらせてもらおうっと
「外見に惑わされるなよ? その黒猫は変身能力を持っていて、特殊能力を挟まない物理での戦闘能力は四皇の中でも最強格なんだぜ」
アルト君はしれっとそんなことを言う。 あっ、この子怒らせると大変な事になるタイプだ。
要するに使い魔を召喚するスキルと組み合わせれば無敵の軍隊が作れる……あれ、使い魔召喚系の魔法なら使えるからこれ割と優秀なスキルでは……?
「あ、1個言い忘れたのにゃけど【夜の支配者】の適応中はあにゃたに両腕が生えて物理攻撃ができるようになるのにゃー!」
「ほーらめちゃくちゃ大事なことを隠してたじゃん……ってことは新しく両腕から先を作らなければいけないってことね……」
というわけで因子継承を行った後は……両腕をつくります
「さ、あそこにある女神像に手をかざしなさい。秒速で因子継承出来るわょー」
超絶雑に招かれた……某リバティーの女神像、その足元にある、いかにも手を置いてくださいといいたげな石板に私は手をかざす。5秒ほどで視界に「称号:月の使徒 を獲得しました」という表示が
で、これで私のチート度がまた上昇したと……
ポイントガンガン入れてください……




