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choice01  作者: 陽芹 孝介
第七章 分解……分離……解放
24/27

葵はこの島の脱出方法の説明を始めた。

「僕は今まで大きな勘違いをしていました。それは……『AMSの解析』=『島からの脱出』と思っていたのです」

有紀が言った。

「それが勘違いと?」

「ええ……ですから、僕は『AMS』のパスワードは各部屋の暗号を解析する事によって得られると……思ってました。しかし、それは大きな間違いでした」

有紀が言った。

「そういえば……アマツカは『AMS』のパスワードにかんして、『ノーヒント』と言ってたな…」

葵は言った。

「『AMS』は順平君に与えた『力』の事と言えるでしょう……つまり脱出方法とは無関係です」

有紀が言った。

「何故気づいた?」

「美夢がさりげなく言った『裏サイト』というフレーズに、閃きました……順平君は裏サイトを使い、拳銃を入手したのではないかと…」

九条が言った。

「で……ビンゴだったと……」

「ええ……『AMS』の中身はとんでもなかったです。拳銃や刃物等の凶器……そして、世界の死刑囚リスト…」

この説明は美夢が葵から聞いたのと重複していたが、美夢以外の皆は驚いていた。

有紀が言った。

「死刑囚まで……ますます謎なやつだな……アマツカは何故そんなリストを持ってるんだ?」

葵が言った。

「それは僕にもわかりかねますが……脱出に関係ないのは確かです」

九条が言った。

「では……脱出方法は?」

葵が言った。

「脱出と『AMS』を引き離して考えた時……真っ先に思い浮かんだのが……ある数字です」

容子が言った。

「数字?」

「ええ……この島には共通する数字が存在します」

有紀が言った。

「そうか……『12』共通する数字は『12』だ……」

葵は口角を上げて言った。

「そうです……ここに来た人数、部屋の数、方角の示しかた……それぞれ共通するのは数字の『12』です…」

葵は皆に問た。

「では、『12』で連想出来るものはなんでしょう?」

美夢が言った。

「暦と、星座に……干支、色々あるけど、あとは…時間かなぁ…」

有紀が言った。

「たぶん……『時間』ではないのか?」

葵が言った。

「ご名答……さすがは有紀さん……僕もそう思います。おそらく時間を示しています。いや……時間というより『時計』ですかね」

容子が言った。

「そっか……この島の中心って…」

葵が言った。

「そうです……時計台です。そして、ドアの記号と数字は……その時刻を示す暗号でしょう」

葵は暗号をまとめたメモを皆に見せた。

メモにはこのように示されている。

01=↑6-6

02=→6-6

03=↑2-6

04=→2-11

05=↑3-7

06=→2-9

07=↑3-5

08=→4-11

09=↑2-6

10=→2-11

11=↑0-0

12=→0-0

有紀が言った。

「これは私も『AMS』のパスワードと考えたが……どう考えても7桁にならなかった」

葵が言った。

「ええ……僕もまんまと引っ掛かりましたよ……しかし、引き離して考えると、これほどシンプルな物はないです」

葵はノートと赤と黒のペンを取り出した。

「これに12×12のマス目を書きます」

そう言うと葵は黒のペンで正方形のマス目をノートに書いた。

「共通する数字が『12』なので、12×12で、おそらく間違いないでしょう……」

皆の視線は葵のノートに、くぎ付けだ。

葵は説明を続けた。

「そこでこの二色のペンの出番です……その前にまずは……各数字を二種類に分けます」

そう言うと葵はノートにそれを書き始めた。

↑の記号と→記号の付いている数字を分けた。↑が6-6 2-6 3-7 3-5 2-6 0-0……→が6-6 2-11 2-9 4-11 2-11 0-0と、いった感じで、それぞれノートに書き分けた。

「そして↑を黒のペンで、→を赤のペンで…数字の示す箇所をチェックしていきます。まずは↑の黒から印してみましょう…」

葵は黒のペンを持って印していく。

「矢印は上を指しているので、この場合は縦の6列目、横の6列目……つまり中心部ですね…」

そう言いながら葵は順番に印を付けていった。

皆は静かにその様子を見ている。

黒の印をつけ終わり、次は赤の印を付け始める。

「今度は横の矢印なので、さっきと逆です手紙だった…横の列の6と、縦の列の6です…また中心部ですが…」

今度は赤のペンを持って印を付け始め、黒の印と同様に印を付けていく。

そして印を付け終わると、葵は満足げに言った。

「できました……0-0はなにもなし……つまり『終了』と言う意味でしょう」

有紀が言った。

「これは……まさか…」

有紀の反応を確認し葵は言った。

「では、仕上げをしましょう……この印した点を部屋番の順に線で繋いでいきます」

葵は黒と赤の印をそれぞれ繋いだ。

すると黒の矢印と赤の矢印が、ノートに浮かび上がった。

九条が言った。

「これって…」

葵が満足げに言った。

「そうです……時計の『短針』と『長針』です…長さから考えて、黒が短針、赤が長針です…」

葵が言うようにノートには針時計が出来上がった。

九条が言った。

「これは?……9時5分か?」

葵が言った。

「そのようです……9時5分ですね。歩さん、何かこころ……」

葵は歩の方を見た……すると歩は青ざめた表情になっている。

たまらず有紀の方を見たが、有紀は渋い表情をしている。

歩はボソッと呟いた。

「9月5日……9時5分……そんな…」

葵が言った。

「心当たりが…あるんですね…」

歩が言った。

「あぁ……忘れたくても…いや、忘れてはいけないんだ……」

「9月5日の9時5分…あの日、あの時をきっかけに…俺は……まさかアマツカがそこにいたなんて……」

葵は『9月5日』に反応して言った。

「まさか…2年前の『9.5高層マンション爆破事件』…」

歩は言った。

「あぁ…その時、俺はあの場所にいた…災害医師として…」

九条が言った。

「僕も知っている…いや、世界中の人々が知っている事件だ…史上最悪の事件だ…」

葵が言った。

「アメリカの富裕層や政府関係者が多く暮らす高層マンション…」

九条が言った。

「それを狙った……卑劣なテロ…」

歩が言った。

「あれは……地獄だった。あそこにアマツカがいたのか?…まさか…」

無理やりこじ開けられる、歩の記憶…。

歩とアマツカの関係とは…。

皆は青ざめた歩を、ただ見る事しか…できなかった……。

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