01 経緯
こちらの文章は、拙作『異世界料理道』のあとがきのようなものとなります。
当作に対する作者としての思いや、作品の舞台裏に関してなど、つらつらと書かせていただこうかと思います。
『異世界料理道』という長大な物語をお読みくださった皆様に多少なりともお楽しみいただけたら幸いでございます。
2014年08月19日に公開を始めた当作は、2025年12月7日に完結いたしました。
11年以上にわたる執筆で、総文字数はおよそ1680万字となります。
今後、自分がこれほど長大な物語を手掛ける機会はそうそうないでしょう。
また、自分がここまで意欲を失うことなく書き続けることができたのは、ひとえにご愛顧くださった皆様のおかげでございます。
原則として、自分は自分の好きなように好きなだけ書くという心持ちで執筆に励んでおりますが、やはりご愛顧くださる皆様がいなければ、これほどのモチベーションは維持できなかったかと思われます。
これだけの歳月、これだけの文字数におつきあいくださったすべての皆様に、あらためて感謝の言葉をお伝えさせていただきたく思います。
そもそも自分が当作を手掛けたのは、本格的にウェブ小説というジャンルに挑戦してみようと思いたったためとなります。
それまでの自分はライトノベルの新人賞に応募を繰り返しておりましたが、いずれも日の目を見ることはありませんでした。
それで一時は自分が何のために執筆しているのかという意義を見失い、創作活動から離れている時期もありました。
そしてその後は公募のためではなく、ただ書きたいという欲求に従って、落選した作品の続きを執筆したりもしておりました。
そこで巡りあったのが、こちらの『小説家になろう』となります。
誰に見せるあてもなく執筆を続けていた自分にとって、小説投稿サイトというのはうってつけの存在でございました。
それで作品を公開しましたが、反応は芳しくありません。
2014年にはすでに異世界もののブームが巻き起こっておりましたため、ジャンル違いの作品には目を向けられることもなかったようです。
そこで自分も異世界ものにチャレンジしてみようと思いいたりました。
実のところ、自分はウェブ小説を拝読した経験もなかったため、当時の流行であった異世界ものにも漠然としたイメージしかなかったのですが。そもそも異世界ものというのは古き時代から連綿と続くジャンルでありますので、自分にとってもまったくの畑違いではなかろうというぐらいの心持ちでありました。
ただし、なかなか構想は固まりませんでした。
当時の『小説家になろう』のランキングを拝見したところ、異世界ものの中でも料理ものというものが台頭していた時期でありましたため、自分もそれにならおうと考えてみたものの、どうにも最終的なイメージがつかめなかったのです。
そんなある日、自分は夢を見ました。
自分は夢を見てもなかなか記憶に残らない体質であるのですが、その日の夢はそれなり以上のイメージを自分の頭に残してくれました。
それは、森の中でサバイバル生活を送る夢でした。
それが、作品の題材を探し求めていた自分のイメージと合致したのです。
当時のランキングを再確認したところ、人気を博しているのは料理店にお客を迎える作品が多いように見受けられました。
それならネタかぶりになることはないと安心して、当作の設定を固めていった次第です。
その後は、思いのままに書き進めることができました。
なんの制限もなく好きなだけ文字を連ねることのできる環境に、どっぷり埋没することができました。
さらには書籍化の打診までいただき、いっそう熱心に取り組むことができました。
そして気づけば、11年です。
その期間に他の作品も数多く手がけましたが、当作に対する熱情が失われることはありませんでした。
というよりも、他作品を手掛けることでモチベーションを維持することができたのでしょう。本来の自分は飽きっぽい気質でありますため、当作だけでは満たされない欲求を他の作品につぎ込むことで、熱意を純化できたように思います。
また、当作だけでは満たされない欲求があるのと同時に、当作でしか満たされない欲求が存在したのも事実です。その輪郭を整えるためにも、自分は複数の作品を同時に手掛けていく必要があったのでしょう。
この11年間、一度だけ転居の都合で更新ペースをずらした記憶がありますが、それを除けば一定のペースで更新できたかと思います。
それでも義務感ではなく、ただ書きたいから書くという熱情のままに最後まで走り抜けたことを、心から嬉しく思っております。
また、自分はひたすら楽しい心地で書き進めることができましたので、その楽しさをたくさんの方々と分かち合えたことをありがたく思っております。
重ね重ね、当作をご愛顧くださりありがとうございました。
今後公開していく予定である当作の外伝集についてはのちのち語らせていただきますので、そちらもお楽しみいただけたら幸いでございます。




