双子、妹を泣かす
心のどこかで…きっと運命は変わるって思ってた。
そう信じていたのに…私は結局、運命を変える事は出来なかったみたいーーーーー…
領地から戻った時間が思ったよりも遅くなってしまったので、リナリアとのお茶会は翌日の学園から帰宅した後にしてもらった。
その事をリナリアに伝えれば、不機嫌になるかと思っていたリナリアは無表情で頷くだけだったから…正直驚いた。
「昨日は、帰りが遅くなってごめんね?」
私の部屋にお茶と私専用チョコレートサラミと、残っていたパウンドケーキの端っこを用意してもらいお茶会はスタートした。
リナリアを挟むように私とリオンが席に着く。
私が謝罪の言葉を伝えれば、リナリアは首を振り小さな声で「大丈夫。」と言う。
リオンと二人で顔を見合わせると、私達はお互いに同じ事を思ったようだ。
…こんなに静かだった?と…。
そして、ふとリオンの顔を見て思い出した。
「…リオン君に聞きたいんだけど…アレスに何を吹き込んだのかな?」
アレスの「あーん。」とか指ペロとか唇ペロリとか!
リオンはサッと目を泳がせ惚けた顔で「何のこと?」って誤魔化した。
私がジト目で見れば、リオンはニッコリ笑って何故か私に近づいてくる。
「何の事だか分からないけど、リリアは凄い頑張ったからヨシヨシしてあげるね。」
リオンはキュルンとした目で私の頭を撫でるので…何も言えなくなる。
ズルイ…その顔はズルすぎる…。
すると、リナリアも席を立ちリオンと一緒になって私の頭を撫で撫でしてくれた。
何だ…これは!
この最高に可愛いコンビに撫でられたら、もう…何も言えないし。
何も要らない。
私もお返しにリナリアの頭を撫でれば、リオンも同じようにリナリアの頭を撫でる。
リナリアは吃驚した顔をし、暫くは固まっていたが…ホワッと笑顔になった。
…初めて、リナリアが自然に笑うところを見たような気がする。
「…ありがとう。」
撫でられた頭を軽く摩り、リナリアは小さな声で呟く。
照れているのかな…?
再び、席に戻るとお菓子を食べ始め…リオンがリナリアに話を振る。
やはり、お菓子を犠牲にしてでもリオンに居てもらって良かった。
「リナリアは、いつもは何をしてるの?」
私達が学園に行っている間の話を聞くと、リナリアは戸惑ったような顔をしてケリーを見る。
…どうしたと言うのだろうか?
「リナリア様、大丈夫ですよ?」
ケリーはリナリアの傍まで来てリナリアの背中を摩る。
それでもリナリアが躊躇してるので、私とリオンは互いに顔を見合わせ首を傾げる。
「何かあるの?無理に話さなくても大丈夫だよ?」
リオンが優しく声を掛ければ、リナリアが「本当に大丈夫?」と小さな声で呟いた。
「…ねえ、リナリアはどうしてそんなに小さな声で喋るの?」
冬季休暇の前までは、もっと声が出ていたように思う。
馬車の前で体当たりされた時も…そんなに小さな声じゃなかった。
私は思ったままの疑問をぶつけると、リナリアの肩がビクッと上がり…顔は真っ青になる。
「あっ…ごめん。怖がらせちゃった?」
自分がキツイ顔をしてる事をすっかり忘れて普通に聞いたものだから怖がらせてしまったのだと思い謝れば、リナリアは首を横に振った。
あれ?っと思わず首を傾げると…リナリアは更に小さな声でポツポツと話し始めた。
「私の声が煩いと言われたので、小さな声で喋るようにしたの…。」
「「………!?」」
リナリアの言葉に私もリオンも眉間にシワを寄せて固まる。
その表情にリナリアがまた顔を青くさせたので、リオンも私も慌てて表情を戻す。
「その…誰に言われたの?」
気まずいし、答えてくれないかもしれないけど…一応聞いてみる。
リナリアは再びケリーを見て話して良いか確認し、ケリーが頷くと私達に向き直る。
「ジュード殿下に言われたの…。」
「「……え?」」
ジュード殿下って…婚約者に言われたって事?
何それ…酷くない?
女の子にそんな事を言うなんて…!
「最近は会いに来ても構ってくれなくて、話しかければ煩いって…いつも言われるようになって…。」
ハラハラと涙を零しながら、ドレスのスカートを握りしめるから…私もリオンも堪らずリナリアをサイドから抱き締める。
抱き締められた事に驚き、リナリアはアワアワとするが気にせず抱き締めた。
こんな風に女の子を泣かせちゃダメだ。
しかも相手は婚約者…絶対に許さない!
「私達の前では普通に喋って大丈夫だよ。」
「そうだよ!楽しくお喋りしよう?」
私とリオンでリナリアに話しかければ、リナリアは更にわぁーっと泣き出してしまった。
え?どうしよう!?もっと泣かせちゃった!!
今度は私とリオンがアワアワすると、何故かマリーとアリーとケリーが私達を覆うように抱き締める。
しかも何故か鼻を啜り、涙声で「大丈夫です。」と言っているから更に混乱した。
…一旦、落ち着きましょう。
温かいお茶を入れてもらい、三人とも一息つく。
リナリアはいっぱい泣いたせいで目元が真っ赤だ。
特に肌の色が白いので目立つな。
「…ありがとう…その…お兄ちゃん、お姉ちゃん。」
グズグズと鼻を鳴らしながら、リナリアは伺うように私達を呼ぶ。
今まで…お兄様とお姉様だったけれど、私達がお兄様を“お兄ちゃん“と呼んでるのが気になっていたんだろうな。
「「大丈夫だよ。」」
リオンと顔を見合わせ、リナリアの頭を撫でながら告げれば嬉しそうに微笑んだ。
その顔がとても可愛くて…思わず抱き締めそうになって、リオンに止められた。
そして、リオンはいつになく真剣な顔でリナリアを見た。
「リナリア、落ち着いたところで確認したい事があるんだ。」
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物騒なタイトルにして、すみません。
そして冒頭の言葉の意味は、ちょっと先になります。




