羨ましいんでしょ
「良かったら貴方の話を聞かせてくれる?」
リオンは部屋の外で待機していたアリーにお茶を用意してもらうと、ライルの前に差し出した。
温かい紅茶の香りにライルは更に涙を流す。
元々は公爵家の三男で、常にお茶を嗜んでいた筈だ。
優しい語り口でリオンはライルに笑顔を向ける…。
それに対し、ライルもリオンを見つめ頷く。
……解せぬ。
何故、同じ双子なのにリオンはそんなに人の心を掴むのが上手いのだろうか?
リオンにあって私に無いもの……いや、そもそも性別が違うから外見的には色々とあったり無かったりするし。
それにしてもリオンの…このベテラン刑事のような感じは羨ましいな。
もう…“とっつぁん″とか呼ぼうかしら。
あれでしょ?アイツはとんでも無い物を盗んで行った的な会話とかしちゃうんでしょ?
どうなのさ!…ちょっと楽しみなんだけど!!
「リリア、煩いよ。」
静まり返る部屋でボソリと呟くリオン、私以外の人達は何の事だ?と困惑した表情を浮かべる。
「…何も言ってないけど?」
一応、心の声は全開だったが口には出していなかったと思うんだけど?
「顔が煩い。」
リオンが一言そう呟くと…何故か大五郎さんと記録係の方が俯き肩を震わせる。
よく見れば向かい側に座るライルも俯いているではないかっ!
「…笑いたい時は声に出してもらった方が傷も浅いんですけど?」
クスクスされるくらいなら、思いっきり笑えよ。
そんな気持ちで呟けば、三人は爆笑する。
ライルよ…君は先ほどまで泣いていたではないか…。
笑いが収まると、アリーが新しいお茶を用意してくれた。
とても温かい…私の荒んだ心も癒されますな。
「…俺の話を聞いてくれるか?」
お茶を飲んでいれば、ライルがボソリと呟いた。
私もリオンもコクリと頷くと、ライルは少しホッとした顔で話し出した。
「俺は…公爵家の出だが、まあ…一言で言うと…お荷物だった。三男て言うのは家も継ぐ事が出来ず、婿に行くにしても次兄より劣る家柄じゃなければならない。優秀な兄達と違って学力もソコソコだし、公爵家なのに魔力量も少ない俺は…父から疎まれていた。」
同じ公爵家なのに…男が三人となると、3番目はやりきれないな。
何か一つでも人より秀でた才能があれば違ったのかもしれない。
「そんなだから、家族から何も期待なんかされてなかったんだが…ある日、父に頼まれ事をされたんだ。父が俺を頼るなんて初めての事だったから嬉しくて…でも、そこから俺の人生が狂い出した。
メイカー公爵に伯爵家にお使いを頼まれ、そこで出会ったジェシカと仲良くなった。
ジェシカとは何度か手紙でやり取りをしていたある日、再び父が俺を頼った。
隣国の子爵家へ養子に入るように言ってきたんだ。
人身売買に関してはマッコリン子爵家に養子に入ってから知る事となったが、その頃には外堀を埋められ…俺は引き返せない所まで来ていたのだと知った。
俺に想いを寄せるジェシカを利用し、獣王国からワインバル王国まで獣人達を運ぶ準備をさせられた。
しかも…ロマネス殿下が父と共謀していたんだ。
それを知ったのは、ジュード殿下がワインバル王国へ留学して直ぐの事。
王城でロマネス殿下に声をかけられ、俺は驚いた。
気がつけば周りは事件関係者ばかりで、俺が罪の告白なんかした日には…消されると思った。
引き返せないのなら…一層の事、どっぷり首まで浸かってしまおう…罪を犯した事に変わりは無い。そう思った…まさか、父が捕まっていたなど…そんな事など知らず…俺は…まだ…大丈夫だと思って…いたなんて…。」
嗚咽と共に紡がれた言葉は、とても苦く重く感じた。
ライルを捕らえた頃には既に諦めて開き直っていたから、あんなに粋がっていたのか。
それにしても…実の息子まで使い、犯罪を犯したメイカー公爵に再び怒りを覚える。
「とても遣る瀬無い…だが、貴方が犯した罪は消せない。貴方がした事で傷付いた人達がいたのも事実。…貴方はしっかりと裁かれ、償うべきだと僕は思う。」
話を聞き終えたリオンは真面目な顔でライルにそう告げた。
それに対しライルも目を瞑り頷く。
「あぁ…父が捕まった以上、今までみたいに足掻くのは無意味だ。…やっと解放されるのだと思うと、肩が軽くなるよ…。」
力無く笑うライルは、今までの表情からは考えられない程に穏やかに見えた。
ずっと…彼には父親が纏わりついていたのかもしれない。
「…もし、君達が俺と同じように父親からの命令されたら…君達ならどうした?」
ライルは私とリオンを交互に見ると…眉を寄せ、そう問いかけた。
私達なら…どうしたか?
「「そんなの決まってる!全力で父親をブン殴って正すよ!」」
いくら父親からの命令でも、犯罪に手を染めたりしない。
分かった段階で父を役所に突き出すし、私達も罪を償う。
それが家族の愛ってやつだと思うから。
「…愛しているから…正しい道を歩んで欲しい。だから、家族である私達がやらなければいけないし…他人に任せる事でもないでしょ?」
私の言葉にリオンは頷くと、補足するように話し出す。
「貴方と僕達とでは境遇が違いすぎるから、僕達の答えは参考にはならないよ。正しくないからと親の命令を聞かないなんて有り得ないでしょ?でも、僕達はそれをやってしまう。」
リオンが捕捉するも…ライルはあまりの衝撃に開いた口が閉じる事は無かった。
…そうなの、私達って我が道を行くタイプなので…他の方には恐らく理解されないと思うの。
「羨ましいでしょ?」
ふふんっと胸を張り、ライルを見れば…ポカーンと口を開けたライルはクシャリと表情を変え私達を見つめる…。
「本当…羨ましいよ。」
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