本人のやる気次第
王都に入り馬車は間も無く邸へと着く。
窓の景色を見ながら、今までの事を整理していたが…ふとある事を思い出した私はペルノを見た。
「…何の獣人なのか聞いてなかった!」
質問したのに別の話になって質問が流れてしまった事で聞き逃したと気づいた私は慌ててペルノへと質問し直す。
ペルノは頬を掻きながら「そのうち話す。」と言ってはぐらかしてしまった。
「ペルノは帰りたい場所や行きたい場所はあるの?」
とりあえずは邸に居てもらうが、その後の話を振るとペルノは首を左右に振る。
「クリスティア領の領地で仕事をするならお金を貸す事も出来るし…もしくは、私達の使用人になる?」
領地で働くのならば、初期費用は貸しても良いなと思って声をかけた。
もしくは私達の使用人になるかと聞けば、何故かペルノは真剣な顔で私とリオンを見返す。
「良いのか?俺は字も書けないし、魔法も剣術も使えない。言葉遣いだってこんなだけど…それでも使用人になれるのかよ?」
そう言ってペルノは自嘲気味に笑った…。
そんなペルノに私もリオンも首を傾げる。
「え?そんなのこれから教え込むから問題無いけど…それとも勉強とか嫌だったりする?言葉遣いを直すのが面倒だったりするなら…難しいかな?」
「うーん…僕達が雇う使用人て今のところ誰も居ないから、出来たら自分達で選んだ人間が良いなって思ったんだけど…ペルノは僕達に仕えるのは嫌じゃない?やる気があるなら僕はそれだけで良いと思うんだけど。」
私とリオンに仕えている使用人は全て祖父母や両親が選んだ人間で、今後…私達が領地を継ぐ事になれば新たに雇う使用人は自分達で選ぶ事になるだろう。
ペルノがその第一号になる訳だが…本人のやる気次第なところもあると思う。
「使用人としての働き方は他の人達に教えてもらうとして、それ以外の事なら僕達でも教えられると思うよ?」
「そうね、剣術も魔法も一般教養も復習ついでに教えるのも良いわね!」
リオンと共にウンウンと頷いていれば、ペルノはそんな私達を見て口を開けてポカーンとした顔をしていた。
「スラムの…それも名前も無い奴を雇うって…あんたらどうかしてるんじゃ無いのか?揶揄ってんのか?」
ペルノは眉を寄せて不機嫌な顔で文句を言ってくるので、私はリオンと顔を見合わせて…首を左右へと振った。
その仕草にペルノは更に不機嫌になった。
「お前ら馬鹿なんじゃ無いのか?普通…貴族の邸に勤めるんなら身元がはっきりしてる奴だろ!」
プンプンと怒りながら文句を言われてしまった私達は再び顔を見合わせる。
そして互いに一つ頷いた。
「いや、身元がはっきりしていたからって良い人間とは限らない。私は私が雇いたいと思う人間を選ぶだけ!あとはペルノが働きたいかどうかだよ?それと…私もリオンも成績は優秀なんですー!!」
自分の意見と共に、馬鹿扱いされて少しだけイラッとしたのでブスくれながら言い返せば…ペルノは瞠目して固まった。
その顔をされると自分達が優秀に見えないのかと不安になるから止めて欲しい。
「…働きてぇ…あんたらになら仕えても良いって思う。」
暫く固まっていたペルノはハッと我に返り…少し気まずそうな顔をして呟くと、プイッと顔を背けてしまった。
「じゃぁ、決まりね!帰ったら早速、両親に話さないといけないわね。」
「うん!決まり。…でも、色々とハードだからって途中で逃げちゃダメだからね?」
ペルノの返事に私もリオンも満足そうに頷き笑顔で答える。
そんな私達を見たペルノは誰にも聞こえないような小さな声で「早まったかも…。」と呟くのだった。
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