犯人はハイムさん
キャティ様の事は聖女様に任せて、私達は邸へと戻る。
アレスは邸に寄らず、私達を送り届けるとそのまま帰ってしまった。
もう少し…一緒にいたいなと思ったけど、リオンも我慢しているのだと思うと…ね。
「この後は何する?作戦会議でもしようか!」
「え?疲れたからお菓子でも作ろうかと思ってた…。」
リオンは手をワキワキさせて悪い笑みを浮かべていたが、私の言葉に苦笑いを浮かべた。
「それって疲れが癒えないんじゃないの?」
疲れを癒すために甘い物が欲しい。
だが、どうせなら私が食べたい物がいい。
しかし、料理長のハイムさんに依頼して作ってもらうのも面倒臭いし…待てる気がしない。
つまりは自分が作ったら早いし、食べたい物が食べられるのです!
ということで、やってきました!厨房です。
小麦粉とベーキングパウダーと砂糖と卵…こんなもんかな?
ホイップクリームも作りたいから…生クリームも!
あと…蜂蜜とバターと…おっメープルシロップもいいな。
作業台に材料を並べていると、向かい側に椅子を持ってきて座ったリオンが顎を両手に乗せてダラっとしたポーズで私を眺めていた。
料理をする時は何故かいつも一緒に厨房に来て、私の作業を見ているリオン。
時には手伝ってくれたりもする。
「ふんふーん…ふふふーん。」
鼻歌まじりに粉を篩ったり、混ぜたり…本気で泡立てたり。
しっかりホイップをボウルから器に移すと、リオンにボウルを奪われる。
ボウルに残ったホイップをペロリと舐めて可愛い顔で笑う。
その表情に思わず頬が緩む。
こういうの久しぶりだな…最近、ちょっとギスギスしてた気がする。
擦り減って、摩耗した心にリオンの素の笑顔は癒されますな。
フライパンを熱して油を引き…一度、フライパンを布巾の上に乗せる。
生地を流し込んだら再び火に戻し焼く。
そう…作っているのはみんな大好き?ホットケーキです。
卵白をメレンゲにしたフワッフワのホットケーキもいいけど、今日は昔ながらのホットケーキを目指します。
厚さは…3センチくらいかな?
疲れた時は懐かしい味に出会いたくなる。
子供頃に食べたお母さんのホットケーキ…甘くてあったかくて心がホワホワして大好きだったな。
今のリオンみたいに、お兄ちゃんと一緒にお母さんが作ってるところをよく見ていた気がする。
思わず口元が綻ぶと、リオンは不思議そうに私を見ていた。
「はい、お待たせ!此処で食べちゃう?」
「「うん!!」」
焼き上がりをお皿に乗せて、リオンへと差し出すと…いつの間にか隣にリナリアが座っていたので驚いた。
慌ててリナリアの分もお皿に乗せて差し出すと嬉しそうに笑う。
「オススメは、バターに蜂蜜。もっと甘いのがお好みならホイップにメープルシロップをかけても良いと思う。」
自分の分も焼いて、一枚はバター&蜂蜜。もう一枚をメープル&ホイップにして二人と向かい合って食べる。
ジュワッと溶けたバターの塩気に甘い蜂蜜がトロリと絡んで…止められないやつ!!
バターは溶けきらない絶妙なタイミングを狙うべし。
「あふっ…甘ーい。」
はむはむとホットケーキを美味しそうに食べるリナリアはやっぱり年相応かなって思う。
「はふっ…甘いのに、ちょっとしょっぱくて…止まらなくなっちゃうね。」
リオンはバター&蜂蜜をお気に召したようだ。
私はというと、一口サイズにカットしたホットケーキにたっぷりとホイップを乗せ…メープルをサッとかけた。
罪悪感たっぷり、満足度も半端ない!今日は疲れたんだから仕方ない!!
はむっと口に含めば甘い香りが口いっぱいに広がった。
「もう…ダメかもしれない。」
「「わかる!」」
夕方だというのに、ペロッと2枚も食べてしまった…色んな意味でダメな気がする。
私が呟きながら突っ伏せば、リオンもリナリアも突っ伏した。
三人が作業台に突っ伏すとか…どんなカオスだよ。
遠目で見ていた料理人達がクスクスと笑う声が聞こえたけど…気にしない。
今日の私はお疲れなのです。
料理長のハイムさんが近づいてきて、コトリと何かを置いていく。
顔だけ上げて見てみれば…ナッツの蜂蜜漬けだった。
「ハーイムさーん、あーりがとーう!!」
瓶の蓋を開けると、ホットケーキにホイップを盛り…ナッツの蜂蜜漬けを乗せる。
カリッとしたナッツと甘い蜂蜜が最高なんですよねー。
私を真似て二人も同じように盛る。
パクリッと口に含み、カリッとジュワッと咀嚼し…再び突っ伏した。
「…犯人は…ハイムさん。」
「…連続…殺人…。」
「…ふふっ…でも、私もダメかも…。」
不穏な会話にハイムさんは苦笑し、先程の瓶を回収していく…酷い男だ。
そして、お兄様が厨房に来るまで私達は突っ伏したまま会話を楽しむのだった。
「…え?犯人はハイムさんなの?」
お兄様が厨房に来ると、突っ伏して笑い合ってる私達を見て困惑する。
まぁ、そうなりますよね。
私がメープルシロップで落書きしたダイイングメッセージを見たお兄様は、首を傾げながらハイムさんを見た。
ハイムさんは苦笑いしながら左右へと首を振ると、先程の瓶をお兄様に差し出す。
それを見た私は重い腰を上げ…ホットケーキを焼いた。
「なるほど!確かにこれは…美味し過ぎるね。…うん、ハイムさんがいけないよ。」
カリッとナッツを噛み砕きながら、美味しそうな顔でホットケーキを頬張るお兄様は…小さい子供のようで何だか可愛く思える。
お菓子の前じゃ、みんな子供になっちゃうんだよね。
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紛らわしいタイトルですみません。




