筆記試験
数日かけてガラガラだったポーションの棚は見事に埋まった。
しかも他の魔法薬の棚もビッチリと…埋まった。
そう…ポーションを作り終えたら順に不足していた魔法薬を作るように指示をされ製薬すると、魔法薬研究所の職員は交代で休みを取れるようになった。
どうやら激務続きで休めてなかったようだ。
休まないと人として壊れていくので小まめに休んで欲しいものです。
難しい時もあるけどね。
筆記試験まで後2日と迫ったその日は特にやる事がなくなったのでマリア様から「勉強してて良いよ。」と許可が貰えたので、七歳の誕生日にお祖母様から頂いた魔法の本とアレスが受験した時の試験問題などを広げ…今は三人でお勉強中だ。
「魔法薬や魔法に関する情報は九年前から内容が変わってないのね…。」
ふと疑問に思って声に出すと、アレスとリオンはキョトンとして私を見た。
「だって…普通は何かしらの新しい物が生まれたり、発見されてもおかしくないでしょ?此処だって研究所って言うけど研究じゃなくて製薬所って言った方が正しいんじゃないかと思うの。」
研究をしてるんだかしてないんだか分からないが、魔法薬を作るのに精一杯でそれどころじゃない気がする。
前世では研究所と言えば、本当に研究してる機関だったかから…その認識のズレが少しだけ違和感があって気持ち悪い。
「確かにそうだね、新しい物が生まれたり発見されたりって無いよね。……ねぇ、リリア…お願いがあるんだけど。」
私の言葉に賛同したリオンがウンウンと頷いていたかと思うと、真剣な顔で私を見た。
「リリアが気づいた事…僕の名前で論文にしても良いかな?」
発案者である私に、リオンはお伺いを立てる。
私は特に論文とかにするつもりも無いし、ただ疑問に思った事を口にしただけなので、その事を伝えればリオンが「連名にしないとダメかな?」なんて聞くから「リオンの名前だけで良いよ?」って答えれば、リオンは嬉しそうに笑って「ありがとう。」って言った。
リオンは手元の新しい羊皮紙に簡単に内容を書き留め、魔法で封をし鞄へとしまう。
試験が終わったら書くのかな?と思いながら、勉強を続けた。
筆記試験当日は特に何事もなく…それはもう平和に過ぎた。
と、思っていたら試験後に魔術師団長のビルショート様が出待ちしていた…。
他の受験者は何事かという目で見ていた。
そうだろう…だって偉い人が普通に受験者を出待ちしてるのだ。
ビルショート様の息子が受けているのかと思った人も少なくないだろう。
「結果は直ぐに出たのだろう?」
ワクワクした目で私達を見るビルショート様。
学園などの試験と違って、魔法省の国家試験は直ぐに結果が出る。
魔法によって答え合わせが行われ、そして合格者が黒板へと書かれていくのだ。
何とも幻想的で面白かった。
「「お陰様で合格しました。」」
私もリオンも笑顔で答えると、ビルショート様は首を振る。
何か不味かったのだろうか?
「そうでは無くて…点数はどうだったんだ?」
「「え?満点ですよ?」」
どうやら試験の合否よりも、何点取ったのかが気になっていたようだ。
そこは勿論、私とリオンですから…ね?
「…満…点…!?」
かなり良い成績で合格したと思っていたら満点でした…ってとこだろうか?
ビルショート様と言い、ジン様と言い…貴族なのに顔を作るのが苦手なようで、表情が丸分かりだ。
「良くても90点…くらいなんだよ?」
ビルショート様は苦笑いを浮かべながら、コソッと教えてくれた。
なんだ、皆んな結構に高得点なんじゃん。
そんな事を思っていると、リオンが首を振った。
「リリア…“良くても“って言葉が付いてたら、普通はそんなに取れないって事だと思うよ?」
リオンの言葉にコテンと首を傾げる。
「え?じゃあ、皆さんは何点で通過してるんですか?」
私の疑問にビルショート様が再び苦笑する。
その後ろを通った筆記試験の試験官も私達を見て苦笑した。
「合格ラインは80点。今回は五十六人受けて合格者は四人だけだった。」
通りすがりの試験官さんがポソっと教えて去っていく。
「……黒板に書き出された合格者の人数…覚えてなかったの?」
リオンが呆れた様子で呟いたので「え?自分の名前を確認しただけだよ?」と答えれば…何とも言えない空気が流れてしまった。
だって合格者だけじゃなく、成績順に全員の名前が書き出されたのだ…探すのだって大変だったのだ。
まさか先頭にリオンと揃って載ってるとは思っても見なかったし…いや、思ったから先頭から見たんだよね…実は。
「まぁ、何にせよ…来週からは魔術師団だ!楽しみに待っているよ。」
ビルショート様は嬉しそうに微笑むと、さっさと立ち去ってしまった。
とりあえず、難関と言われる筆記試験が終わった事に私もリオンもホッとし…魔法薬研究所へと戻ったのだった。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。




