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たぶん...悪役令嬢だと思います  作者: 神楽 紫苑
第2章 私リリア!学園に通うの。
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変えられなかった運命

「やあ!悪いね。」

お兄様に連れて来られた部屋は応接間だった。

しかもクロード殿下は既にお茶をしているではないか…。


「ごめんね?クロードが二人を呼ぶからさ…ちょっとだけ付き合って?」

お兄様は申し訳なさそうに私達に頭を下げるので、私もリオンも頷くと…席に座るように促された。


「バレンタインという面白いイベントをしたと聞いてね…はい!」

クロード殿下は和かに笑顔を作り…手を差し出した。

何で手を出されてるのか分からず、私もリオンも首を傾げる。


「あれ?僕にもチョコレート用意してないの?」

…してないよ?

とは、言えない。


………はぁ……

顔には出さないけども、心で大きな溜息を吐く。

スッと立ち上がり「お持ちします。」と声をかけてから…足早に厨房へと向かう。

殿下に渡さないとなれば問題になる…そうなっては色々と宜しくない。

だが、皆んなに渡したチョコレートに予備は無いし…パウンドケーキの端っこを出すわけにもいかない。


…残ってるチョコレートは一つしかなかった。

そう…私専用のチョコレートサラミ。

私専用なんだよ!

誰かの為じゃない私の為の物なの!!

昨年はリオン達に見つかったから…今年こそはって頑張って作ったやつなの!


バーンッと厨房の扉を開け、ハイムさん達が驚くのを横目に私は冷蔵庫からチョコレートサラミを取り出して、切り分ける。

高価なお皿を用意してもらい並べると、何も残らなかった。


…私は結局…私専用のチョコレートを独り占めする事が出来なかった…。

今年こそは…と、頑張ったあの日。

そう…私は自分専用のチョコレートを独り占めする事が出来ない運命だったようだ。

どこかで思っていた…今年もダメなんじゃないかって。

リナリアとお茶をする事が決まった時にも嫌な予感はした。

予感はしていたのに、どこかで大丈夫だと思ってしまった。

運命など…変えられるものだって…心のどこかで思っていたのかも知れない。

結局、私にはこの運命を変える事なんて出来なかったのだ…。



「お待たせしました。」

何食わぬ顔で応接間に戻ると、クロード殿下の前へとお皿を差し出した。

お兄様も初めて見るチョコレートサラミに、お皿と私を交互に見る。


「あれ?リーマスも貰ったんだろ?」

クロード殿下はお兄様も顔を不思議そうに見ると、お兄様は首を横に振った。


「いえ、僕の貰った物とは違う物です。」

そう言ってチラッと私の方を見たお兄様。

そんなお兄様に私は少しションボリして見せる。

…これくらいしたって良いじゃない…私専用だったんだから。


クロード殿下の側で控えていたソムリス様がチョコレートサラミを小さく切り、先に毒味する。

毒味なのに、躊躇なく嬉しそうに食べるソムリス様。

彼は私の作るお菓子には安心してるのか、美味しそうな顔でゆっくり咀嚼していた。


「まだか?」

クロード殿下がいつまでも咀嚼しているソムリス様に催促すると、少し残念そうな顔で「大丈夫です。」と言ってクロード殿下へとチョコレートサラミを渡す。

クロード殿下は嬉しそうな笑顔で受け取ると、パクリと口に含み暫くチョコレートを味わっていた。

「先日頂いたティラミスというのも美味しかったが、これも美味しいね。」

そう言って二つ目もパクリと口に含み美味しそうに咀嚼するクロード殿下。


「リリア、僕も貰っても良いかな?」

お兄様も味見がしたいのか、私に食べても良いか確認する。

「待て!これは僕のだよ?僕に聞くべきじゃないか?」

私が頷く前にクロード殿下がお兄様に反論する。

確かに…クロード殿下用に出した物なので、所有権は既にクロード殿下にあるのかもしれない。

…私のだったのに。


「クロード、一つだけ味見させてくれない?」

「…仕方ないなぁ、じゃあ借りって事で一つどうぞ!」

うわぁ…凄い黒い笑顔。

お兄様は頬を引きつらせながら、笑顔で「ありがとう。」と言ってパクリと口に入れた。

そして、暫くの間…お兄様は固まってしまった。



「ところで、そのバレンタインというイベントはどうだったんだい?」

お兄様が固まってるのを完全に無視しながらクロード殿下は私とリオンに話しかける。

その質問に私は一瞬だけ肩がビクッと揺れたが、何食わぬ顔で答える。


「はい、王都に居る家族にも領地に居る家族にもチョコレートを渡せて良かったです。」

…平常心、平常心。

こういう時は無だ、無になるんだリリア!

ニッコリと微笑みながら、バレンタインの感想を述べればクロード殿下の唇の端が少しだけ上がった…ような気がした。


「では、あのアレスにも渡したという事かな?」

和かに笑うクロード殿下。

…平常心、平常心…へーじょーしーん!!


「はい、喜んでもらえました。」

…事実だ。

事実…アレスは喜んでくれた。


『リリア、リリア。』

リオンが何故かテレパシーを送って来るので、何事かと思い振り返ってしまった。

どうやら平常心ではいられなかったようだ。

テレパシーなのに、振り返っちゃったよ。


『…リリア、見ちゃダメじゃん。』

『仕方ないでしょ?心が乱れてるんだから…。』

むぅっと唇を尖らせリオンに、私も同じように唇を尖らせる。


「何?睨めっこしてるの?」

クロード殿下が面白そうに私達を見るので、首を左右に振って…笑って誤魔化した。


「やっぱり二人には二人だけの秘密があるようだね?」

ニヤニヤしながら聞いて来るので、更に笑って誤魔化す。


「まだ教えてくれないのか…いつか、教えてね?」

諦めたのかと思えば、まだ諦めてないようだ。

一年以上前から私達の秘密を暴きたいと思っているのか、クロード殿下は何かと私達双子に絡んでくる。

…そうはさせませんけどね?


「「何のことでしょう?」」

私とリオンはいつものように、コテンと首を傾げて笑顔で返すのだった。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます。

2頁前の冒頭をやっと回収しました。


リリアは自分専用のチョコレートを独り占め出来ない運命のようです。

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