椎名 賢也 82 迷宮都市 地下10階 他領から来た冒険者達 2
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
華蘭の老紳士に店の外まで見送られ、冒険者ギルドの方へ向かう途中で6人組の冒険者パーティーとすれ違う。
地下10階では見かけた事がない顔だ。
他領から来た冒険者かと思い沙良の様子を窺うが、特に反応はない。
俺の思いすごしか……。
見知らぬ冒険者に気付いた旭も、僅かに緊張させていた体を緩ませた。
何事もなく通り過ぎたのにほっとし、沙良のあとを付いていく。
向かった先はアマンダさんの名前の表札がある子供達の家だ。
彼女のパーティーは1ヶ月の攻略を終え、地上に帰還している。
沙良は、アマンダさんから何か話を聞く心算なのだろう。
子供達の家に着くと、アマンダさんは子供達と一緒に布団を棒でバンバン叩いている最中だった。
そんなに強く叩く必要はないんだが……、布団が破れないか心配になる。
「アマンダさん、こんにちは~。今ちょっといいですか?」
同じ心配をしたのか、沙良が慌てて声を掛けた。
アマンダさんが手を止め振り返る。
「おや? サラちゃん、私に用事かい?」
「ええ、他領から来た6人組の冒険者について聞きたいんです」
「あぁ、いいよ。どんな事だい?」
「先週、地下10階で見覚えのない冒険者パーティーを見ました。30代後半の男性6人で、槍士2人、剣士2人、魔法士2人の構成です」
沙良の話を聞いたアマンダさんは、少し考え込み顔を顰める。
「そりゃ多分、他領から来た冒険者だね」
彼女もまた、彼らを警戒しているようだ。
「10階層以上ある大型ダンジョンはカルドサリ王国に10あるが、10階層以降はそれぞれのダンジョン特有の魔物が出現するんだ。年齢から考えると既に他の大型ダンジョンを攻略していた連中が、迷宮都市の魔物に魅かれて狩りに来たんだろう」
へぇ~、思いがけず大型ダンジョンの情報を得たな。
まぁ迷宮都市のダンジョンは30階層もあるから、俺達が他領の大型ダンジョンに行くのは当分先だが……。
「そうなんですね。その人達と、さっき道ですれ違いましたよ」
おいっ! そういう事は、もっと早く言え!!
「サラちゃん達には何もしてこないと思うけど、ちゃんと注意するんだよ。何かあったら私に言いな!」
「はい!」
アマンダさんの頼もしい言葉に、沙良が手を挙げて答える。
この子供っぽい仕草は意識してやってるのか?
見た目年齢を盾に、アマンダさんの庇護欲を誘っているんだろうか?
先程すれ違った他領の冒険者達を見ても顔色を変えない事といい、子供のフリを上手く利用する妹は俺が気付かないところで無茶をしそうだ。
沙良の嘘は大抵見破れるんだが、本気で隠そうとされたら難しいかも知れん。
そんな沙良を微笑ましく見るアマンダさんは、これからアリサちゃんのE級昇格祝いをしに『肉うどん店』へ行くらしい。
店の売り上げに貢献してくれるのは嬉しいな。
子供達も今日は外食だと喜んでいる。
俺達は邪魔しちゃ悪いと早々にホームへ帰った。
月曜日。
ダンジョン地下10階の安全地帯に到着すると、テントが一つ増えていた。
昨日見た冒険者は地下10階を拠点にすると決めたのか……。
厄介事が増える嫌な予感がして、旭に視線を送る。
「新しく来た人達。もしかして地下10階を拠点にしたのは、シルバーウルフ狙いかな?」
案の定、テントが増えた事に気付いた沙良が聞いてきた。
旭、さりげなく言うんだぞと目に力を込める。
「そうかもね~。手っ取り早く大量に狩ろうと魔物寄せを使用し、トレインになったって感じ?」
旭は俺の意図を汲み、上手く魔物寄せの話を出した。
「魔物寄せかぁ、異世界だしあるっぽい」
魔物寄せの単語を聞いても、沙良は彼らが再度使用するとは思わないのか怖がる様子がない。
もしまた使用したと分かれば、俺と旭が対処する心算だし問題ないだろう。
「俺達は後2週間で地下11階に移動するから、関わらないと思うが……」
一応、心配しないよう言葉を添えた。
「そうだね~」
気にしていない沙良は軽い返事をする。
俺と旭で、他領から来た冒険者達とは接触しないよう注意しておこう。
そう思っていたが、金曜日のお昼に彼らが俺達のテントまでやってきた。
思わず舌打ちしそうになるのを堪えて警戒態勢を取る。
一体、何しに来たんだ?
すると、6人パーティーのリーダーらしき男が口を開いた。
「リーダーのエンダだ。地下10階を暫く拠点にするんで挨拶にきた」
態々挨拶に来たらしい。
「リーダーのサラです。よろしくお願いします」
「随分と若いな、魔法士3人組も珍しいが……」
「私達、これから攻略に行きますので失礼します」
普段は人当たりの良い沙良が、思いっきり歓迎していない態度を見せて話を終わらせた。
関わりたくないと分かる様子に妹も警戒していると知り、大人になったなと感慨深く思う。
これなら相手も、これ以上俺達に接触しようとはしない筈だ。
しかし、リーダーが沙良をやたらジロジロと見ていたな。
少女趣味の変態か?
旭が気に入らないとばかりに鼻をふんっと鳴らす。
沙良の容姿が幼いおかげで、迷宮都市のB級冒険者達は手を出したりしないが、育つべき場所は大きくなっている。
革鎧に隠れていて良かった。
ある趣味の変態共に知られないよう異世界へ行く時は、なるべく冒険者の格好をさせよう。
午後からの攻略を終え、冒険者ギルドで換金を済ませたあとホームに戻り、旭と居酒屋へ向かった。
「エンダって人、沙良ちゃんを見すぎだったよね!」
生ビールを一気飲みした旭が、空のジョッキをダンッと机に置いて俺に同意を求めてくる。
「少女に見える沙良が、大型ダンジョンで冒険者をしているのが珍しかったんだろう」
「それにしては、視線がいやらしかったよ!!」
沙良を不躾に見ていた事が、非常に不快らしい。
珍しく旭がプンプン怒っていた。
その調子でビールを飲むなよ? 誰が背負って帰ると思うんだ。
「それより、彼らが犯人の可能性がある。地下10階を攻略するのはあと5日だけだが、魔物寄せを使用しないとも限らない。覚悟は出来てるか?」
「ばっちり! 回し蹴りで気絶させてやる!!」
いや、お前のLvじゃ首の骨が折れるだろう。
「動けないように足を狙え。ダンジョン内で禁制品を使用したとバレたら、確実に冒険者資格が剥奪される。危険な存在が排除出来ればそれでいい」
「う~ん、じゃあそうするね」
俺より物騒な手段を取ろうとする旭を諫めて、酔い過ぎないようにせっせと料理を食べさせた。
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