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第901話 恐竜の魔物が棲む島 母と双子達のLv上げ&シーリーの魔力供給

※椎名 賢也 119 迷宮都市 地下12階 ダンクさんの両親 3をUPしました。

 午後からの3時間で母はLv170に上がり、私の結界魔法はLv15になった。

 ハイエーテルをがぶ飲みしていた双子達の浮遊魔法もLv10になったおかげで、かなりの高さが飛べるようだ。

 ちなみに従魔達の浮遊魔法はLv20になっている。

 最初の10cmから高さが倍に増えていくので、Lv20あれば飛翔魔法と(ほとん)ど変わらない。

 これはきっと、私を心配した従魔達が積極的に上げた結果だろう。


 夕食の準備もあるので実家に戻り、母の手伝いをする。

 手巻き寿司の材料を用意して煮穴子を作っていく。

 双子達は過去のトラウマからにょろにょろ系が食べられないけど、メンバー達は大丈夫。

 母は(はまぐり)のお吸い物を作り、中に入れる具材を切っていた。

 (まぐろ)、サーモン、イカ、イクラ、海老、煮穴子、厚焼き卵、きゅうり、カニカマを大皿に盛り、海苔(のり)を用意して最後に酢飯をタッパーに詰めたら異世界に居るメンバー達の夕食は完成だ。


『お兄ちゃん、聞こえる? 夕食を届けるから、10分後にルシファーを呼び出してね』


『了解』


 ルシファーを召喚するたび島へ行くのが、地味に面倒くさいなぁ。

 ホーム内でも出来ればいいのに……。

 結界を張ったままシルバーに騎乗して島へ移転する。

 出現地点を特定されているかもしれないので、結界は島へ行く前に張っておいた。

 地面に召喚陣を描いて現れたルシファーに、お使いを頼みLv上げ用の魔物を収納してからホームに戻る。


 夕食の手巻き寿司を楽しそうに巻きながら、双子達は10本も食べていた。

 生魚が食べられない異世界で20年を過ごした所為(せい)か、鮪とサーモンばかり口にしていたけど……。

 当然、煮穴子には目もくれない。美味しいんだけどな。

 食後のデザートに栗きんとんを出すと、母が抹茶を立ててくれた。

 これは以前買ったものを、365個増やしておいたんだよね。

 栗好きな旭は平気で5個くらい食べるけど、甘い物に飢えていた双子達も次々と手を伸ばしていた。

 私は3個で止めておこう。

 あ~、和菓子と抹茶の組み合わせが最高だわ。


 実家から車で帰る双子達と別れ、私は自宅に帰ってきた。

 のんびりとお風呂に浸かりながら、何かを忘れているような気がしてぼうっと考え込む。

 Lv上げ以外にする事があったかしら?

 皆の夕食は、ちゃんと届けたし……そう思った瞬間、シーリーの魔力供給を思い出した。

 竜の子供は魔力器官が発達するまで、自力で魔力を補えないのに!

 ヤバイ、忘れてたよ! 離れて何日経った?

 お風呂から急いで出ると、体を()くのもそこそこに髪が濡れたまま、通信の魔道具を起動した。


『お兄ちゃん、シュウゲンさんと代わって!』


 用件も言わず切羽詰(せっぱつ)まった声を上げると、


『沙良、突然大声を出すな。シュウゲンさんを呼んで来るから、少し待て』


 理由を問い正される事なく、兄がシュウゲンさんを呼びに行ってくれた。

 シーリーの様子が気になり(あせ)っていた私は、シュウゲンさんが来るのを今か今かと待つ。

 何も連絡がないなら無事だとは思うけど、この先もそうとは限らない。

 赤ちゃんの授乳と同じで、子竜にも毎日魔力供給が必要だろう。


『沙良ちゃん、代わったぞ。あぁ、手巻き寿司の煮穴子が美味かったわ』


 夕食の味を()められても、今はお礼を言っている場合じゃない。


『シュウゲンさん、シーリーは無事ですか!? 元気がなくなったり、していませんか?』


『? シーリーは元気にしておるよ』


 普段通りの声音で不思議そうに言い返され、ほっと安堵(あんど)する。


『シーリーと離れてから魔力供給が出来なかったので、心配だったんです。まだ合流出来そうにもありませんし、大丈夫でしょうか?』


『黒竜を召喚するまで1ヶ月かかるんじゃったな。今まで沙良ちゃんから多く魔力を分け与えられておったし、直ぐには弱ったりせんだろうが、長く続くとなると困るかも知れん』


『どれくらいなら持ちそうですか?』


『……2週間くらいだろう』


 シュウゲンさんの声が重く響き渡る。

 これは呑気(のんき)に1ヶ月後を待っている場合じゃない。

 せっかく兄達が石化を解除してシーリーが誕生したのに、このままじゃ死んじゃう!


『魔力供給の方法を考えてみます。もし解決出来ない場合、自力で島からカルドサリ王国まで行くしかないですね』


『沙良ちゃん、あまり先走らんようにな。儂も、いい方法がないか皆と話しあっておくからの』


『分かりました。シーリーの件は情報共有しておいて下さい』


 同じ部屋に居た兄と旭は、シュウゲンさんとの会話が聞こえた(はず)だ。

 自分達が助けた竜の子供がピンチだと知れば、私が単独で行動するのも許してくれるだろうか?

 でもまずは移動するより先に試す事がある。魔力の供給が他の方法で出来るかどうかだ。

 MP値を上げるだけなら、ハイエーテルを飴にしたものがあるけど……。

 きっと、それじゃ魔力を供給した事にならない。

 それに飴状のものは誤嚥(ごえん)する可能性がある。

 子竜には液体状のものを飲ませるほうがいいだろう。


 見えない魔力を液体に変化させる方法が思い浮かばず、頭を悩ませた。

 そもそもシーリーに魔力を与えている時だって、何かをしているわけじゃない。

 勝手に魔力がシーリーの体に流れていくのだ。

 う~ん、液体か……。

 ウォーターボールを出す時は空気中にある水分を取り出す感じでしているけど、自分の魔力となるとイメージが湧かない。

 魔力とは自分の中にあるものだからだ。


 じゃあポーションを変化させたように、液体に魔力を流してみるのはどうだろう?

 水道水より魔法で出した水のほうが魔力の通りがいいかしら?

 そう思って空のペットボトルを取り出し、中にウォーターボールの水を注ぐ。

 その水に魔力を流すイメージを掛けながら、変化を見守った。

 ステータスのMP値がどんどん減っていくので、方法としては間違っていないらしい。

 ペットボトルの水がキラキラと光り、淡い色がついていく。

 段々と黄、緑、青、赤、紫と順に変化していく様子を見ているうちに、意識が遠ざかり魔力切れになってしまった。


 翌朝、目覚めると私はシルバーに寄りかかり眠っていたようだ。

 どうやら心配したシルバーが家の中に入ってきたらしい。

 きっと主人の魔力が減っていくのを感じ、心配してくれたのだろう。

 優しい従魔のおかげで床に寝る事にならず、風邪を引かずに済んだ。

 けれども、髪を乾かさずに寝てしまったので首筋が寒い。

 火魔法と風魔法で温風を出し、簡易ドライヤーで乾かした。


 そういえば、昨日の結果はどうなっただろう?

 ペットボトルを探すと昨日置いた場所ではなく、少し離れたテーブルの上にあった。

 シルバーが邪魔にならないよう、位置を変えたのかな?

 意識を失う前に見た液体の色は紫だったけど、今は黒になっている。

 しかも、小さな光がキラキラと舞っていた。

 スノードームのような幻想的に見える不思議な液体は、見るからにただの水じゃなさそうだ。

 シュウゲンさんに鑑定してもらえば、成功したか分かるだろう。

 

 善は急げとばかりに支度(したく)を整え、島に移動してルシファーを呼び出し、黒い水の入ったペットボトルを渡した。


『お兄ちゃん、おはよう』


『沙良、今日はやけに早いな……』


 早朝から起こされた兄は、まだ眠そうな声で通信の魔道具に出る。


『ちょっとシュウゲンさんに急いで鑑定してほしいものがあるの。悪いんだけど、ルシファーを召喚してペットボトルを受け取ってくれない?』


『シーリーの件か?』


『うん、大事な事だから今すぐお願い!』


『分かった。鑑定結果が出たら連絡する』


 切れた魔道具をじっと(にら)みながら、連絡が来るまで待つ事数分。

 魔道具が起動した瞬間、


『どうでしたか!?』


 待ちきれずに鑑定結果を(たず)ねた。


『沙良ちゃん、でかした! シーリー専用の魔力水となっておる。これを飲ませれば、魔力の供給が出来るようじゃ』


 シーリー専用? シーリーの事を考えながら作ったので、効果の出る相手が限定されたんだろうか?

 まぁ、肝心なのは魔力の供給が出来る事なので問題はない。

 もし相手が限定されていなければ、ハイエーテルより高い効果のあるものになっていそうだけど……。

 薬師ギルドの管轄を(おか)すわけにはいかない。

 これからも、シーリーのためだけに魔力水を作ろうと決めた。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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