第896話 恐竜の魔物が棲む島 双子達のLv上げ 2&Lv50の恩恵
※椎名 賢也 114 迷宮都市 地下12階 石化した冒険者達 1をUPしました。
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
「そろそろ、お昼を食べに戻りましょう」
動きの悪い二人の手を強引に引っ張り、実家へ戻ってきた。
双子達を席に座らせ、昼食の準備をしている母の手伝いをする。
春巻きを揚げている間に炒飯を炒め、わかめスープを作った。
私達が来る前に母が作った南瓜のそぼろ煮、厚揚げと小松菜の煮物を出して完成。
「いただきます」
揚げたての春巻きを、火傷しないように小さく齧り、炒飯を口に入れる。
ぱりぱりの皮が美味しいな~。
「Lv上げは順調かしら?」
昼食をパクパク食べている双子達の姿を微笑ましく見ながら、母が質問する。
「Lvは20に上がったけど、俺は全ての常識がひっくり返ったような気分だ」
そう言う雅人に同意するよう、うんうんと頷く遥斗が、
「沙良お姉ちゃんは最強だね!」
私の事を持ち上げてくれた。
まぁ、嬉しいわ! 姉としての面目躍如ね!
母はそれを聞き、苦笑していたけど……。
午後からは本格的にLv上げをしよう。
基礎値が15しかない2人は、HPとMPが低い。
HP値とMP値を上げる飴もあるけど、1ヶ月後に冒険者になるならLvを最大限まで引き上げたほうが早い。
幸い、アイテムBOXにはLv上げに最適な恐竜の魔物が沢山入っているのだ。
どれくらい上がるか検証しておこう。
「お母さんも魔物をテイムしてるんだよね? どんな魔物なの?」
食後、お茶を飲みながら遥斗が好奇心いっぱいの様子で母に尋ねた。
2人は、まだ母の従魔を見ていなかったな。
「シルバーウルフのボブと、プロテクト・ゴリラのピンキーよ」
「名前がボブとピンキー?」
「それよりゴリラをテイムしたの?」
母がテイムした従魔を教えると、双子達がその名前と魔物に驚いた声を上げる。
ネーミングセンスは人の事を言えないけど、流石にゴリラをテイムしたいとは思わない。
母は畑仕事を手伝ってもらうために、両手が使える魔物が欲しかったみたいだけど……。
「呼んであげるわ。ボブ、ピンキー!」
リビングの窓を開け、母が従魔の名を呼ぶと2匹が顔を出す。
直ぐに現れたので近くに居たようだ。
「ショキングピンクのゴリラ!?」
遥斗がピンキーを見て、その体毛に目を瞬かせ叫ぶと、
「予想外すぎる……」
雅人は額に手をやり、小さく呟いた。
「遥斗、俺達は騎乗出来る魔物にしよう」
「うん、グリフォンなんかいいよね!」
「グリフォンは格好いいけど、ダンジョン内を移動するには不向きよ」
鳥系魔物は森のダンジョンなら活躍の場がありそうだけど、迷路状の階層では騎乗出来ないだろう。
遥斗の意見に口を挟み、考え直させる事にした。
「そっか……、じゃあもう少し考えてみる」
私の意見を聞いて悩み出す双子達を連れ出し、グラウンドに移動する。
「ドレインの魔法を最初に唱えて、魔物を昏倒させてから安全に倒してね」
午前中出した魔物は魔法を習得させるためだったので、それ程Lvが高くない。
一気にLvを上げるには、高Lvの魔物のほうがいい。
ちまちま段階を踏んでいる時間が惜しいので、摩天楼のダンジョンに出現する魔物を出そう。
「魔物を出すわよ」
私はサイクロプスを出して、2人が倒す様子を後方から見守る。
「姉さん! 魔物の選別基準がおかしいよ!」
「ドレイン!!」
サイクロプスを見た雅人が絶叫している間に、遥斗が慌ててドレインを唱えていた。
しかし、魔物が倒れない。それを見た雅人も続いて、
「ドレイン!」
魔法を掛けたけど、Lv20で基礎値15のMP値ではサイクロプスのHPを0に出来ないらしい。
これは想定外だった。
私はドレインを習得した時、既にMP値が1,000を超えていたから効果が高く、ドレイン魔法がLv0でも倒れない魔物は居なかったんだよね。
「沙良お姉ちゃん、魔法が効いてないみたいだけど!?」
HPを奪われたサイクロプスが、2人を標的にしてノシノシと歩き出す。
さて困ったな……、ここで私がドレインを使用すると経験値が双子達に入らなくなるかも知れない。
「足を切断して動けなくすればいいわ! 茜が最初に倒した魔物だから、2人でもいける筈よ」
「茜ちゃんと一緒にしないで!!」
「俺達は一般人だ!」
双子達は、そう言いながらも私の指示通り果敢に挑み、サイクロプスの両脇へ移動して膝から下を剣で薙ぎ払う。
両足を失ったサイクロプスが地面にドオッと音を立てて倒れた隙に、首を切断した。
おっ、討伐完了ね。
2人共、肩で大きく息を吐き、その場で座り込んでしまった。
「お疲れ~、ちゃんと倒せたじゃない」
魔物の死骸をアイテムBOXに収納し、傍に近付いて声を掛けると彼らから恨めし気な目を向けられた。
「何で魔法が効かなかったんだ?」
私をじっとりと見つめたまま、雅人が疑問を口に出す。
「ええっと、MP値が低くて効果が薄かったみたい? 私は基礎値が48あるから、魔物が昏倒しなかった事がないんだよね~」
「何それ! 俺達の3倍もあるじゃん!! もう死ぬかと思った~」
愚痴を言う遥斗の肩をポンポン叩き、
「ごめん、ごめん。でも、茜はLv0で武器もなく倒したのよ?」
謝ったあと、妹の実績を伝えてみた。
「茜は格闘技の専門家だろう。師範の免許も持ってるし、魔物でも簡単に倒せそうだ」
「でもLv0で武器もないままサイクロプスを倒すなんて……、茜ちゃんは、やっぱり強いよ」
あまり参考にならなかったみたいだけど……。
「それより、ステータスを確認してみて。かなりLvが上がったと思う」
「あっ、Lv55になってる!」
遥斗がステータスを見て、はしゃいだ声を出した。
Lvが上がるのは嬉しいんだろう。
50を超えたので、何か恩恵があるかも知れない。
「通信魔法の能力に変化はない?」
すると2人は私に見えないステータス画面を指で操作し、表示された文章を読み出した。
「不可視の電波塔を1か所設置出来るみたい。これを異世界に設置すれば、スマホとPCが繋がるかも?」
遥斗の予想を聞いて思わず手を叩く。
「あとで実験してみましょ! はい、立って。次の魔物を出すわよ」
Lv100になったら、設置出来る数が増えるかしら?
双子達が立ち上がるのを待って島に居た魔物を出す。
手っ取り早くLv上げをするために収納したのだ。ここで出さない手はない。
前方に出現したティラノサウルスを見て、双子達の顔に恐怖が浮かんだ。
「「だから、魔物の選択基準がおかしいって!!」」
「大丈夫、よく切れる剣があるでしょう? 首を切断すれば死ぬから」
「「そういう問題じゃない!」」
揃って悲鳴を上げる2人へ、励ましの声を掛けてあげたのに反論されてしまった。
勿論、私だって何もしないわけじゃない。
双子達の周囲に、こっそり結界魔法を掛けてある。
まだLvは低いけど、最初の攻撃くらいは防げるだろう……多分。
「くそっ、遥斗。さっきと同じ方法で行くぞ!」
「了解!」
Lv50になってHP値が高くなり、素早さも上がったのか2人の動きが格段に良くなったのが分かる。
しかしティラノサウルスは、こうして間近で見ると迫力があるなぁ~。
シルバーも警戒して私の傍から離れない。
のんびり構えて見ている間に、遥斗が片足を切断してティラノサウルスが横倒しに倒れ込む寸前、雅人が首をスパッと飛ばした。
連携が上手く取れているわね。双子だから息が合うのかしら?
「姉さん! もっと出す魔物を考えてくれ!」
死骸を回収しに行くと、雅人に怒鳴られる。
「あら、簡単にLv上げ出来るようにしてあげたのよ?」
「強い魔物を出せばいいってもんじゃない!」
弱い魔物を出したらLvが上がらないのに……、解せぬ。
「沙良お姉ちゃんが怖い……」
首を傾げていると、遥斗が涙目になっている。
「Lv100になるまで、もう少し頑張りましょうね~」
優しく笑顔でにっこり言うと、ドン引きして後ずさる双子達の姿が目に映った。
数回でLv上げを終わらせようとしている姉の優しい気持ちは、理解出来ないようだ。
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