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椎名 賢也 121 迷宮都市 地下12階 ケリーさんの父親 2&1年経過

 その日の夜。沙良が親子水入らずの時間を作ってあげたいと、組み立てられたままのテントをケリーさんとハリスさんに提供していた。

 マジックバッグを圧迫する、組み立てられたままのテントを見て、アマンダさんのパーティーに苦笑されてしまったが……。

 沙良のアイテムBOXに入っているので、テントが組み立てられた状態でも問題ない。

 そうとは言えないため、俺達は面倒くさがり屋だと思われていそうだ。


 その後4日間、沙良が毎日コカトリスの卵を追い求め、俺はランダムに生る桃を全て採取した。

 沙良は夕食の時間にダンクさんからケリーさんの話を聞き出したらしく、俺達にも教えてくれた。


「ケリーさんは当時10歳で、半年に1度帰ってくる父親の顔をよく覚えてなかったそうだよ」


 異世界には写真のような姿が残るものがない。

 貴族でもなければ、肖像画など描いてもらわないだろう。

 毎日会っていたならともかく半年に1度じゃ、20年後に覚えている(はず)ないよな。


「それでね、ケリーさんの母親は夫は亡くなったと(あきら)めて再婚したらしいの。再婚相手の間に娘が生まれて、家に居辛くなったケリーさんは冒険者になって家を出たみたい。テントで確認した時は本当に父親だと気付かず、あとで知って泣いたんだって。あの日の夜は、お互い再会を喜んで色々と話をしたようだよ」


 ダンクさんのように父親の年齢を超える事はなかったが、自分と年の変わらぬ息子を見てハリスさんも複雑だっただろう。


「でも、再会出来て良かったよね!」


 沙良はそう言い、笑顔で話を締めくくった。

 確かに会えないよりは再会が叶ったのだから喜ぶべきだ。

 

「そうだな」


 妹に同意して自分達の事を思う。亡くなったと思っていた2人に異世界で会えた俺は幸せだ。

 この奇跡のような再会に感謝しなくては……。


 ダンジョンから出て冒険者ギルドで換金を済ませた金曜日。

 ホームへ戻り、沙良に居酒屋へ送ってもらう。

 

「ケリーさんは父親と会えて良かったよね。俺、この世界に(しずく)が転生していると期待してもいいかな……」


 やけにしんみりした口調で旭がぽつりと言う。

 16歳の若さで天に召されてしまった妹の事を、彼が口にするのは珍しい。

 俺は黙ったまま話を聞いてやる。


「ほら、日本で死んだ俺もダンジョンマスターとして生きてたでしょ? このダンジョンには雫が好きな果物が生るし、もしかしたら同じようにダンジョンマスターになっていないかと思って……」


 そうか……。ずっと雫ちゃんが、この世界に居る可能性を考えていたんだな。

 亡くなったと思っていた沙良が異世界にいたんだ。そう考えるのも無理はない。 


「旭……雫ちゃんが、この世界に居るといいな」


 俺は彼の想いを否定せず、希望を持つよう言葉を添えた。

 あぁ可愛がっていた妹の雫ちゃんと、どうか旭が会えますように……。

 ただ、ダンジョンマスターの線はないんじゃないかと思ったが……。

 出来れば健康な体で元気に生きていてほしい。

 沙良が迎えに来るまで、俺達は雫ちゃんとの思い出話をして、いつもより酒を飲み酔い潰れた旭を背負い家に帰った。


 土曜日。

 起きたら、沙良は異世界へ果物を卸しに行って居なかった。

 用意されていた朝食を食べ、二日酔いの旭を引きずってジムへ向かう。

 

「うえ~気持ち悪い」


 アップライトバイクに(またが)り、のろのろとペダルを()ぐ旭の顔色は悪い。

 昨日飲み過ぎていたから自業自得だろうと、俺はスルーして黙々と筋トレに(はげ)んだ。

 一通り機械を回り、最後にランニングマシンをする頃、旭が復活したようで隣に並ぶ。

 おいっ、本当に走って大丈夫か? 吐くなよ?

 いつもよりスローペースに設定したのか、旭はゆっくり走り出す。


 30分後、ジムを後にした俺達は蕎麦(そば)を食べに行った。

 あまり食欲がないという旭は、ざる蕎麦だけを頼み、そばつゆを飲んで(ようや)く落ち着いたらしい。

 俺は普通に天ざるの大盛を食べて、お腹を満たした。


 どこにも寄らず家に帰ると、沙良がまだ戻っていない。またシルバーと遊んでいるのか。

 昼寝をすると自室へ行く旭に手を振り、暇な俺は最新の医療雑誌を買いに本屋へ行った。

 新しい医療の知識を知る事は大切だ。

 以前はマイボトルを持ち込みタダ読みしていたが、お小遣いが増えてからは購入している。

 妹が病気になっても困らないよう、専門外の雑誌を買い求めた。

 怪我を治療出来るヒールは万能じゃない。病気を治せる魔法もあれば良かったんだが……。

 今のところ俺達は風邪も引かず過ごしているが、これはLvが上がり体力がついた所為(せい)だろうか? 


 夕方に沙良が戻り、夕食が出来たと呼びに来る。

 メニューはハヤシライス、ポテトサラダ、蟹クリームコロッケ、南瓜(かぼちゃ)のポタージュ。

 昼食を少なめにした旭がお代わりしていた。

 

「シルバーとフリスビー投げをして、かぐや姫の話を聞かせてあげたのよ」


 機嫌よく報告する沙良の声を聞いて、また童話を話したのかと首を(かし)げる。

 魔物に童話を話す意味が、さっぱり理解出来ない。何か意図があるのか?

 本人は楽しそうにしているが、シルバーはどう思っているんだろう。

 蟹クリームコロッケを食べて火傷しそうになり、(あわ)てて水を飲む。

 入っていた蟹の身は、アパートの住民の部屋にあった缶詰を使用したんだな。

 美味しいが火傷に要注意だ。

 そう思っていると、旭が蟹クリームコロッケを食べて「火傷した~」と叫んでいる。

 沙良は笑って「丸ごと食べるからだよ」と、水を差し出す。

 旭はヒールを自分に掛ければ済むのを忘れているようだ。

 

 2人の()り取りを見ながら、迷宮都市に来て1年が過ぎた事を思う。

 書き出したステータスはこちらだ。


【リーシャ・ハンフリー 19歳】

 レベル 28

 HP 1,392

 MP 1,392

 魔法 時空魔法(ホームLv28・アイテムBOX・マッピングLv28・召喚)

 魔法 火魔法(ファイアーボールLv10、ファイアーアローLv10)

 魔法 水魔法(ウォーターボールLv10、ウォーターアローLv1)

 魔法 土魔法(アースボールLv10、アースアローLv1、アースニードルLv1)

 魔法 風魔法(ウィンドボールLv10、ウィンドアローLv1)

 魔法 氷魔法(アイスボールLv1、アイスニードルLv1)

 魔法 雷魔法(サンダーボールLv1、サンダーアローLv10)

 魔法 闇魔法(ドレインLv5)

 魔法 石化魔法(石化Lv6)

 魔法 魅惑魔法(魅惑Lv0)

 魔法 魅了魔法(魅了Lv1)

 魔法 テイム魔法(テイムLv2) 

 現在テイム中 シルバーウルフ(雄)1匹 

 名前シルバー 消費MP120

 ※シルバーウルフから、ゴールデンウルフに進化中


椎名しいな 賢也けんや 21歳】

 レベル 28

 HP 1,450

 MP 1,450

 魔法 光魔法(ヒールLv10・ホーリーLv10・ライトボールLv10)

 魔法 火魔法(ファイアーボールLv10、ファイアーアローLv10)

 魔法 水魔法(ウォーターボールLv10、ウォーターアローLv3)

 魔法 土魔法(アースボールLv10、アースアローLv3、アースニードルLv3)

 魔法 風魔法(ウィンドボールLv10、ウィンドアローLv3)

 魔法 氷魔法(アイスボールLv3、アイスニードルLv3)

 魔法 雷魔法(サンダーボールLv3、サンダーアローLv10)

 魔法 闇魔法(ドレインLv1)

 魔法 石化魔法(石化Lv5)

 魔法 魅惑魔法(魅惑Lv0)


あさひ 尚人なおと 21歳】

 レベル 28

 HP 1,305

 MP 1,305

 魔法 時空魔法(アイテムBOX)

 魔法 光魔法(ヒールLv7・ホーリーLv10・ライトボールLv10)

 魔法 火魔法(ファイアーボールLv10、ファイアーアローLv10)

 魔法 水魔法(ウォーターボールLv10、ウォーターアローLv3)

 魔法 土魔法(アースボールLv10、アースアローLv3、アースニードルLv3)

 魔法 風魔法(ウィンドボールLv10、ウィンドアローLv3)

 魔法 氷魔法(アイスボールLv3、アイスニードルLv3)

 魔法 雷魔法(サンダーボールLv3、サンダーアローLv10)

 魔法 闇魔法(ドレインLv1)

 魔法 石化魔法(石化Lv10)

 魔法 魅惑魔法(魅惑Lv0)


 全員がLv28に上がり、俺と旭は21歳になった。

 仲良くなれた冒険者達も多く、特にダンクさんとアマンダさんには気に掛けてもらっている。

 幼い姿のままの妹を心配しているのか、アマンダさんは沙良をよく構っていた。

 彼らとの交流があるおかげで、魔物に関しての情報も手に入る。

 Lv30になるまであと6ヶ月。願わくば、何事もなく無事に過ぎてくれるといい。

 俺のPCのDATAは残っているだろうか……?

評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。

読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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