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椎名 賢也 116 迷宮都市 地下12階 石化した冒険者達 3

誤字脱字等を修正していますが、内容に変更はありません。

 20年後に目覚めたなら、成長した息子の顔を見ても分からないのも無理はない。

 彼らは時間が経過したと知らないからな。


「俺達に自分より年上の息子がいるわけないだろ! 息子のダンクは、まだ20歳だ!」


「いやだから、俺の顔をよく見ろって。親父達がダンジョンから帰還しないまま20年経ってるんだよ!」


「はぁ? 何をわけの分からない事を言ってるんだ」


「ちょっと顔をよく見せてちょうだい」


 ダンクさんが必死に言い募る姿に感じるものがあったのか、母親が彼に近付き顔をまじまじと見て考え込む。


「う~ん、息子に似てるような?」


「あぁそうだ、俺が息子だって分かる話がある。親父ごめん。俺が15歳の時、初めて王都へ連れて行ってくれたよな。母さんには内緒だって、綺麗な女性達がいたあの高級店(・・・)、店の名前は確か『蝶……』」


「お前、それ以上言うな!」


 ダンクさんが、父親に分かるようにと話し出した内容が(ひど)い。

 彼はすかさず父親に口を(ふさ)がれ、押し黙った。

 しかし話を聞いていた母親の形相(ぎょうそう)が、見る見るうちに怒りを(たた)えたものへと変化していく。

 あ~、ダンクさん。よりによって、夜の店に行った話はないだろう。

 もっと穏便に息子だと証明出来る話はなかったのか?

 一触即発の緊張感が(ただよ)うなか、旭はせっせと他のメンバーを治療していた。

 沙良は夫婦喧嘩が勃発(ぼっぱつ)しそうな状況を見て、やれやれと首を振っている。


「ちょっといいですか? 事情を説明したいんですけど……」


 このままじゃ話が進まないと思ったのか、沙良が手を挙げて発言し出した。

 迷宮都市ダンジョンの地下12階に石化した状態で6人が見付かり、既に20年が経っている事や兄達が治療した件を知られたくないと説明している間に、他の4人も目覚めて両親のもとに集まってくる。

 リーダーのダンクさんの父親へ、自分達に何が起こったのか問い詰めていた。

 彼らの話をまとめると、20年間意識がなく最後に覚えているのは、コカトリス討伐中に治癒術師だったダンクさんの母親が石化されて、守ろうとした場面だったようだ。

 全員が石化の治療を誰がしたのか秘密にすると約束してくれたので、俺達はダンクさんの家を後にした。

 部外者が居ては話し(にく)いだろう。

 それに1年や2年ならともかく、20年経っているという事実を簡単に受け入れるのは難しい。

 彼らにとって生き返った事は、嬉しいだけじゃないかも知れない。

 死んだと思っている家族との関係を考えると、一波乱ありそうな気がした。


 家に帰った時間が遅かったので、沙良は直ぐに食べられる出来合いの弁当をアイテムBOXから取り出した。

 治療で疲れていた俺と旭も今夜は飲みに行かず、大人しく家で出された弁当を食べる。

 つい先ほど交わされた、ダンクさん親子の会話を思い出して苦笑した。

 石化されていた20年で、自分より年上になった息子か……。

 俺の場合、沙良の年齢に合わせた召喚だったので妹との年齢差は同じだが、両親が自分より年下だったら複雑な心境になっただろうか?

 何にせよ、ダンクさんの家族は時間が経てば年齢差にも違和感を覚えなくなるんじゃないかと思う。

 沙良みたいに別人になったわけじゃないんだからな。

 20年離れていたといっても、息子は成人していたんだから子育ての期間は終わっている。

 あとは、ダンクさんが出来なかった親孝行をこれからすればいい。

 そんな事を思いながら、自室に帰って就寝した。


 土曜日。

 奏屋(かなでや)へ果物を卸しに行く沙良を見送り、旭とジムに向かう。

 2人で2時間ほど汗を流し、シャワーを浴びて喫茶店に入った。

 飲み物がセットになった生姜(しょうが)焼き定食を選び、食後のコーヒーを飲んでいると、


「ダンクさんの両親達を治療出来て良かったね~」


 ミックスフライ定食を食べ終えた旭が、笑顔で嬉しそうに会話を始める。


「ああ、そうだな。いい事ばかりじゃないとは思うが、生きていればやり直しも利くだろう」


「それって、どういう意味?」


 考えが及ばないのか、旭がきょとんとした顔で(たず)ねてきた。


「20年間、夫が死んだと思っていた妻や子供が素直に受け入れられるか? もしかしたら、再婚している可能性だってあるんだぞ?」


「それは……思いもしなかった。そっか、奧さんが再婚しているかも知れないよね」


「シングルマザーで子育て出来るほど、異世界は甘くない。肉うどん店の母親達を見れば分かるだろう」


 そう断言すると、旭はしょんぼりしてしまった。


「助けないほうが良かったのかな……」


「いや、少なくともダンクさんは感謝しているだろう。俺が言ったのは極端な例だ。あまり気にするな」


「うん……分かった」


 それから家に帰ってからも旭は気分が落ち込んだまま、どこか上の空で過ごしていた。

 洗濯を(たた)んでいる間も、ぼ~としており、パンツが裏返しになっている。

 俺は無言でソレを畳み直し、衣装ダンスに仕舞(しま)った。

 沙良が帰ってくる頃には、元気な顔を見せ夕食のメニューを聞いていたが……。

 優しい旭に、余計な事を言ってしまったと少し反省した。


 月曜日。

 地下12階の安全地帯に行くと、ダンクさんのパーティーも居た。

 両親と再会出来たばかりだが、クランリーダーの彼が攻略を中止するわけにはいかないんだろう。

 土・日で、充分な話し合いが出来たんだろうか。

 リーダー達と挨拶を交わす沙良を待ってから、安全地帯を出て桃を探しに行く。

 感覚を頼りに方角を決めた先には桃の生る木があった。

 全ての桃を採取したあと、みかんの木を探し続けて採取を行う。

 

 3時間後、ホームに戻り昼食を取る。

 お弁当を開けると、ニラ玉・酢豚・炒飯(チャーハン)が入っていた。

 ワカメと春雨(はるさめ)の中華スープを飲み、食後にウーロン茶で口をさっぱりさせる。

 腹ごしらえを済ませたら午後から攻略だ。

 コカトリスの卵が欲しい沙良に付き合い、キングとクイーンがいる場所へ向かう。

 2匹の魔物は沙良がドレインで昏倒させてから、槍で突き刺していた。

 毎回(とど)めに魔法を使用しないのは、何か意味があるんだろうか?

 動かない敵に対して槍を使っても、上達しないと思うのは俺だけか?

 巣から卵を回収した沙良は午前中に倒した魔物を出して、魔石取りをする俺と旭の周囲を警戒していた。

 といっても魔物にはある程度テリトリーがあるのか、コカトリスが居た周辺には他の魔物が近付かないんだがな。

 ちなみにダンジョン内の魔物は、魔石を取ると体を維持出来ず1日経つと消える。

 ダンジョンの外に持ち出せば体は消えずに残るそうだ。

 魔石しか換金出来ない魔物は、ダンジョンが吸収しているのか?

 魔石を取り出さずに魔物を放置した事がないから、その場合どうなるかは不明だが……。

 試そうとしても沙良が勿体(もったい)ないと言って、させてくれないだろう。


 2回の攻略を終えて安全地帯に戻り、沙良が夕食の準備を始める。

 今夜のメニューは焼肉、チーズフォンデュ、ナンだ。

 7パーティーの冒険者達は、相変わらずバーベキューをするらしい。

 焼肉をナンに挟んで食べると意外と美味しい。これは、ありだな。

 旭も気に入ったのか、早速ナンをお代わりしている。

 そして食後に沙良がデザートの桃を出すと、冒険者の悲鳴が先週より多く上がった。

 オッズが変化して、大穴を狙った冒険者が増えたのか?

 典型的な負け方だな……。

 そんな中、集金を終えたアマンダさんが桃を食べに来る。

 ニヤリと不敵そうな笑みを浮かべているのは、誰かを()めたためだろうか。

 勝ち続けている彼女のパーティーメンバーも、笑いが(こら)えきれず笑みを浮かべていた。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。

これからもよろしくお願いします。

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