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椎名 賢也 115 迷宮都市 地下12階 石化した冒険者達 2

誤字脱字等を修正していますが、内容に変更はありません。

 仲が良いダンクさんの両親なら、助けてやりたい。

 それに、彼ならば誰が治療したか秘密にしてくれるだろう。

 テントに戻るなり、俺は妹に提案するため口を開く。


「沙良。もしもの話なんだが、石化した状態から治療出来たとしたらどうする? その場合、俺達はかなり目立つと思うが……」


「え? 治せるの?」


 治療出来るかも知れないと聞かされた沙良が、表情を変え詰め寄ってきた。


「やってみないと分からんが、部分的な石化は治せるから可能性がないわけじゃない」

 

「だったら、試してあげて!」


「いいのか? バレたら周りが騒がしくなるかも知れないぞ?」


「そんな事より、ダンクさんのご両親が生き返る事のほうが重要だよ!」


「分かった、なるべく内密にやろう。ダンクさんには俺から話す」


「ありがとう。もし治療出来たらダンクさん(すご)く喜ぶと思う」

 

「治療出来たらな。そろそろ俺達も何か食べよう」


 助かるかも知れないと期待している妹に、可能性があるとだけ言い(さと)して昼食を食べてない事を思い出させる。

 (ようや)く気付いた沙良がホームに移動した。

 コーン入りの卵焼き、アスパラのベーコン巻き、肉団子、小松菜の煮浸(にびた)しが入った弁当を食べ、しじみの味噌汁を飲んで一息吐く。

 甘酸っぱいタレを絡めた肉団子の味に相好(そうごう)を崩し、(はし)休めの小松菜に口をつける。

 弁当の味に飽きないよう、毎日おかずを考えてくれている妹に感謝しよう。

 

 食事を済ませ、俺はダンクさんが居るテント前に向かった。


「少し話があるんだが、二人で話せないか?」


「ああ。お前達、俺は少し席を外す」


 ダンクさんはメンバーにそう伝えて腰を上げ、テントへ移動する。

 食事中に悪いな。

 あとに続いた俺は、魔石に血液を登録して中へ入った。

 テント内には6人分の寝袋と荷物が片隅に整理され、置かれていた。

 もっと雑然としていると思っていたが、意外と綺麗な状態に感心する。

 俺達のテントはホームに行くためのダミー用だから、何もないが……。

 

「ダンクさん。石化された冒険者達を、もしかしたら俺と旭が治療出来るかも知れない。全身の場合は経験がないが、もし助けられたら誰が治療したか秘密にしてほしいんだ。その条件を呑んでくれるなら治療を試してみるが、どうする?」


 俺から予想外の提案を聞かされたダンクさんが、一瞬ぽかんとなったあと勢いよく両手を握り締めてきた。


「頼む! ダメ元でいいから試してくれ! 勿論(もちろん)、治療した人間の情報は死んでも言わない!!」


 (すが)りつくように必死で言い募る彼の肩を叩き、


「あまり期待はしないでくれ」


 治療出来ない可能性も示唆(しさ)しておいた。

 俺と旭の事を秘密にしてもらえるなら、治療するのに何も問題はない。


「試すのは金曜の夜でいいか?」


「あぁ、俺は両親が建てた一軒家に住んでいるから場所はそこでいいだろう」


 治療日と場所を決めて、明日地上に帰還するというダンクさんと別れた。

 攻略を始める前にダンクさんとした話を2人に伝えると、沙良は安心したのか胸に手を当てている。

 その後、何か気になった事でもあるように考え込んでいた。

 ダンクさんが1人で、どんな家に住んでいるのが気になるのか?

 それとも、両親の年齢が気になっているのか……。

 どちらにせよ、金曜日には分かるだろう。


 2回目の攻略を終えて安全地帯に戻ると、沙良がミルフィーユ鍋を作り出す。

 白菜が沢山入っているので野菜は多く食べられるんだが、いまいち腹に溜まらないんだよな。

 ポン酢で食べる、さっぱり鍋も嫌いじゃない。だが主食が欲しい。

 ダンクさんのパーティーは夕食を別の場所で取ったみたいで、6パーティーと共に食べる。

 冒険者達はバーベキューに(はま)っているのか、今夜もバーベキュー台の上で肉や野菜を焼いていた。

 沙良がデザートの桃を出すと、先週より幾分か悲鳴が減ったような気がする。

 そろそろ、桃を見付けるほうに賭ける冒険者が増えてきたんだろう。

 集金を終えたアマンダさんが、いつものように沙良の隣に座り、切られた桃を()まみ出す。

 もうリーダーの素行には(あき)めたのか、メンバー達が頭を下げていた。


「鍋の締めは、雑炊とうどんのどっちがいい?」


 ホームに戻ると沙良から聞かれて旭が間髪容れずに、


「オムライスがいい!」


 返事を返す。

 沙良は驚いた顔をしながらも旭の希望通り、オムライスを作ってくれた。

 鍋の締めにはなってないが、俺達の腹は(ふく)れて満足だ。

 余分な手間が掛かった分、ダンジョンでミルフィーユ鍋はもう作らないかも知れないな。

 妹は1人前のオムライスは食べられないと言い、アイスを取り出していた。


 翌日、火曜日。

 石化した冒険者達をマジックバッグに入れ、地上へ帰還するダンクさん達を見送る。

 もしかすると昨晩、ダンクさんは両親が寝かされているテントで一緒に寝たのかもな。

 20年も行方不明のままなら、生きてはいないと思っていたかも知れないが、実際に姿を目にして実感するのとは違う。辛かっただろう。

 そんな彼の願いが叶えられるよう、金曜日は全力で治療をしなければ……。

 それから、沙良が薬草採取中に倒した魔物を出すのを忘れる事もなく、順調に攻略を終えた。


 金曜日。冒険者ギルドで換金後、教えられたダンクさんの家に向かう。

 到着して見たのは結構大きな家だった。

 周囲には同じような一軒家が立ち並び、比較的裕福そうな地区にある。

 ダンクさんの両親は若そうだが、冒険者として一流だったのか?

 沙良が呼び鈴を押すとダンクさんが玄関を開け、中に入れてくれた。

 月に数日しか家に戻らないためか、あまり生活感がないように見える。

 そわそわとして落ち着かない様子のダンクさんは、両親とメンバーが居る部屋に案内すると、じっとして動かない。


 俺と旭は、毛布の上に寝かされていた両親から先に治療を始めた。

 俺は母親のほうを担当し、石化された体に触れてヒールを掛けていく。

 手が触れた部分から徐々に肌色の状態が広がるのを見て、これならいけそうだと確信を持つ。

 石化された細胞は生きている。

 全身を一気に戻せば、心臓や脳にダメージを与えず生き返るだろう。

 隣で治療中の旭と顔を見合わせ、予想通りだと(うなず)いてやる。

 それから大した時間も掛けず、全身の治療を終えた。

 石化の状態から回復していくのを見ていたダンクさんが(そば)に来て膝を突き、母親の両目が開かれると、感極まり抱き締めていた。

 あぁ、助けられて良かった。

 涙を流しながら柔らかいその体の感触を確かめるように、ぎゅっと抱いている。 

 そんな2人の姿に、俺もつい目が(うる)みそうになった。


「え? ちょっと、あなた誰? この変態! 寝てる間に何しようとしてるの!」 

  

 思いっきり母親に平手打ちされたダンクさんが頬を押さえて、(あせ)った声を出す。


「俺だよ、息子のダンクだって!」

  

 母親に続いて目を覚ました父親は、起きて直ぐ妻を抱き締めていた不審者を見て剣呑(けんのん)な表情になっていた。

 どうやら、感動的な再会とは程遠い展開になりそうだ。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

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