椎名 賢也 104 迷宮都市 地下12階 『白銀の剣』との接触?
誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。
沙良がアマンダさんに食べられた桃の追加を急いで剥きながら、
「そういえば、今日エンダさんのパーティーをこの階層で見掛けました」
エンダのパーティーが地下12階に来ていた報告をする。
「何だって? あいつらは地下10階を拠点にしていたんじゃなかったのか?」
まだ知らなかったらしいダンクさんが、声を上げて眉間に皺を寄せた。
「ちょっと気になるね。証拠があるわけじゃないが、あいつらが来た時と地下10階でシルバーウルフが大量発生した時期が重なっている。正直、関わりたくない連中だ。もしあたしらに接触しようとしてるなら、避けるのが一番だ。皆、こっちに来たら即撤収だよ!」
アマンダさんが冒険者達に声を掛けて方針を伝えると、リーダー達が頷き、
「はい! 見掛けた瞬間、撤収ですね!」
彼女の言葉を聞いた沙良は元気よく答えた。
よしよし、俺が何も言わずともエンダのパーティーを避ける方向で決まったな。
内心で安堵し、皿に追加された桃を摘まんで口に入れる。
果物だけは豊富にあるから、ダンジョン内の食事も何とか耐えられるんだよ。
沙良が配ったみかんを冒険者が食べ終える頃、問題のエンダ達が安全地帯に入ってきたのが見えた。
しかも、真っ直ぐにこちらへ向かってきている。
「皆、分かってるね!」
アマンダさんの掛け声を合図に、沙良は調理器具などを全てアイテムBOXに収納してテントへ駆け出す。
一緒にいた7パーティーは、バーベキュー台を残したまま撤収した。
マジックテントを購入して正解だった。
魔石に登録されていない者は入ってこれないので、テントから出ない限りエンダ達とは会わないだろう。
そのままホームに戻り、沙良の家で対策を話し合う事にした。
「やっぱり来たね。接触するのは安全地帯だと思ってた」
マッピングで彼らを見掛けてから、沙良は予想していたらしい。
「流石に攻略中の接触は厳禁だろ。連中、近くにテントを張ってなきゃいいけど」
俺達の態度を見たら、歓迎されてないと分かる筈だが……。
「あそこまで無視したら、諦めるんじゃない?」
希望的観測を述べた旭に沙良は首を横に振る。
「だといいね。明日の朝、私達のテント前に居たら攻略を中止するよ」
テントからホームへ帰れる俺達は、ずっとテント内に篭っている振りをすればいい。
食事もトイレも困らないしな。
翌日、沙良だけがテント内に移動して様子を見に行った。
「やっぱり近くにテントを張っていたよ。7パーティーはバーベキュー台を回収したらしくて、テントからは出てないみたい」
帰ってきた沙良が状況を教えてくれる。
わざわざ拠点を移動してきたくらいだ。
そう簡単に諦めないと思っていたが、ずっとテントの前で張り込みする心算なのか?
俺達はいいとしても、安全地帯で食事が取れない冒険者達はストレスが溜まりそうだ。
「ダンジョンの攻略は出来ないけど、毎日生る桃が勿体ないなぁ~。移転して桃だけ採りに行かない?」
沙良がテントから出ず、直接桃の木の傍に移転しようと提案してきた。
「見付ける楽しみはないが、せっかく生っているんだし採りに行くか」
沙良の提案に賛同し、冒険者の服に着替えて桃が生っている木の近くに移動する。
俺が桃の採取をしている間、沙良と旭は近くに生っているみかんを採っていた。
本当は全て採りたいんだろう。
沙良の気持ちを汲み、俺がのんびりと桃を採っていると妹の姿が消えた。
人がいない場所に生っているみかんを、マッピングで調べ採りに行ったらしい。
隣にいた沙良が突然消えた事に気付いた旭が、俺を見て苦笑する。
同じ理由に思い至り、暫くは帰って来ないと踏んだのか魔力草を取り始めた。
案の定、姿を消した沙良がニコニコしながら戻ってきたのは1時間後だった。
暇になった時間で、俺も久し振りに薬草採取をしたがな。
ホームに戻ると、沙良が昼食の準備を始める。
今日は最初から攻略が出来ないと思い、弁当を作らなかったそうだ。
料理が出来るまで、俺と旭は久し振りに将棋を指した。
俺達の父親は大学で囲碁クラブに入っていたが、将棋も嗜んでいたので子供の頃から付き合わされ、しっかりと仕込まれた。
それは旭も同様で囲碁も将棋も指せる。
お互いの力量をいえば俺のほうが上だったが、相手をする時に多少手を抜けば楽しめた。
今も旭と勝負になるよう飛車落ちにしている。
盤面を睨み付けうんうん唸っている旭を横目に、今後の展開を予想した。
こりゃ俺の勝ちだな。
勝敗が着く前に昼食が出来たと沙良が呼びに来た。
すると、旭は盤面の駒を崩してから席を立つ。
素直に負けを認めればいいものを……。
「コカトリス・キングを使った親子丼だよ~」
「いただきます!」
大盛の丼に箸を付けて、旭が早速口に入れる。
「う~ん、このトロトロの卵が美味しい!」
妹の料理が食べられるだけで嬉しい旭が笑みを崩す。
俺は大根と揚げの味噌汁から飲んで、親子丼を食べ始めた。
魔物肉は地鶏のような味がするから、本当に侮れない。
これがダンジョンで狩り放題なんて美味い話だ。
午後から時間が出来たので、旭とジムに向かう。
俺達が外科医時代に通っていたホテルの会員制高級フィットネスクラブとは設備に雲泥の差があるが、金がないため贅沢は言えない。
妹にほんの少し期待を込めて会員になりたいと言ってみたが、入会金と年間費を合わせて130万円かかると知った途端、顔色を変えて断られた。
俺のマンションがホームに設定出来たら、会員証が有効かどうか調べないとな。
口座引き落としになっていたし、多分使えると思うが……。
近所にある市営のジムで汗を流して家に帰ると、沙良がリビングから顔を出す。
「おかえりなさい。チーズナンを作ったから、今夜はカレーでいい?」
「ただいま。カレーか、いいな」
「沙良ちゃんのカレーは大好き!」
旭家のカレーに比べたら、誰が作ったカレーでも不味くはないだろう。
そう思ったが、賢明にも口に出さずにおいた。
そして夕食が出来るまで、旭が崩した将棋の駒の位置を再現し、続きを指す。
Lvが上がり記憶力が良くなった所為か、駒を全て覚えていたのだ。
全ての駒を置いて続きをしようと言ったら、旭は涙目になってしまった。
結果、俺が勝ったので次は角落ちで相手をしよう。
「出来たよ~」
テーブルには、大皿に海老がごろごろ入ったカレーとチーズナン、コーンサラダが並べてある。
海老カレーか……、美味しそうだ。
「いただきます!」
焼き立てのチーズナンを手でちぎり、とろけたチーズを零さないよう、急いで口に入れる。
異世界でチーズを購入したから、試しに作ってみたんだろう。
チーズ入りのナンはボリュームがあるから、腹が膨れそうだ。
ナンをカレーに付け、味わってみる。
海老の味が濃厚で、カレーに深みが出ている。
これがダンジョンで食べられたら、言う事はないんだが……。
「海老がプリプリだね~。チーズナンとよく合うよ」
既に半分も食べている旭が親指を立て、大絶賛している。
「お代わりもあるよ」
旭の食欲を見て沙良が声を掛けると、
「するする!」
すかさず残りを食べて、旭がお代わりを所望した。
今日も見事な食べっぷりを見せた旭が、食後に腹をさすっていたのは言うまでもない。
評価をして下さった方、ブックマークを登録して下さった方、いいねを押して下さった方。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて、大変励みになっています。
これからもよろしくお願いします。




