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椎名 賢也 102 迷宮都市 地下12階 宝くじの購入&チーズ発見

誤字脱字を修正していますが、内容に変更はありません。

 妹が店の扉を開けて入ってくるなり、


「ごめん、遅くなっちゃった!」


 謝っていたが、ほろ酔い気分でご機嫌な俺と旭は手を振って笑い返した。

 時計を見ると予定時刻より1時間が過ぎている。

 ちゃんと忘れず迎えに来てくれただけでも充分だ。


「旭、沙良が来たから帰るぞ」


「は~い」


 帰りは一瞬でアパートに到着するので、飲み過ぎを心配しなくてもいい。

 少し酔いを覚ましてから、熱いシャワーを浴びて就寝した。


 土曜日。

 旭とジムへ行った後、高額当選者が多く出る宝くじ売り場に向かう。

 人が居ない売り場には、電子パネルがぽつんと置かれていた。

 やっぱり狙うならバラより連番だよなと思い、3千円分を購入する。

 当選発表が楽しみだ! 

 

「一等が当たるといいね~」


 連番の宝くじを両手に()せ、祈るような仕草(しぐさ)をする旭を見て俺も願う。

 初めて買った宝くじだが、皆が期待して買う気持ちがよく分かった。

 金がないと切実に欲しいものなんだな。

 自宅へ戻ってから、宝くじは食器棚の一番上に置いた。

 どうか当たりますように……。


 日曜日。

 教会の炊き出し後、沙良が「炊き出しに並ばない子供達にも果物をあげたい」と言うので、肉うどん店に寄る。

 子供達にりんごとみかんをそれぞれ2個ずつ渡すと、嬉しそうにはしゃいでいた。

 更に桃を2個ずつ母親達に渡し、切り方を教えている。

 皿に並べられた桃を見て子供達の目が輝く。

 桃なんて今まで食べた事もないんだろうな。


「あま~い!」


 5人の子供達が一口食べて声を(そろ)える。

 その様子に満足したように、沙良は優しく微笑(ほほえ)んでいた。


「こんな高価な果物を沢山ありがとうございます」


 母親達は子供達を優先して桃に手を付けず、頭を下げた。

 

「ダンジョンで毎日採取出来るから、遠慮しないで食べて下さいね」


「えっ!? 毎日ですか!!」


 亡くなった夫が冒険者で、ダンジョンで採れる桃の存在を知っているらしい母親達が驚いたのか声を上げる。


「採っても翌日には、また生ってるから沢山あるのよ」


「すっ、(すご)いですね……」


 母親達が驚いた内容とは違う回答をした妹は、「ほら、食べて食べて」彼女達に食べるよう(うなが)していた。

 母親達が素直に桃を食べ始めると、


「教えてほしい事があるんだけど、バター、チーズ、牛乳、ベーコン、ウインナー、お米を売っている店を知らないかしら?」


 沙良は異世界で探しても見つからなかった食材の質問を始めた。

 母親達は顔を見合わせ首を(かし)げている。


「えっと……すみません。全て聞いた事がない品ばかりで……」


 それから母親の1人が、おずおずと返事をして申し訳なさそうな顔をした。


「あぁ、いいのよ。駄目元で聞いてみただけだから、気にしないでね」


 オーナーの役に立ちたいと思っている彼女達は、沙良がそう言ったのを聞きホッとした表情を浮かべる。

 今まで露店には置いてなかった食材だし、もし加工品があっても高いだろうな。

 庶民は口にした事がないかもしれない。沙良も返事を期待して聞いたわけじゃないだろう。

 

 店を出て自宅に戻った。


「商業ギルドのカマラさんが教えてくれた店に行ってみよう。高級な店だから、2人とも服を着替えてきて」


 妹は食材を探しに行きたいらしい。

 使用出来る食材が増えれば、ダンジョン内の食事改善にも(つな)がるかと了解した。

 冒険者の格好ではなく、商業ギルド用に購入した服に着替え再び異世界へ移動する。

 沙良はその上にシルバーウルフのマントを羽織(はお)り、ニコニコしていた。

 せっかく仕立てたのに着る機会がないとぼやいていたから、嬉しそうだな。

 俺と旭は恥ずかしいので普通のマントを着ていたが……。

 

 一緒に商品を探してくれと言われ、ばらけて店内を移動する。

 以前、小麦粉を探しに来た店だが、あの時は他の商品を見る時間がなかったから何があるか分からない。

 おっ、ワインが置いてある。

 俺は、つい食材よりも酒の方に目が行ってしまい数種類ある中で一番高いワインを手に取った。

 金貨1枚(100万円)か……、異世界の金は全て妹が管理してるから手元にないんだよな。

 買いたいと言ったら怒りそうだ。

 旭に買ってもらおうか悩んでいると、沙良がチーズを発見したらしい。

 店員を呼び試食を頼んでいた。

 すると店員は沙良から離れ、店長らしき人を伴い、戻ってくる。


「お客様。ご試食を希望との事ですが、この商品は売り物でございます。もし良ければ、当家の分を試食されますか?」


 その言葉に沙良は大きく(うなず)き、小さくガッツポーズをして見せた。


「はい、お願いします。(つい)でに白ワインの試飲もいいですか?」


「ワインの試飲は問題ありません。では少々お待ち下さい」


 店員に別室を案内され、あとに続き部屋へ入る。

 カマラさんが勧めてくれた店だけあって、室内は高そうな家具が設置されていた。

 飾り棚には、旭が沙良にプレゼントした時間を知らせる置時計もある。

 艶のあるテーブルの上には、花瓶に生けられた色とりどりの花が飾ってあった。

 俺達が席に座ると店員が一度部屋を出て、カットされたチーズとドライフルーツが載せられた皿、白ワインが入ったガラスのグラスが置かれたトレーを持ち、店長と一緒に戻ってきた。


「どうぞ、お試し下さい」


「はい、いただきます」


 沙良は白ワインを一口飲み、チーズを食べて満足そうに笑っている。

 どうやら味はOKらしい。

 

「とっても美味しいです。ワインとチーズは、お幾らですか?」


「こちらの商品ですが、ワインは銀貨10枚(10万円)。チーズは銀貨20枚(20万円)となります」


「では、一つずつ下さい。あの、バターはないですか?」

 

 チーズがあるならバターもありそうだな。


「申し訳ありません。王都の本店にはございますが、輸送に問題があり迷宮都市まで運ぶのが難しく、当店では取扱いのない商品となります」


 と思ったら、バターの扱いはなく王都の本店にはあるようだ。


「分かりました。試食させて頂いた代わりに、こちらをどうぞ」


 それでもチーズが手に入るのが嬉しい沙良は、お礼としてダンジョン産の桃を店長に3個渡す。

 客から桃が返ってくるとは思いもしなかったのだろう。

 店長は桃を手にして戸惑(とまど)った様子を見せた。


貴重(きちょう)な果物をありがとうございます。では準備致しますので、もう少しお待ち下さい」


 そう言って店長が部屋から出て行くと、


「お兄ちゃん。これでチーズナンとかチーズフォンデュとか色々出来るね。トマトが生る季節になったら、ダンジョンでピザパーティしよう!」


 沙良が待ってましたとばかりに口を開く。


「いいなそれ、サラミとかあれば最高なのに」


「ある物で出来るだけ美味しく作るよ」


 ダンジョンでピザが食べられるなんて最高だ!

 俺は沙良が残したワインを飲み、一番高かったワインを買わなくて正解だったと思う。

 銀貨10枚するワインの味がこれじゃ、金貨1枚のワインの味は期待出来ない。

 製造方法が違うんだろうな。

 綺麗な布で包まれた商品を受け取り、店をあとにした。

 その際、店の外まで見送りに出てきた店長に沙良が王都までの距離を聞いたところ、馬車で往復1ヶ月くらい掛かるらしい。

 それじゃあ、バターは輸送が難しそうだ。夏は溶けそうだしな。

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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。

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これからもよろしくお願いします。

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