表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

111/178

第36話 新たな狂信者

次の日の早朝、アキナシを出立し風猫のアジトへと向かう。

もちろん、青髪を三つ編みにしたメイドと揉み上げの長い騎士ゲラルトとは、アキナシの街で別れた。別れの際に二人に囲まれ、すごい形相でフェリス様を頼むと凄まれる。というか、あんな血走った目で頼まれてもな。あれって、もはや脅迫の域だと思うぞ。

 

 風猫のアジトへ入ると、住民たちが一斉に跪いてくる。満足そうに頷くギリメカラから察するにあれってローゼではなく、私にしているんだろうな。


「お待ち申しておりました。我らが崇敬なる(しゅ)よ」


 中心にいる白髪の老人がかしこまって深く頭をさげつつ、ギリメカラの配下同様の狂信的態度を示す。心底うんざりするようなフェリスの態度からいって、こいつら、私がいなくても終始こんな感じなんだと思う。

 ギリメカラめ! これって、もはやかなり(たち)の悪い洗脳の域だぞ! というか私が欲しいのは新たな狂信者ではなく、対等な住民だ。やりにくいったら、ありゃしない。

 ギリメカラに批難の視線を向けるが、得意そうに老人の態度に目を細めて頷くだけで、気づいてすらいなそうだ。


「カイ、今度は一体、彼らに何をしたのですか?」


 呆れ果てたような、そしてどこか諦めを含んだ声色で尋ねてくるローゼに、


「あのな、私はただ彼らに道を示しただけで、他には何もしちゃいない(はずだ)! ホントだぞ!」


 真向から人聞きの悪い主張を全否定してみたりする。

ローゼは半眼で私と風猫の住民を相互に見て、大きなため息を吐くと、


「仕方ありませんか。カイですし」


 ローゼはそんな人聞きの悪いことを口にして首を左右に振る。


「そうそう。師父のやることに一々突っ込むと疲れるだけだぜ」


 歩きながら怪しげな液体の入った徳利(とっくり)に口をつけてチビチビと飲んでいるザックが即座に相槌を打つ。

 あの液体は、なんでもネメア特製の筋肉強化剤らしいぞ。ネメアはザックが私の弟子になったと知ると、弟子として恥ずかしくない強さにするといって鍛え始めた。脳筋どうし、気があうのだろう。忽ち、ザックはネメアの修行にのめり込んでしまっている。


「それではご案内いたします」


 白髪の老人が先導し、住民の代表者らしき男女が私達の後についてくる。


「あんた、ほんまに何もんなんや?」


 丸縁眼鏡にブカブカの服を着た【朱鴉(あけがらす)】のTOP――オボロが、周囲のギリメカラやその配下の者達をチラチラと気にしつつも小声で尋ねてきた。


「ん? 自己紹介は既に済ませたはずだぞ。カイ・ハイネマン。元ハイネマン家の長男で、ついこの前、家を追い出された身分だ。ちなみに、そこのチンチクリンのロイヤルガード(仮)でもあるな」

「チンチクリン?」


 隣で笑みを浮かべたまま低い声で反駁するチンチクリン王女をガン無視しつつも、


「ともかく、それ以上は叩いても何も出てきはせんぞ」


 オボロに端的に当然の返答をする。


「いや、そういう事やのうてやな……」


口ごもるオボロにローゼが、


「彼曰く一応これでも人間らしいですよ。多分、ここにいる誰も信じてはいませんが」


 まったくフォローにすらなっていない補足説明してくれた。ローゼの奴、さっきチンチクリン扱いされたのを根にもってやがるな。尻の穴の小さい奴め! 


「だよなぁ。師父を人間とみなしているのって実のところ師父だけじゃねぇの?」

「同感である。というか、こんな真正の化物を下等生物(人間)扱いするなど気狂いの域である」


 本を読みながらもアスタがザックの言に同意する。


「ご主人様はご主人様なのですっ!」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ!」


ファフとミュウが右手を上げてそれに続く。


「やっぱ、人やないのか」


 納得したように何度も頷くオボロ。どう考えてもこれ誤解しているよな。


「人じゃないなら、何なの?」


とんがり帽子の少女、【迷いの森(ロストフォーレスト)】の首領、アリス・レンレン・ローレライが恐る恐る確認してくる。


「私は人間だっ! ほら、お前らが好き勝手放題適当なこと言うから、童女が信じてしまったではないかっ!」


 睨みつけると全員から視線を逸らされてしまう。まったくこいつら――。


    


お読みいただきありがとうございます。少しずつ投稿を続けていきますので、よろしくお願いいたします。


【読者の皆様へのお願い】

 少しでも「面白い」と感じましたら、ブックマークと評価をお願いしますっ! モチベーションの意地に繋がりますのでご協力いただければ幸いです! (^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 逆に考えてみましょう。 主以外の人間が主の「俺は人間だ」発言の瞬間にランクダウンしたのですよ。 だから、主は人間で、それ以外の者は人間ではなくなった、と(混乱)。
[一言] うん、みんなの目の前で悪竜以上の神竜クラスを八つ当たりついでで一方的にボコボコにしたら人間扱いは無理でしょうねぇw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ