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048 レインフォースの力【ミリア視点】

「ここが……ユキアさんの国……」


 目論見は当たった。

 魔獣たちは王宮で暴れ回り、ユキア殿はそれを鎮圧すると同時に王国に事実上降伏宣言をあげさせた。

 そしてそのどさくさで、私はユキア殿についてくることに成功した。


 だが……。


「レベルが違いすぎる……」


 驚愕したのはまずその森に溢れる生命の数だった。

 王都の人口より多いのではないかと思うほどの魔物たちが規律正しく作業にあたっている。

 その数は万を超えている。

 そして私にはわかる。

 このほとんどがユキア殿にテイムされた魔物たちだ。


「えっと……ミリア、様」


 そしてユキア殿の妹、シャナルさん。

 話に聞くことはあった。

 だが実際に対面して同じテイマーとしての質の違いにまた打ちのめされる気分になる。


「様は不要です。私は人質ですよ?」

「ですが……」

「敬語も不要。ここではむしろ、私が頭を下げなくてはならない立場ですから……」


 その言葉に偽りはない。

 だがそれ以上に、テイマーとしての能力差がその判断を促した気がした。

 シャナルさんもまた、数百以上はテイムを行なっているのがわかった。

 文字通り桁が違うユキア殿は置いておくとして、同じテイマーとしてこの数は異常だと思わざるを得ない。

 流石はレインフォースの血筋だ……。


「王女様がやってこられるなんて。いらっしゃい。ここでは王女ではなく一人の少女として扱った方が良いと聞いたのだけど、本当に良かったのかしら」


 王宮貴族以上に優雅な立ち振る舞いで現れたのは……。


「貴方は……ユキア殿のお母様?!」

「ふふ。そうね、あなたの事はユキアからよく聞いていたわ」

「そんな……えっと……いつもユキア殿にはお世話になっておりました」


 思わず頭を下げる。

 そうしたくなるような何かが、この女性にはあった。

 そんなことより、ユキア殿が私のことをなんと……? 一体何を……。


「ふふ。硬くならないで。娘が増えたようで嬉しいわ」


 柔らかく笑いかけるその姿とは裏腹に、やはりテイマーとしての能力で大きく劣る自分を自覚させられた。


 従える従魔は少なく、また虫やネズミなどの小型の魔獣なのだが、その精度に驚かされる。

 一般的に小さいと知能が少ないと言われる魔物たち。中でも最小に近い虫型の魔物になんと、服飾技術を身につけさせているのだ。


「とんでもないところに来た……」


 当然のように万の領民を従えたユキア殿はまさに、王だった。

 私の父なんかでは比べ物にならないほどに立派な……。


「ようやくこの者らの異常さがわかるのが現れたか」


 声をかけてきたのはエルフの王……。


「レイリック殿……」

「固くならずとも良い。同じ王族なのだ」

「ですが……」


 今の私を王族と呼んでいいものか……。

 そんなことを考えているとレイリック殿が豪快に笑いながらこんなことを言い出す。


「母国が潰れたらユキアに嫁げば良いではないか」

「なっ!?」


 気楽にそんなことを言いながら笑いかけるエルフ王。

 思わず顔が赤くなったのを感じる。


「ふふ。だがまぁこれまでこやつら、自分たちがいかに規格外の力を持つかの自覚がなかった。私としてはそれがわかる者が増えたのは嬉しく思うぞ」

「はぁ……」


 すっかりレイリック殿のペースに乗せられる。

 その様子を見て決意を固めた。


 ここで生き残るには、今のままじゃダメだ……。

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― 新着の感想 ―
[一言] レイリックさんが楽しそうでなにより
[気になる点] >「えっと……ミリア、様」 >「様は不要です。私は人質ですよ?」 >「ですが……」 >「敬語も不要。ここではむしろ、私が頭を下げなくてはならない立場ですから……」 「そうじゃねぇ。敬…
[一言] >ここで生き残るには、今のままじゃダメだ……。 う~ん。規格外への仲間入りフラグ?
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