017 テイムの恩恵
「お……? これは……」
「どうかしましたか兄さんっ⁉ やっぱりどこか体調が……」
「いや……逆だ」
「逆……?」
力が溢れてくるのだ。
ドラゴンまで世話していた王宮のことを考えれば正直、今回の魔物たちでそう大きな変化が得られるとは思っていなかった。
「引き継いできただけの使い魔ではなく、貴方が自らテイムしたからそうなったのでしょう」
母さんが俺の様子を見てそんな予測を立てていた。
「じゃあ兄さんは今まで【テイム】の恩恵なしであの身のこなしだったということですか……?」
「そうではないと思うわ。少しくらいは恩恵もあったはず……でも自分でテイムするのとただの引き継ぎでは大きな差があるということでしょうね」
なるほど……。
ちょっとした全能感すら覚えるほどの力が身体に流れているのを感じて気分が良くなる俺だが、その様子を見ていたシャナルが再びため息を吐きながらこんなことを言っていた。
「しかも兄さん、ここに来るまでにテイムした千匹程度じゃ影響がなかったということですよね……」
「そうなるの……か?」
確かに最初にゴブリンたちをテイムしたときには何も感じなかったな。
「はぁ……また兄さんとの差が……」
負けず嫌いだなぁ……シャナルは。
「とりあえずゴブリン以外にも仕事をしてもらいながら俺たちの住む場所を作ろうか」
「御主人様。僭越ながらご主人様の支配下にあるゴブリンたちをお借りして御主人様方の住居は先んじて作らせております。ひとまず雨風をしのげる最低限のものを優先して作らせましたので、こちらへ」
「さすがロビンさん……」
ゴブリンにざっくり指示はしたものの優先順位までは考えてなかったな。
新たにテイムした魔物たちにもとりあえず先行部隊のゴブリンたちの補佐を命じてロビンさんのほうに改めて向き直る。
「ありがとう。じゃあ行こうか」
「私もなにか……兄さんの役に立たないと……」
「いまもヴィートが周囲の警戒をしてくれてるんだから十分だよ」
「ですが……」
ぶつぶつ呟くシャナルと、朗らかに微笑む母さんを連れて、ロビンさんの後を追った。
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