悪役令嬢と海の国4
「さて皆さん、休み明けですが元気なようですね。くれぐれも互いに敬意を払い、節度を守った行動をしましょう」
あ、ローランドの方をめちゃくちゃ見てる。
「では改めて転入生を紹介します。ラメール君です」
ラメールさんは立ち上がりぐるりと教室内を見渡してキラキラ笑顔を振りまいた。
その後教師から、我々の国と密接に関わる隣国からやってきた留学生であることが説明された。さらに敬意を持って接するようにと再度念を押された。やはり教師にはラメールさんの正体が伝わっているようだ。
「そしてミラ嬢は交換留学という形でラメール君の国に学びに行きました」
「はあ?なんでだよ」
ローランドがまた声を荒らげた。落ち着け、そして教師にも敬意を払えー。あ、軽薄コンビの相方ルノーが止めようとしてる。
「ローランド君、先程も伝えましたがその言葉遣いは正しいものですか」
「……」
ローランドは押し黙ると不貞腐れたように机に突っ伏した。教師は困ったような顔をしてため息をついた。
「この国はどうしても魔法以外のことは他国より遅れています。彼女は将来のために学びたいとラメールさんと交換という形で留学されました」
それってつまりこの学院にいても留学のチャンスがあるってことでは?これは……来年、行っちゃう海の国?!
私の頭の中で妄想と希望がむくむく湧き上がる。
「皆さんの中にはご存じの方もいるでしょうが魔法を扱えるのは我が国の国民だけとされています」
そうだ、隣国でたこ焼き屋をやろう!大きな魔獣は無理だけどちっちゃいタコを捕まえよう。あの美味しさを知れば皆たこを食べるようになるはずだ!さらにイカ焼きも売って、それから海鮮丼もいいなぁ。生食だって最初は受け入れられなくても慣れれば美味しく感じるかもしれない。
「そこで魔術協会所属の魔術師を同盟国に派遣しています。これが国益となっています」
軌道に乗ったらフランチャイズ化してウハウハ大儲け!これだ、これしかない。我ながらいい考えすぎる!
「みなさんもこれからの学生生活を将来のことを考えて有意義なものにしましょう」
教師の話は右から左に通り抜けていったが、将来のことを考えるのは大事だ!たこ焼き長者目指して頑張るぞと決意を新たにしたのだった。




