悪役令嬢とお宅訪問3
「んーーー、おいしい!」
サラダに控え目に入ったパクチーもどきを喜んで食べるフィーリアさん、お口に合ったようで何よりである。
万が一口に合わなかった時のため、最初は少なめに用意したのだ。
「フィーリア嬢、お代わりもあるからね」
兄がそう言うと、パクチーもどきだけがこんもり盛られた皿がフィーリアさんの前に置かれた。
一方ルーナはほっぺたを膨らませながら味わっている。相変わらずリスのような可愛さだ。
「ルーナもお代わりあるから遠慮なく言ってね」
口いっぱいのまま首をふるふると横に振っている。遠慮しなくていいのに。
「庭にもあるし、たくさん食べていいのよ?」
そこへフィーリアさんが遠慮がちに口を挟んだ。
「あー、うー、とっても言い辛いのだけど。多分ルーナさんはこの薬草得意じゃないみたい……かなって」
なんですと?!
いやいや、そんなはずは……。
ルーナの様子を窺うと、涙目でフィーリアさんを一瞬睨みつけた後、困ったような笑みを浮かべ、それから私を見てこくりと頷いた。
なんてこった。
「し、知らなかった」
モリモリの薬草をどうにか飲み込んだルーナは小さくため息を吐く。
「少しならば大丈夫ですわ」
ずっとルーナが気に入ってくれていると思っていたよ。お姉ちゃんショックである。
「あー、言わなきゃよかったかも。なんか、ごめんなさい。で、でも、私はこの葉っぱ大好きですよ」
「ううん、教えてくれてありがとう」
「ね、お姉様、このお料理も悪くないわ」
うわー、二人共とっても気を遣ってくれている。
「本当!パイの中にお野菜が入ってる。リュシアさんも食べてみて」
そう言われ、一口食べてみる。
「おいしい」
お肉が入っていないのに食べごたえがある。これはなかなか悪くないな。
「リュシアさんって美味しいそうに食べるよね」
フィーリアさんがにっこり微笑んだ。その笑みになんだか癒やされていく。
それから再び和やかな食事の時間が続いていった。




