表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は双子の妹を溺愛する  作者: ドンドコ丸
69/101

悪役令嬢と歓迎会4

 会はお開きになり、私は逃げるように女子寮へ向かう。

 すると後ろからパタパタと足音が近づいてきた。


「待ってー、リュシアさーん」


 振り返るとフィーリアさんが息を切らしていた。病み上がりのヒロインが走っちゃダメぇえええ!慌ててそちらへ駆け寄り、そして頭を下げる。


「フィーリアさん、今日は本当に本当にごめんなさい。謝って許されることではないけれど……。でも本当にごめんなさい」


 気持ちは土下座したいくらいだが、さすがに伝わらないだろうと、とにかく頭を下げる。


「あわわ。謝らないでください」

「本当に申し訳ないことを……」


 泣きそうになりながら謝る私にフィーリアさんは困ったような顔を一瞬見せた。しかしすぐその顔は真剣な表情に変わる。彼女は私をじっとみつめ、それから私の両手を取るとぎゅっと握りしめた。


 え?私浄化されちゃう?

 すると私の体がポカポカと暖かくなっていった。フィーリアさんの握った手から腕へ、腕からお腹へと優しいぬくもりが満ちていく。心を覆っていたモヤモヤとした気持ちが、まるで氷が溶けていくように小さくなっていく。


「あったかい」


 思わず呟くとフィーリアさんがにこりと笑う。


「あ、あのね、リュシアさん。私、元々はお肉大好きだったの!だから今日久しぶりに食べられて嬉しかったの、です!」

「でも体が……」

「体は受け付けてくれなくって、ホント残念なの、です」


 しゅんとした様子で心底残念そうだ。食べたくても食べられないのは辛いよね。


「フィーリアさん、気を遣ってくれて……ありがとう」


 ぎこちなく笑みを見せれば、彼女も嬉しそうな顔をする。


「えへへ、照れちゃいます」

「本当にごめんなさい」

「大丈夫、大丈夫。ね、もう気にしないで」


 2人で話しながら女子寮に入り階段を上がり、廊下を進んでいく。やがてフィーリアさんは部屋の前で立ち止まった。


「フィーリアさんはここの部屋なの?」

「うん、ここなの。それじゃリュシアさん、また明日!」

「また明日」


 部屋に入っていく彼女を見届け、私も廊下を進んでいく。それにしても彼女の部屋はルーナの部屋の隣だったのだ。いいなあ。


 程なくして私も部屋に戻る。

 フィーリアさんは優しい言葉をかけてくれたけれど、それでもどっと疲れに襲われる。制服を着たままベッドに倒れ込み、目を閉じる。


 こんな時にルーナがいてくれたらな。


 でも今頃彼女は王宮に向かっている筈だ。王妃教育の為今日も今日とて頑張っているのだ。

 まあ完璧な妹であればきっと大丈夫だろう。それに比べて私は……。


 刺繍をする気にも、読書する気にもなれず、私はただぼーっと時が過ぎるのを待つばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ