ちょっとしたお金稼ぎをする ①
街で過ごしながら、俺は資金稼ぎ……アルバイトをしたいと思って仕事を探すことにする。フォンセーラやノスタには「自分たちが払う」などと言われたし、母さんに一言いえばどうとでもしてくれそうな気がするが、周りに頼りっきりの生活をしたいわけではない。
同じ街にしばらく滞在する場合はなるべくお金を稼ぐようにしていた。
「咲人は何をする気なの? 冒険者として働く気はないんだよね?」
「まぁ、そうだな。登録していないし。魔物討伐して素材屋に売るのもありだけど、それで目をつけられるのも嫌だしなぁ」
俺はクラを肩の上に乗せたまま会話を交わしている。場所は宿屋。今はベッドに寝転がりながら、街で配られていた冊子を見ている。所謂求人雑誌のようなものだな。今いる街はそれなりに大きくて、田舎の村から出稼ぎに出てくる人も多いらしい。
仕事が見つからなくて、生活に困っている人も見かけたことがある。ある程度の住民は満足に生活出来ているようには見えるがそう言う人もいるものである。
俺は正直旅費を稼げるのならば、どんな仕事でも構わない。どうせ、一時的にこの街に留まっているだけなのだから。とはいえ、後からトラウマになるようなことは絶対に却下。また後ろ暗いこととか、犯罪行為などをお金のために行うのも嫌なのできちんと調べた上で行うべきだろう。
知らずに受けた仕事で指名手配になるとかは、絶対に嫌だし。
こう考えるとなんというか……俺はこの世界にやってきてしばらく経つのにまだまだ世間知らずな部分が大きいなと実感した。
求人の冊子を見ていても知らない仕事とか多いしなぁ。これ、条件良さそうと思ったものもいざどんな仕事か調べてみるとちょっと問題がある仕事だったりもする。というか、クラが事前に情報収集してくれているのである。今は神獣とはいえ、クラは俺の家のペットだ。ペットに面倒を見られている飼い主ってどうなんだろう……と少し思わなくはない。ただクラが調べてくれているから助かってはいるので感謝はしている。
手っ取り早いものだとやっぱり荒事か。他の街への護衛依頼だったり、珍しい素材を取ってくる依頼だったり……。討伐依頼に関して言えばなんで冒険者ギルドに依頼していないのか不明だ。報酬は確かにいいけれども、ギルドを通さないところを見ると何か悪事に使われそうな予感もしていた。
「咲人はあまり目立ちたがらないよね。目立とうと思えば幾らでも目立てるのに」
「だって面倒じゃん。それに俺って、多分そのうち人の枠組みからはずれるって母さんが言ってたし。そうなると何かしらやらかしたら明らかに黒歴史だろ」
うん、いや、正直さ、異世界にきているわけだし少しぐらいはっちゃけても悪くはない。それこそその時は楽しいだろうなとは思う。それでも明らかに後から後悔しそうというか恥ずかしくなりそうだからなぁ……。
俺はそう思ってしまうので、はっちゃけるということがなかなか出来ないなと思う。
黒歴史……いや、まぁ、うん、俺は出来れば作りたくない。母さんレベルまで他の人の視線なんてどうでもいいと割り切れているのならば問題はない。けれども俺は母さんほど周りの目を気にしないというのは出来ない。
「黒歴史? 別に作ってもいいんじゃない?」
「クラも母さんと一緒で周りをあんまり気にしないよなぁ。でも俺はしばらくは人に交わって過ごす予定だから、変な噂は嫌だ。良い噂ならまだ我慢出来るけれど。あ、でも中二病な感じの噂とか流されるのは恥ずかしいかも」
こういう世界だと普通に、二つ名的なものとかあるのだ。かっこいいとは思うけれど、自分がそんな呼び名をされるのはちょっと恥ずかしい。
クラが何かしら呼び名をつけられたらかっこいいなーってなるし、自慢にはなるが。
クラが有名になっても俺自身が有名になりたいかと言えば別だしなぁ。うん、やっぱりなるべく目立たないように過ごした方が楽そう。
「まぁ、母さんの息子だって露見して、もう静かに過ごそうとしてもどうしようもない状況に陥ったらもういいかってはっちゃけるかも」
今は正直言って目立った行動は全くしたくない。ただそれってあくまで今だけの感情かもしれない。後々、もっと年を重ねればそんなことを全く気にしなくはなるかもなんては思う。
「ふぅん。そっか。僕は咲人がただの人間に舐められたりするのは嫌だから、少しぐらいは強さとか見せつけるといいなーっては思うけれどなぁ」
「クラ、俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけれど俺は大丈夫だから大人しくな?」
ペットからの飼い主一家への愛が結構重いなと実感する。クラは母さんと同じように基本的に周りの評価なんて気にしてない。元は猫だしな。
それでも家族が馬鹿にされたり、蔑ろにされたりするのは嫌だと思っているようだ。
俺はこの世界にきて、前よりたくましくなっているつもりだ。それでもガタイの良い男性とかからするとなよなよしているだろうからなぁ。
そんなことを考えながら、俺は冊子から良いアルバイト先を探すのを続けるのであった。




