脳内家族会議with旅の同行者 ①
「ぼ、僕がノースティア様の声を直接聞く機会を手にすることが出来るなど!! 咲人、本当に本当に本当に……ありがとう!! 僕はなんて幸運なんだ!! ノースティア様の声を聞くことなど、思ってもいなかった。あの面倒な神に関わってしまったことに関しては、不快だった。しかしそれのおかげでこうしてノースティア様の息子である咲人に出会えることが出来たのだ。本当に……」
「私も同意するわ。咲人という存在がここにいるからこそ、ノーステイア様一家の会議に参加出来るのだもの! ノースティア様が意思を以って私に声をかけてくださる機会に遭遇することが出来るなんて心の底から嬉しくて仕方がないわ。ノースティア様から名前を呼ばれでもしたら……ああああぁあああ」
……ノスタも、フォンセーラも中々おかしなテンションだった。
脳内家族会議が本日行われるのである。まだそれまで時間はあるのだけれども……二人とも凄いテンション、うん、酷い。見ていて引く感じの反応だ。
なんか変態っぽい。いや、まぁ、信仰対象と実際に反すことが出来るというだけでこうなるのも当然と言えばそうなのか? 俺は信仰している相手なんて居ないので、そんな気持ちは分からない。
ただちょっと驚きはするけれど、その信仰する気持ちを否定する気は特にない。
俺だって好きな物に関して話す際は、同じように周りが引くぐらいになっているかもしれないし、人のことは言えない。
「うるさっ」
「クラ、そう言ってやるなよ。俺もちょっとびっくりはしているけれどそれだけ母さんのことを特別に思っているって証なんだから」
不快そうな様子のクラに宥めるようにそう言った。
神様――それも彼女達が信仰する存在と直接対話できるのだから、こうなっても無理はない。
……これ、喋った後、どうなるんだろうな? もっと変な感じで騒ぐんだろうか。俺にはさっぱり分からない。
それにノスタに関しては姉さん達とも会ったことがないわけで、だからこそ余計に緊張なども強いのかもしれない。
「咲人、ノースティア様にはどのように挨拶をすべきなんだ。どんな信者をノースティア様は求めているんだ? 僕はずっとそれを考え続けているのだが、どういったものがいいかさっぱり分からない」
「挨拶なんてどんなのでもいいよ。母さんにとっては信者がどんな挨拶をしようとも気にもとめないから」
冷たい言い方はしてしまったかもしれない。しかし母さんには期待するだけ無駄だと思う。うん、母さんは信者が何をしようとも気にすることはないのだから。
ノスタが母さんと話すことで、分相応な願いを抱いたりしたら問題だけど流石にそれはないはずと思いたい。フォンセーラに関しては、特に心配はしていない。
でもあれかなぁ、信者によっては母さんの信仰されてもどうでもいいみたいな態度を嫌だと思って、その結果、信仰心が反転することもあったりするのか?
俺としては母さんが周りから好かれた方が嬉しいなと思うし、母さんへの信仰心が集まった方がいいことだらけなのでは? とは思うが、母さんは信者を集めるために何かしらをしようなんてことはないのである。
「そ、そうはいっても……」
「重要なのは父さんの気を引きすぎないことだよ。母さんは基本的に父さんが居れば幸せだし、にこにこしていて、不機嫌になったりしないよ。でも、父さんが母さん以外の人を気にするのは嫌がるんだよ。母さんは独占欲が凄まじい人だから、当たり障りのない感じで挨拶すればいいんだ」
父さんが楽しそうにしていると、母さんは嬉しそうにしている。母さんの愛情はちょっとだけ危ない部分もあるから、父さんが悲しんだり、絶望していたりしても母さんは愛するだろう。……やっぱりヤンデレっぽい。ただ他ならぬ父さんが母さんの重たすぎる愛情を受け入れて、二人で幸せになりたいとそう言っているから今があるわけで。
父さんがそれこそ人を滅ぼしたいとか、誰かの優位に立ちたいとか、そんなことばかりを考える人だったらとっくの昔にこの世界は母さんの支配下になっているんだろうなと簡単に想像がつく。
母さんを怒らせないのは当然のことだけど、一番は父さんなんだよな。父さんの決定が母さんの行動に繋がるから。
「とりあえず父さんに嫌な思いをさせないようにすればいい。母さんは父さんが笑っていればそれでいいんだから。父さんから嫌なタイプだなとか思われたら今後、母さんはノスタに接触なんてしなくなるし。母さんはノスタのこともどうでもいいと思っているはずだけど、ちょっとでも父さんを楽しませたりしたら、名前ぐらいは覚えてもらえるかも」
母さんは家族を大事にしているけれど、一番大事なのは明確に父さんなんだから。父さんに嫌な思いをさせなければそれだけで母さんに評価されるだろう。母さんって結構単純だし、父さんが白と言えば黒いものでも白! とかそんな感じに言いそうなタイプだし。
「ノースティア様に……名前を憶えてもらいたい!!」
ノスタは元気よくそう言った。




