新たなる街へ ②
会話を交わしながら、街道を歩くことしばらく街が見えてきた。
その街の入り口には、沢山の人達が立ち並んでいる。精査をされて、順番に街へ入れる仕組みのようだ。
前後には商会や冒険者達の姿がある。
前の商会の人達は、雰囲気が悪い。うん、会話を聞いていてあんまり良い気はしない。どうやら商人仲間の内の一人のことを迫害か何かはしてそう。
正直、そんな環境ならば他の仕事に就けばいいのでは? とそんな風には思っているが、やっぱり追い詰められているとそんな選択が出来ないのかもしれない。
正直、そんな良い環境じゃない人たちを見るとなんとも言えない気持ちになる。ただこの世界ではこういう理不尽なことってきっと多いんだよな。俺が見ている範囲だけでもかなり色々あるし。そもそもどういう理由でそのような状況になったかも分からないしな。
俺は相変わらず、母さんが準備してくれている身分証を使い続けている。そのままだったら俺は異世界からやってきたから、身分を証明するものなんて皆無だからなぁ……。
ノスタに関してはずっと砂漠地帯に捕らえられていたのもあって、過去に使っていた身分証が意味をなさなかったらしい。……色々と説明が面倒だったのか、無くした時ようの手続きを済ませていた。
いちいち神様に狙われたせいで、身分証が有効ではないとかそういう説明するのも大変だもんな。俺はそれを考えるとちょっと同情する。
……俺、今は人間だけど、そのうち神には近づきそうだし、そうなったら同じような経験はしそう。
しばらく経ってから訪れる場所に行く際は、俺が人の寿命を凌駕していることを知られないようにはした方がいいんだろうな。開き直るならともかく……。
でも母さんの息子だって大っぴらに言うと面倒事しかない。まぁ、そのあたりはその時に考えるべきことかなぁ。
ちなみにこの街には、色んな人種が居る。人以外の人達の姿もちらほら見られて、冒険者の姿もかなり見られる。
俺は冒険者として登録はしていないけれど、フォンセーラとノスタは登録済みらしいから依頼を受けるかもと言っていた。
とりあえず宿を取る。
俺とノスタは節約のために同室である。流石にフォンセーラは性別が違うので、別室にはしておいた。
フォンセーラは気にしていなかったらしいけれど……。
ノスタは外に出て行ったので、俺はクラと一緒に部屋でのんびりと過ごす。この世界にやってきて、地球に居た頃よりもずっと人と関わり、行動的にはなっているけれども本質的に俺は一人で過ごす時間がとても好きなんだと改めて実感する。
ベッドに横になる。もちろん、二人部屋とはいえ同じベッドではない。そんな趣味は俺にはない。その分少しだけ、割り高ではあるけれどそれは仕方がない。
「咲人、疲れたの?」
「まぁ、少し。こうやってベッドでゆっくりするのって楽しいよな」
寝転がった俺の傍には、クラが寄り添っている。べったりとくっついているクラを見ると、自然と頬が緩む。
今は神獣という特別な存在になったとはいえ、クラは本質的には元の猫であったころと変わらない。だから相変わらず気まぐれで、人にくっつくことなんてあまりないのだ。
クラは俺のことを家族として大切に思ってくれているからこそ、こうしてくっついてくれているのだ。そう思うと、それはそれで嬉しい。
「咲人を困らせるものがあるなら、僕、どうにかするよ?」
「ありがとう。何かあったら相談するようにするよ」
「うん。咲人はあまり抱え込むタイプじゃないから大丈夫だとは思うけれど、無茶をしたら駄目だよ。何かあったら、皆、悲しむよ」
クラからそんな風に言われる。
俺の性格を知っているからこそ、クラは心配はしてなさそう。俺は自分で言うのもなんだけど、楽観的な性格をしているというか基本的には前向きな方だ。だからなんというか、本気で精神を病むぐらいに悩んだことって全然ないかも。
これは母さんが俺の心を落ち着かせるように何かしているからというのもあるが、それを抜きにしても異世界生活に不安を感じるというより、多分楽しんでいただろう。
「ああ。そうするよ。母さんも何だかんだ、俺に何かあれば怒りそうだし」
俺も姉さん達も、母さんからしてみればあくまで父さんの付属品であるということには変わりはない。
父さんという存在が居なければ俺達はそもそも存在していないしな。うん、俺はこの世界の平和のためにも何かないようにしないと。
母さんって父さん第一主義だけど、俺のことは普通に子供として可愛がってくれているのだ。だから俺は自分の身が危険な目に遭うのはなるべく避けておきたい。
「僕も怒るよ。僕は、咲人に何かする人が居たらすぐに排除するからね」
「自分でなるべくどうにかするから、すぐに手出しはしないようにな?」
「うん。分かっているよ」
クラは、人とは感覚が違う。このまま好きにしていいよといったら、それこそ簡単に俺に何かした人を排除しようとしそうだ。
だから俺はそう告げた。




